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23話:運命を壊す寝取り(ロリウィッチ風サキュバス)

「さぁ、ネトレさん。来て……」


 俺を誘惑するシアンスカが、唾液を垂らした赤い舌で俺の耳を舐める。

 たったそれだけで、俺の体には電流が走ったような痺れが駆け巡っていく。


「っぁ……!? 急に、どうしたんだ……? 意味が、分からないぞ……」


『性技レベルB 淫魔の誘惑・跳ね除けに成功』


 もし、アイやガティと毎晩のように激しいセックスをしていなければ。

 俺はコロッと堕ちて、シアンスカを押し倒していたに違いない。

 だが、俺は必死の理性で自分の欲望を抑え込み……冷静に、この異常事態が起きた原因を探る事にした。


「教えてくれ……お前は一体……?」


「……そうですね。まずは全てを話さなければいけません」


 そう言って、ほんの少し俺と距離を取るシアンスカ。

 改めてみると、幼い体付きだが、下着姿を直視するのも悪い気がする。

 だから目を背けようとしたのだが、彼女の臀部辺りから伸びる黒い悪魔のような尻尾が俺の首に巻き付き、無理矢理に視線を前へと向けさせられた。


「目を逸らさないで。私を……私の真の姿を見てください」


「真の、姿? やっぱりお前は……サキュバス、なのか?」


「はい。こう見えても私、110歳なんですよ」


「……随分と、歳上だったんですね」


「ふふっ、今まで通りの話し方で構いませんよ。私は人前では10歳だという設定ですし」


 クスクスと笑うシアンスカ。

 あまり感情を表に見せないタイプだった彼女だが、こうして本当の姿を顕にしてからは、コロコロと表情を変えている。


「どうして……人間のフリをして、ギルドに?」


「……サキュバスがどのようにして増えるか、ご存知ですか?」


「それは……」


「インキュバスが人間の女を孕ませるか、サキュバスが人間の精で孕むか。私はその、前者の方でして」


 俺の問いに答えながら、シアンスカは卑猥な手付きでヘソ下の紋章を撫でる。


「サキュバスは産まれて数年は普通の人間と変わりません。しかし、10歳を超える時に……覚醒の儀式を迎えるんです」


「覚醒の儀式?」


「ええ。頭にこの角が生えるんですよ。そして、魔力を秘めたこの角を見た人間の男を……欲情へと駆り立ててしまう」


「そう、なのか?」


「はい。その力で欲情させた男と交わり、処女を捨てる事で……サキュバスは一人前として覚醒するんです」


 言いながら、悲しそうに目を伏せるシアンスカ。


「そして、最初に私の角を見たのは……これまで私を育ててくれた父でした」


「あっ……!」


「血縁上は他人ですからね。父は角の力で欲情し、私を犯そうとしました」


「そんな、事が……」


「幸運にも私は、その場を逃げ出せました。しかし、サキュバスの力によって欲情した人間は、そのサキュバスとセックスしない限り……正気には戻れない」


 それじゃあ……まさか、シアンスカのお父さんは?


