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16話:エッチ禁止令と始まる誤解

「お前らに大切な話がある」


「「……」」


 サンルーナの宿屋の一室。

 ベッドの端に腰掛けている俺に対し、アイとガティは床の上で全裸正座をしている。

 俺はそんな彼女達に向かって、少しキツめの語気で告げる事にした。


「しばらくの間、エッチは禁止だ」


「ええええっ!? そんなの酷いよぉっ!」


「はぁぁぁっ!? どういう事だ!」


 当然のように、驚愕と不満に満ちた声を上げる二人。

 しかし、俺は考えを改めるつもりは無い。


「毎日、これだけの回数……お前達の相手をしていたら、俺は死んじまう」


「うっ……!? それは確かに、嫌だけどぉ」


「だが、お前と愛し合えないというのは……私達にとって死活問題だ!」


「……だから、これからはポイント制を導入します」


「「ポイント制!?」」


「……俺の役に立つ事をする度に、ポイントをあげます。そのポイントを消費すれば、エッチしてもオーケーだ」


「はいはいはーいっ! 今からネトレを気持ちよくしてあげるっ! そうしたらポイントを貰って、そのポイントでネトレとエッチして! またポイントを貰うの!」


「おおっ! まさに無限ループ! その手があったか……!」


「その手はねーよ」


「「あたっ!?」」


 アホな事を言う二人のおでこに一発ずつチョップをお見舞いしておく。

 俺もこの二人とヤる事が嫌なわけではないが、本来の目的を忘れてしまってはいけないからな。


「うぅ……じゃあ、どうすればポイントをくれるの?」


「フロンティアの情報を街の人から集めてきてくれ。それが有益な情報なら、ポイントをあげるよ」


「いいだろう! 街の連中を根絶やしにしてでも、情報を聞き出してきてやるぞ!」


「1万ポイント分くらい溜めて、ずぅーっとネトレとエッチしちゃうもんねー!」


「こらこら、服を着てからにしなさい」


 全裸のまま、飛び出していこうとする二人の首根っこを掴んで引き止める。

 二人の暴走を抑える為に導入したポイント制だが、これは失敗だったか……?


【ギルド・フロンティア】


「ただいま戻りました」


「あらぁ、シアンちゃん。お帰りなさぁい」


 任務を終えて、自身の所属するギルドへと舞い戻ったシアンスカを出迎えたのは、ギルドマスターであるダイルナ・フラミストであった。

 彼女はギルド内に併設された酒場で飲んでいたようで、カウンター席に腰掛けながら、その右手にはグラスが握られている。


「……真っ昼間からお酒ですか」


「いいじゃなぁい。飲まなきゃやってらんないのよぉ……ぐびぐびぐびっ」


 呆れるシアンスカを尻目に、グラスの中身を一気に煽るダイルナ。

 そんな義母の姿を見て、シアンスカは表情一つ変えずに3つほど離れた椅子に腰を下ろした。


「ちょっとぉ、どうしてそんなに離れるのぉ?」


「お酒臭いので。あっ、店主さん。私はいつものを」


「あいよ、シアンスカ! アイスミルクのダブルね!」


 カウンター奥の中年女性……酒場の店主はにこやかに注文を受けて、手早く用意した牛乳入りのグラスをシアンスカへと差し出した。


「あいすみるくぅ? ここは子供の来る場所じゃないわぁ」


「働かない酔っぱらいが居座る場所でもありませんが」


「むぅっ……! 言っておくけどぉ、今さら牛乳を飲んでも、大きくなれないわよぉ?」


「うるさいですね」


「だぁーって! 私は子供の頃から牛乳が嫌いなんだもぉーんっ! それでこの、おっきなおっぱいなんでぇーすっ!」


 酔った勢いでウザ絡みするダイルナが鬱陶しくなってきたのか。

 シアンスカは視線を合わせる事なく、右手の指先をダイルナへと向ける。


「凍て付く鼓動。閉ざされる光。魔導閉鎖・フリーズロック」


「あっ……」


 しまったと、ダイルナが思った瞬間には全てが手遅れ。

 文字通り、あっという間にダイルナはシアンスカの魔法によって氷の結晶の中に閉じ込められてしまう。


「あらま! 見事に凍っちゃったね!」


「いつもの事です」


 カチコチに凍ったダイルナを見て驚く店主。

 一方のシアンスカは涼しい顔で、美味しそうに牛乳を口にする。

 しかし、そんな安寧の時間も束の間。


「ちょっとちょっとぉ! いきなり凍りつかせるのは酷いわよぉ!」


「……チッ」


 すぐに氷の牢獄から脱出し、ケロッとした様子のダイルナ。

 シアンスカは忌々しげに、舌打ちを鳴らし、牛乳入りのグラスをカウンターに置く。


「あーあ。今日は嫌な事があったからぁ、飲んで忘れようと思っていたのにぃ。こんなに早くシアンちゃんが戻ってくるなんて誤算だったわぁ!」


「偶然ですよ。たまたま、私の任務を先に終わらせてくれた親切な人達がいまして」


「親切な人達?」


「例の……エクリプス王国の勇者ですよ。勇者証を持っているのを見ましたから、間違いありませんね」


 つい先ほど出会ったネトレ達の事を思い出しながら、ダイルナに説明するシアンスカ。

 だが、その話を聞いたダイルナの顔は……次第に曇っていく。


「勇者、ですってぇ?」


「ええ。私が見た印象ですと……」


「あんなクソ野郎の話はしないでちょうだいっ!」


 いきなり声を荒らげて、シアンスカの言葉を遮るダイルナ。


「……急にどうしたんですか?」


「私も今朝、勇者一行に会ったのよぉ。ほら、あの悪役令嬢からの依頼で……」


「ああ、そんな依頼もありましたね。しかし、勇者と会った……?」


「勇者の仲間がムカつく女達でねぇ、危うく……封印解除しちゃうところだったわぁ」


「勇者の仲間……あの人達が?」


 そう言われて思い出すのは、青い髪の少女と紫髪の女騎士。

 どちらも特におかしな要素は無かったと記憶しているシアンスカ。


「でも、一番気に入らないのは勇者本人よぉっ! ああっ! 思い出したくもないっ!」


「ギルドマスターがそこまで言うのなら、相当なんでしょうね」


「……もし万が一、あの勇者が私を訪ねてきてもぉ、ぜぇーったいに取り合わないで! いいわね、シアンちゃんっ!」


「承知しました。個人的に、彼には一度礼をしたかったのですが……」


「騙されちゃダメよぉ、シアンちゃん。百人近い男に抱かれてきた私には、男の良し悪しが一目で分かるんだからぁ」


「……はい」


 どこか腑に落ちない点を感じながらも、ダイルナの言いつけを承知するシアンスカ。

 しかし、彼女もダイルナも気付いていない。

 シアンスカが出会った勇者が、ニセ勇者のネトレという人物で。

 ダイルナが出会った勇者は、本物の勇者であるという事を。


「男の良し悪し……ですか」


 この勘違いが後に、非常に面倒で厄介な事態を招くのだが。


「うーん……割と好みだっただけに、残念ですね」


 それもまた、この時の彼女達には知る由もない事である。


『ステータスが更新されました』


<<ダイルナ・フラミスト>>

【年齢】29歳

【職業】ギルド『フロンティア』所属 ギルドマスター

【性技レベル】F

【スリーサイズ】B108 W68 H95

【経験人数】99人

【経験回数】99回

【戦闘レベル】55

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