13話:次なる寝取られ候補達(未亡人ギルドマスター&ワガママ悪役令嬢)
【サンルーナ とあるギルド】
「ぐっ……はぁっ……ああああっ!」
エクリプス王国から遠く離れた皇国サンルーナ。
その城下町の一角に存在するギルド。その一部屋にて、苦悶に満ちた男の嬌声が響き渡っていた。
「がはっ……」
「あらあらぁ、もう限界なんですかぁ?」
ベッドの上で倒れた男の顔を覗き込むのは、妖艶な雰囲気を漂わせる……全裸の女性。
彼女は自分の頭のサイズを遥かに上回る豊満な胸を揺らし、うんざりとした様子で溜息を漏らした。
「はぁ……もう死んじゃったのねぇ」
既に事切れていた男。
ミイラの如く痩せこけ、骨と皮だけになっているその姿は……まるで、吸血鬼に生き血を吸いつくされたかのようだ。
「つまんなぁい。だぁれも、私をイカせる事なく……あの世に逝っちゃうんだからぁ」
女は白銀の髪をなびかせ、退屈そうにベッドに寝転がる。
と、その時。コンコンと部屋の扉がノックされた。
「失礼します。ギルドマスター」
「あらぁ、どうしたのぉ? いつも私がシてる時はぁ、部屋に近寄らないのにぃ」
中へ入ってきたのは幼い少女だった。
外見年齢は10歳前後といったところ。しかし、その口ぶりは落ち着き払っていて、やけに大人びている。
「何十回も死体の処理をしていれば慣れますよ」
「……いやぁね。私が殺しているみたいな言い方はやめてよぉ」
「抱けば必ず死ぬ女。その噂を知りつつ、自ら挑んだわけですからね」
「そうよぉ。この人ったらぁ、俺のチ○ポでひぃひぃ言わせるとか言っていたくせにぃ、たった5発で死んじゃったのぉ」
シクシクと涙を拭う素振りを見せる女だが、その瞳には全く涙は滲んでいない。
「うぅー……どこかにいないのかしらぁ? 私を熱くさせて、そして――人生初の絶頂を味あわせてくれるような男は」
「元ギルドマスター……死んだ旦那さんが、草葉の陰で泣いてますよ?」
「今思えば、あの人のおちん○んが一番小さかったわねぇ……」
過去を懐かしみ、そんな一言を漏らす女。
彼女はまだ知らない。
もうじき自分の前に、身も心も、全てを満たしてくれる最高の男が現れる事を。
そして、人生初の絶頂はおろか……それはもう、すんごい勢いでイキ過ぎてしまう事を。
「……はぁ。私は、そういうの興味ありませんが」
そしてこの幼女も、澄ました顔をしているが。
いずれ、白目を剥き、だらしなく開いた口から涎を垂れ流し、快感の波に酔いしれてイキまくるのである。
運命は、もうすぐそこまで迫っていた。
【サンルーナ とある屋敷】
「ああっ、我が娘よ! 何が気に入らないのだ!」
「何もかもが、ですわ」
サンルーナを治める皇帝が暮らす城塞。
そのすぐ隣には、サンルーナの中でも一二を争う巨大な屋敷がそびえている。
そこに住まうのは、皇帝の側近を務める貴族であった。
「今回選んだ相手は、この国でも選りすぐりの剣士で、出身も名門の――」
「そういう問題ではありませんの。ワタクシが気に入らない。それだけの話でしてよ」
「し、しかしだな。それでもう、百人近くも婚約破棄をするとは……」
「とにかく。ワタクシはぜぇーったいに! 結婚なんてしてやりませんわ!」
枝毛一つ無いきめ細やかな金髪の髪と、月の輝きを彷彿とさせる金色の瞳。
まるで芸術品のような美を漂わせる少女は、吐き捨てるようにそう言い残すと、優雅なドレススカートの裾を軽く持ち上げて会釈し、その場から立ち去っていく。
「……困ったものだ」
「いやー、お嬢の我儘も筋金入りっすねぇ」
残されたのは、少女の父親である初老の男。
そして、その隣に控える……フードで顔を覆い隠している女性である。
「婚約破棄を百回近く。他の貴族の令嬢を虐めて問題を起こす事、数十回。我が娘ながら、よくぞここまで捻くれたものよ……」
「あはははっ、巷では悪人みたいな令嬢だから、悪役令嬢とか呼ばれてるらしいっすよ」
「馬鹿者! 笑い事ではないわ!」
ケラケラと笑うフードの女に一喝する男。
それを受けて、フードの女はしょんぼりとした様子で項垂れる。
「当家に代々仕える占い師の一族……その自覚が足りないのではないか?」
「そう言われましても。あーし、まだまだ未熟なもんで」
「ええい、弱音はいい! 我が娘を落ち着かせる、良いアイデアは無いのか!?」
「それでしたら、一つだけあるっすよ。今朝、なんとなく占ったら、すっげー結果が出てきちゃった……みたいな?」
「あるのか!? では、それを早く申さぬか!」
「えっと……確か占いによると。お嬢はもうすぐ妊娠するっす」
「……ほぁっ!?」
「そして、その子供の父親と共にサンルーナを……いや、この世界の全てを手にすると」
「何を馬鹿な!? そんな事、あるわけが無かろう!」
「いやでも、これが占いなんで」
「もうよい! 最初からお前の占いなどアテにしておらぬ!」
「えぇー……マジでショックすわぁ。ガン萎え~」
激昂しながら部屋を出ていく主の背中を見つめる占い師。
彼女は彼が完全に去ったのを確認してから、こうも呟く。
「……お嬢を孕ませる男は、いずれあーしも孕ませる……か。なにそれ、ちょーウケる」
やはり自分には占いの才能など無かったのかもと、笑みをこぼす占い師。
しかし、彼女はまだ知らない。いや、知っているのに気付いていない。
自分の占いが本当に実現するという事を。




