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24話:一滴残らず搾精されて

 ダンジョンの地下深く。

 意を決し、シアンスカとのセックスに臨んだ俺であったが――


「あはぁっ……! これ、さいこぉ……!」


「うぉぁ……あ、あぁ……かはっ……!」


 俺の吐き出した精を、恍惚の表情で舐め取るシアンスカとは裏腹に、限界を越えて絞り尽くされた俺は……今や死の瀬戸際に立たされていた。


「あっ、ごめんなさい。ネトレさんを苦しめるつもりは無かったのですが」


「ぜぇっ……はぁっ……」


「あんまりにも、可愛らしい腰使いだったので。つい……虐めたくなって♪」


 次元が違う。

 この子は……アイやガティの比ではないテクニックを持っている。

 処女あろうとも、体の中に流れるサキュバスの血がそうさせるのか。

 彼女は俺の気持ちいい部分を的確に刺激し、時には優しく包み込むように、またある時にはイカせるのを焦らして、俺の体を完全に支配してきた。

 

「でも、凄いですよ。サキュバスの搾精に10発以上も耐えられるなんて……やっぱり、ネトレさんは私の運命の人だったんですね」


 言いながら、彼女は俺の唇を奪い……舌をねじ込んでくる。

 最初は俺が彼女を惚けさせたディープキスも、今では優位は完全に彼女へと移っており、俺はシアンスカに与えられる快感の波に、ただ酔いしれる事しか出来ない。


「ぷはっ……それに、サキュバスである私をこんなにイカせちゃって。ふふっ、もうアナタ無しじゃ生きられない体になっちゃいましたよ?」


「それは、こっちのセリフ……かもしれないが」


「うふふっ……嬉しいです」


 シアンスカは俺の胸に顔を埋めて、瞳を閉じる。

 そして……さっきまでの妖艶なサキュバスの雰囲気から一転し、見た目相応の幼子が甘えるような声で――呟く。


「ネトレさん……頭を、撫でてくれませんか?」


「ああ……いくらでも撫でてやるさ」


 サラサラとした黒髪の上から、シアンスカの頭を優しく撫でる。

 気持ちよさそうに目を細める彼女の顔に、俺が癒やしを感じていると。


「あっ」


 シュルシュルと、シアンスカの頭部に生えていた巻き角が縮んでいく。

 それと同時に、背中の黒翼やお尻の尻尾。ヘソ下の紋章も消えていった。


「……儀式が終わって、力をコントロール出来るようになったみたいです」


「という事は……?」


「ううっ……ぐすっ……ようやく、自由になれたんですね」


 涙を流しながら、俺を抱きしめてくるシアンスカ。

 俺も彼女の気持ちに応えるべく、同じように彼女を強く抱きしめ返した。


「なぁ、シアンスカ……」


「んーん、ダメです」


「え?」


「シアンって呼んでください。大好きなアナタには、そう呼んで欲しいんです」


「ああ、分かったよシアン。それで……お前に大事な話が」


 シアンが俺の事を好きになってくれたのなら、後は寝取りの力が発動しているかどうかの確認をしなければならない。

 そう思い、いつものように質問を始めようとした――その時。


「「っ!?」」


 グラグラと、またあの時のように遺跡が揺れ始める。

 どうやら、あのキマイラが再び暴れ始めたようだ。


「……いいところなのに。うるさいやつですね」


 不快そうにシアンは立ち上がり、その辺に落ちていた服に着替え始める。

 俺も同じ用に服を着てから、剣を抜いて、キマイラの襲来に備えた。


「詳しい話は後でするが……キマイラとの戦いじゃ、俺は役に立てそうにないぞ」


「ふふっ……問題ありませんよ、ネトレさん」


 俺の情けないセリフをシアンが笑って受け入れたタイミングで、前方にある壁が吹き飛び……予想通り、あのキマイラが襲撃してきた。


「グギャォォォォォォォォォッ!」


 相変わらずのプレッシャーだが、ここで怯むわけにはいかない。

 俺は震える足にムチを打つように、剣を構えながら……キマイラを迎え撃とうとした。


「獣の分際で、私と愛する人の邪魔をしないでください」


 だが、結果から先に言えば……俺は何もする必要が無かった。


「立ち込める暗雲。放たれる雷の槍。攻撃魔導・サウザンドトール」


「かっ……!?」


 シアンが杖を振って発生させた黒い雲が、キマイラを包み込んだかと思うと――次の瞬間には、その黒雲から凄まじい光の奔流が溢れ出す。


「ぎゃああああああああああああああああああああああっ!」


 キマイラの絶叫が遺跡を揺らす。

 それと同時にバリバリバリと雷の弾ける音と、ザクザクとキマイラの肉を削ぎ、刺し貫く生々しい音がハーモニーを奏で始める。

 何回、何十回、何百回……そして、千回。

 わずか数秒足らずの間に、全身を雷の槍で千回も刺し貫かれたキマイラは、もはや肉塊とすら呼べない……肉片となって、その場に降り注いでいた。


「うぉ……?」


「ネトレさん、終わりましたよ」


 杖を下げたシアンが満面の笑みで、トテトテと俺の元に駆け寄ってくる。

 俺はそんな彼女を受け止めはしたものの、内心ではそのあまりにも強大な魔力に戦慄を覚えていた。

 ギルドのナンバー2だとは聞いていたが、ここまでの強さだとは。


「そんなに驚かないでください。私だって、びっくりしてるんですから」


「え?」


「多分、サキュバスとして覚醒したお陰でしょう。以前よりも、遥かに力が漲っているのが分かるんです。だからこれは……私とネトレさんの、初めての共同作業ですね」


「あ、あはは……そうかもな」


 という事はつまり、彼女の強さはギルドのナンバー2レベルすら超えたと。

 もしかすると、今やサンルーナで彼女以上に強い者は存在しない可能性もある。

 

「お前の力になれたなら、俺も嬉しいよ」


「私……幸せです。これからもずぅっと、私の傍にいてくださいね」


「ああ。絶対に離したりしない」


 それに、ギルドの副リーダー的な立場である彼女が俺の味方になったんだ。

 フロンティアへの加入は勿論、このままギルドを乗っ取るのも難しくは無い。


「なぁ、シアン。それで、さっきの話の続きなんだけど」


「はい、なんでも言ってください。私はアナタのモノですから」


「良い子だ。それじゃあ……」

 

 サンルーナの乗っ取りに向けて、俺は確かな一歩を踏み出した。


「俺の為にダイルナを――フロンティアを差し出せるか?」


「……え?」


 もう、後戻りは許されないんだ。

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