「父は発狂して死にました。そして、父を殺してしまった私を……母は化け物と呼び、殺そうとしてきたんです」


「……酷い。元はと言えば、お前の母親が……」


 インキュバスの誘惑に負けたせいじゃないか。

 それなのに、実の子供を化け物と呼ぶなんて。


「それから私は何十年も、人に見つからないように山奥で暮らし続けました。そしてとある事件がきっかけでダイルナさんに拾われたんです」


「じゃあ、義理の娘というのは……?」


「養子にしてくれたというわけですね。彼女は私の正体も知った上で、今まで面倒を見てくれ……いえ、私が面倒を見る機会の方が多かった気もします」


 うーんと唸りながら、首を傾げるシアンスカ。

 その姿は可愛いんだが……


「……うっ!?」


 ダメだ。少しずつ、視界がぼやけてきた。

 それに、ドクドクと脈打つ心臓の鼓動が段々と早くなっていく。


「……時間が無いので、本題に戻りましょう。アナタは覚醒前の角を見てしまって、強制的に欲情させられています」


「はぁっ、はぁっ……!」


「ですから、私を抱かない限り……やがて、発狂して死んでしまう。だから、今ここで私とセックスをしてください」


「……は、ははっ。シアンスカは、優しいな」


「え?」


「俺の命を助ける為に……初めてを捧げようとしてくれるなんてさ」


「私は、優しくなんかありません」


「……どうして、そう思うんだ?」


「私はこれまで、育ての父……偶然、私の角を目撃した人達。すでに何人もの人を、狂い死にさせてしまっています」


「だったら、俺もその中の一人に加えればいい」


「それは……」


 口ごもり、頬を染めて……俯くシアンスカ。

 あー……彼女の取る仕草の一つ一つが愛おしく見えて、すぐにでもメチャクチャにしてやりたいという感情が溢れてくる。

 だが、ダメだ。この力に負けて、シアンスカを犯す事だけはあってはならない。


「っぁ……くっ……! 確かに俺は、このままだと……死ぬ、かもな」


「だから、早く私を抱いてください!」


「お前を抱けば、最高に気持ちいいんだろう。命も助かるし、良い事ばかりだ」


「じゃあ――」


「それでも、断るよ」


「……えっ?」


 俺は激しくなる動悸と目眩と戦いながら、フラフラと立ち上がる。

 そして、唖然とした様子で立ち尽くすシアンスカの元へと歩み寄っていく。


「どう、して……?」


「俺が知りたいのは……お前の気持ちだ」


「えっ!?」


「能力なんか、関係ない。お前が、お前の意志で……俺に抱かれたいと。処女を捧げたいと思っているなら――俺はお前を抱きたい」


「なっ……!」


 俺が一歩前に踏み出す度に、気圧されたようにシアンスカが後ろに下がる。

 その顔には困惑と焦燥と――僅かな期待の色が浮かんでいるように見えた。


「……俺を助ける為に抱かれる、なんて考えならお断りだ」


 もし、ここで俺が……自分の命が助かる為だけにセックスをしたら。

 きっと、俺の持つ寝取りの力は覚醒しないと思う。

 あくまでも、彼女の大切な何かから……心を奪わなければいけないんだ。


「……俺なら、大丈夫だ。これでも、勇者なんだぜ?」


「ネトレ……さん」


「ほら、行こう。アイ達を探さないと」


 俺は床に落ちていたシアンスカのウィッチハットを見つけて拾うと、それを彼女の頭へと乗せる。


「大丈夫。お前が相手してくれなくても、あの二人なら俺の欲情くらい、全部搾り取ってくれるからさ」


 そして彼女を安心させるように、悲鳴を上げる体にムチを打って笑顔を作った。

 それが――結果として、スイッチになったのだろう。


「いやっ……! そんなの、いやぁぁぁぁぁっ!」


「ぐぁっ!?」


 シアンスカはいきなり叫んだかと思うと、俺を強引に押し倒してくる。

 そしてそのまま、彼女は俺に馬乗りとなり……俺の服を強引に引き剥がす。


「どうして? どうして、私を抱いてくれないんですか? 私の体が幼いからですか? そんなに私には魅力が無いんですか?」


 彼女は泣いていた。ポロポロと大粒の涙を溢しながら、悔しげに唇の下を噛んで……わなわなとその小さな体を震わせている。


「何も言わずに抱いてくれたら、全てが終わったのに……! 私もこの運命から、逃れる事が出来たのに――!」


「シアン、スカ……?」


「アナタの優しさは、残酷すぎますよ……! 私が、どんな気持ちで……アナタを救おうとしたのか、分からないんですか?」


 ああ、そうか。俺は大馬鹿だ。

 彼女は過去に育ての父や、他にも多くの男を見殺しにして生き延びてきた。

 たった一度。どこかで処女を捨てていれば……こんな力に振り回される事も無くなかったというのに。それでも、自らの純潔を大切にしてきたんだ。

 そんな大切な処女を、彼女は俺に捧げようとしてくれた。

 キッカケは俺の命を救う為でも、その心の中には――


「……アナタなら、いいかもって思ったんです。ハッキリとした理由なんか、私にも分かりません。ただ、ネトレさんを助けたいと……死んで欲しくないと!」


「ごめん。俺が悪かったよ」


「あっ」


 俺は両腕を伸ばしてシアンスカを抱き寄せる。

 肌と肌が触れ合い、お互いの体温だけではなく、心臓の鼓動を感じ会えるほどに密着しながら……俺は彼女の気持ちに応える。


「俺は今から、お前を抱く。でもそれは、自分の命のためじゃない」


「じゃあ……?」


「バカだな。こんなにも可愛い女の子から、告白まがいのアプローチを受けたんだ。すっかり、お前が欲しくなっちまったよ」


「~~~っ!?」


 俺はシアンスカの被っている帽子を外し、出てきた角を優しく撫でる。

 するとシアンスカはぴくんと、快感によがるように腰を跳ねさせた。


「シアンスカ。これからお前を、俺のモノにする」


「あっ……」


「ダイルナよりも、フロンティアよりも。何よりも俺を優先して、俺の為に生きて、俺を一番愛する女へと変えてやる。それでも、いいか?」


「わ、私は……むぐっ!? むむぅ~!? んっ、んぅ……ぁん」


 躊躇いを見せたシアンスカの唇を奪い、そしてその口内さえも蹂躙する。

 そうしていくと次第にシアンスカの瞳から険しさが抜けて……トロンとし始める。


「ぷはぁっ……どうだ? 俺のモノになるか?」


「……なる」


 惚け切った顔で、シアンスカが頷く。


「なります……なりたい、ならせて。アナタのモノにして……アナタの女にして」


 何度も何度も懇願し、彼女はスリスリと自分の太ももを俺の股間へと擦ってくる。

 早く入れて欲しいと。自分の処女を奪ってほしいとねだるように。


「ああ、分かった」


「あんっ……♪ あぁんっ……んぁっ!」


 覚悟を決めて、シアンスカの肌の上で手を滑らせるように下着をずらしていく。

 これから俺はシアンスカを抱く。

 この幼気な少女を長年苦しめ続けた、クソッタレなサキュバスの呪縛から――


「さぁ、挿れるよ」


「うんっ、来てぇ……♪」


 なんとしても、寝取ってやるんだ。

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