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85・作戦会議をすることになった

 スッコゼロに到着した。


 そこはのどかな草原が広がる平和な場所にしか見えなかった。ここはすでにラッピ高原の一部を形成する場所であり、ゼロの谷は高原と低地を隔てる地域となっているそうだ。


「動物が群れているな。あれはなんだ?」


 そこには薄茶色の毛並みを持った動物が群れていた。


「あれはヤギだろうね」


 ケッコナがそう言うが、俺の目には羊っぽく見えた。そう言えば、毛糸の生産をしてるとか言ってなかったか?ヤギと羊の中間といった動物なんだろうなきっと。


 次第に近づくと確かにヤギに見えなくもない。が、毛が長い。羊にしては顔が違うが、まあ、ヤギなんだろう。そう言う事にしよう。


 どうやら先ほどから見えていた小高いモノがスッコゼロの街らしく、街壁の一角に門が見える。


 門に近づくと門番の兵に止められた。


「王命である。縁辺公ウルホが援軍を率いて参上した」


 命令書と共にもたらされた印を示してそう告げると門番の一人が荒てて街中へと走っていった。やはり、こちらでもこんなに早く着くとは考えていなかったようだ。


 程なくして馬で掛けてくる人物が居るが、一体誰なんだろうか?



「これは縁辺公!!」


 門まで来ると馬を降りて駆けてきた。そういえば、このイケメン中年はヘンナの父親ではないだろうか。一人で駆けて来るとか大丈夫なのか?色々と。


「アホカス卿、久しいな」


 俺はそういって義父と握手した。


「ほう、俺には劣るがなかなかの容姿だな。が、変な気は起こすなよ?」


 どこからともなくホッコが現れて義父にそんな啖呵を切る。何を考えているんだコイツは。


「な・・、お、お前は・・」


 驚く義父。まあ、仕方がない。


「ホッコ、急に現れてそれは無いだろう?相手はヘンナの父だぞ」


 そう注意したが、どうも理解していないようだ。


「ウルホ、こいつには気を付けろ?娘は女だから見逃すが、コイツを見逃す気は無いからな」


 一体何に対抗心を持っているのかまるで理解できない。


「公、ところで・・・」


 義父は何やら怯えながら俺に聞いてくる。


「コレは森の民、ケッコナン族のホッコだ。カルヤラでいえば宰相のような地位にある。今回は森の民の精鋭を連れて来ている」


 そう言うと義父が固まった。


「ケッコナン族・・、精鋭・・・、公、もしや・・・」


 何やら言っているのでケッコナとイアンバヌも紹介した。


「この者が森の民より嫁いできたケッコナだ。隣に居るのが山の民より嫁いできたイアンバヌ。母親は森の民だそうで、容姿は森の民に近い」


 二人がそれぞれの礼をするのを呆然と見つめる義父だった。


「すると・・・」


 義父がホッコを見る。


「ホッコはケッコナの姉、ケッコイの婚約者だ。いわば、縁戚だな」


 そういうと何やら安堵している様だった。確かに、いきなり森の民の、しかもケッコナンの宰相などと紹介したら荒てるだろう。俺との関係性も気になって当然だ。


「そうでしたか。縁戚・・・」


「お互い縁戚という事だ。立場をわきまえる事だな」


 義父にホッコがさらに何やら畳みかけている。コイツは何がしたいんだ?


「それより、現状がどうなっているのか知りたい」


「分かりました。まずは館へどうぞ」


 義父がそう言うので付いて行く。


 街中を進んでいくと、街壁と同じような壁がまたそびえて居た。そこが館らしく、先ほど同様の丈夫な門がそびえていた。


「公が支援においでになる事は王都より伝えられております。ただ、早くとも半月先と考えておりましたので特別な用意は出来ておりません」


 なぜかそう言いながら俺の肩や背中を触ってくる。そして、ホッコが義父を睨んでいる。何だろうかこの二人は。


「オホト、公が嫌がっていますよ」


 館に入るともう一人イケメンが現れた。


「キ、キエロか、お前も公にご挨拶せよ」


 義父は声をかけられるとまるでケッコイに怯えるホッコの様に硬直したが、すぐさま取り繕って威厳ある態度でそう言う。このイケメンはヘンナの母親だ。

 確か、彼女も近衛騎士だったんではなかったかな?この母にしてあの娘ありと言ったら失礼か。


「お久しゅうございます。縁辺公。遠路はるばる御助勢ありがとうございます。わが夫がご迷惑をおかけしている様で、後で言い聞かせておきます」


 そう言って挨拶して俺と義父に微笑みかけた。アカン、ケッコイと同じ笑顔やんけ。これはアカン奴やで。


「戦況については私から説明させていただきますのでこちらへどうぞ」


 そう促されて義母に付いて行く。ケッコナとイアンバヌは一緒に来るが、なぜかホッコも直立不動になっている。


「どうした?ホッコ」


「何でもない」


 俺の言葉で金縛りが解けたように後を追ってくる。義父は・・・、そっとしておこう。


 義母による戦況報告では、かなり不利な状況にあるようだった。砦は一応死守出来てはいるのだが、点と線を何とか結んでいるにすぎず、本格的な援軍が無ければ遠からずいくつかは陥落は必至の状況らしい。


「なるほど、事前に聞いている状況と相違ないらしいな。そうなると、ホッコ。何か策は無いか?」


 すでに偵察に出ている森の民から戦況は聞いている。スッコゼロの認識がどうかだけが残された問題だったが、さすが元近衛騎士、戦況を客観的に理解、分析できているという事だろう。俺にこびへつらう様な楽観論や、縋りつく様な悲観論に逃げ込んでいるという事は無かった。


「策か。安全に撤退可能な砦を完全に空に出来ないか?武器や兵糧もすべて持ち出してほしい。林の中にある砦なら最高だな」


 そう言って地図と言うには大雑多な図面の上に指をなぞる。


「しかし、そんなことをすればせっかくの防衛線が崩れてしまいます」


 義母がそう疑問を呈すが、ホッコは余裕の笑みだ。


「馬賊に占拠させればいい。入れるならばだが。ちなみに、そこの木にいる部下が見えるかな?」


 そう言ってホッコが窓の外の木を指さした。全員がその方向を向く。言われて探せば何とか見つけた。


「二人いるな」


 俺がそう言うと義母やその側近たちが驚いていた。


「二人?ど・・どこに?」


 側近の一人がそう言う。義母はどうやら見つけたらしい。そして、俺を見て微笑んだ。


「どうだ?コレが森の民だ。本気で気配を消せば二人を見つけるのはまず不可能になる。今でさえ、見付けられたのは半数にも満たないようだが」


「なるほど。ヘンナが大げさに言ってるのかと思ったけれど、どうやらその実力は本物だね。まさか、私より先に公が二人を見つけたのにも驚きましたよ。陛下が一目置くのも分かります」


 そう言ってホッコに語り掛け、もう一度俺に微笑んだ。

  


  



 

 

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