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86・馬って旨いのか?それが一番の問題だ

「しかし、それでは公を危険にさらすではないか」


 イケメンがホッコに抗議している。


 砦を空にすることは了承されたが、その砦をどう使うかを話した途端、イケメン騎士がそう言いだした。


「問題は無い筈だが?熊を3頭も倒した奴が多少の馬賊ごとき、どうという事は無い」


 ホッコがそう言いだす。


「たしかに、その話は聞いている。しかしだ、熊とウゴルの軍勢を同じと考えるのはどうかと思うが?一対一ならともかく、公の連れてきた軍勢はウゴルの一割程度ではないのか?それで勝てると?」


「山の戦士はその程度しか連れて来ていないらしいが、俺の配下を忘れてないか?見た通り、数で語れるほど小さな戦力じゃねぇ」


 ホッコは義母にそう胸を張った。


 騎馬に対する戦法は、遠距離から矢を射掛けるか、槍衾で防御するんだったか。ただ、聞いた話だと曲芸みたいなことを平気でする連中らしいから、槍衾を障害飛びのように簡単に超えていくかもしれない。

 それでも山の戦士が戦斧を振り回せば容易に避けていけるわけではないらしいので、常識的な戦法が通用しない相手でもないのだろう。


「戦力的な話はそうかもしれん、しかし、縁辺公は王に次ぐこの国の貴人だ。それを戦の最前列に置くなど、考えられることではない」


 義母はそう食い下がる。


「そうは言うが、大公軍が攻めて来た時も、大公派貴族が攻めて来た時も、戦の先頭に居たのはコイツだぞ?」


 ホッコが義母にこれまでの事をそう問いかけると、さすがに言い返す言葉が見つからなかったらしい。そして、俺を見つめてくる。


「問題は無い。これまでもそうしてきた。今回はホッコも居る。危険な事は無いと思うぞ」


 義母の目を見てそう返事しておく。


「分かりました。公がそうおっしゃるならば、引き留めは致しません。その代わり、私も同行いたします」


 やはり、ヘンナの母親だった。


「あんたなら足手まといにはならねぇ。良いだろう。ウルホ、イアンバヌ。家族の面倒はお前らが見ろよ」


 ホッコはそう言ってきたので頷いておく。



 撤退する砦はホッコの注文通りに林の中にある大きなものだった。義母によると街道の要となる砦だとかで、ここを抜かれるとスッコゼロまで一気に攻め寄せることが可能だそうだ。ホッコの奴は一体何を考えてるんだ?一番守りを固めなければいけない砦ではないのか?


 その砦を出た兵たちは連携するいくつかの砦へと増援に向かうことになった。


「では、街道に障害を構築しようか。馬賊の対処は山の戦士が得意なはずだ、任せるぞ、小株」


 ホッコはそう言ってイアンバヌと山の戦士に障害物の制作を任せるようだった。


「さて、すこし馬賊の頭に血を上らせて来るとするか。ウルホ、軍の指揮権はお前にあるんだったな?」


 そう聞いて来るので、頷いておく。


「そうか。なら、前線の砦に撤退命令を出せ。あとは、俺と母親で上手くやる」


 そう言うので、撤退命令書を作って貰い、後の事を二人に任せる旨の命令に署名した。


「公、本当によろしいので?」


 義母は心配そうにそう言いながら、どうにも自分は戦いたいという顔が隠せていない。


「後は任せる」


 そう言うと、どこか嬉しそうに配下を引き連れ、ホッコと作戦会議に入るようだった。ああ、義父は根っからの文官なので完全にボッチだ。だが、兵站業務を一手に引き受けている様で、かなり忙しそうにしている。なにせ、カヤーニやルヤンペたちがやって来ることになっているから、あと5千ほどの増援を前提にした兵站の構築が必要なのだ、一番大変なのは義父なのかもしれない。



 数日後には作戦が纏まったらしく、最終的にはカヤーニやルヤンペたちがスッコゼロに到着してから本格的な掃討戦をやる前提で、現在最も強力な敵を砦まで誘導して殲滅する計画を立てているという。


「障害が出来上がるのが5日程度先らしい。6日後に備蓄切れを装って最前線に位置的に穴を開けて馬賊を誘い込む」


 俺たちは砦の少し前方に陣取りその時を待つことになった。


 スッコゼロに来てからここの特産品を食べていない。毎食が野戦食に毛が生えたようなモノばかりだった。これならンビセンやパンムで良いと文句を言ったら、義母からそれでは兵と同じものになるというので、それで良いというと困惑していた。

 兵と同じものだという食事の方がおいしいってどうなってるんだ?


 何か訳の分らん濃い味付けの肉にイマイチのスープを出されるよりは、ドッサリこま切れ肉や野菜を煮込んで作ったスープとそのスープでちょっと味付けしたひき肉の盛り合わせの方が良かった。ひき肉と乱切り野菜の炒めものをパンムで巻いて食べたり、みじん切り野菜にスープの残り汁と切り落とし肉を混ぜて炒めたモノをンビセンをスプーン代わりに掬くって一緒に食べる。

 どう考えてもそっちの方がおいしかった。やたら濃いだけで香辛料をとにかくぶっこんだ食い物なんか数度食えば飽きてしまう。よく飽きずに食えるもんだ。下拵えが出来ないと言うが、砦の外で腸詰や燻製肉を使ったスープを義母が絶賛していたのを見ると、ゼロの食事情に非常に疑問が浮かんできた。


「イアンバヌ、馬って食ったことあるか?」


 明日が作戦決行という段階で、ふと、前世の馬刺しやさくら節が頭に浮かんできた。焼肉屋で牛のユッケが提供できなくなって、残っていたのがサクラユッケだというので食べたことがある。馬刺しもメニューにあって食ったことがあったなと思い出した。


「無いけど、東では耕作に馬を使うから食べてるかもね。ウゴルは馬の扱いに慣れてるから食べてるかもしれないよ。でも、ウゴルもたしか、ヤギを飼っていて、よく食べるのはヤギだったような気がするけど」


 という。たしかに、遊牧民ならヒツジやヤギを飼ってるのが一般的だろう。


「そうか。だが、今ははるか遠くから遠征してきているから馬を食べていないとも限らないな」


 そう確認すると、可能性はあるという。


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