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84・スッコゼロへと向かう事にした

 使者が帰ると俺たちはすぐに出発した。


 使者の歓待?どうやらあちらもそんな事はまるで望んでいないとばかりにそそくさと帰って行った。


 使者を乗せた船が出港するとそれに同伴するようにルヤンペたちへ向けた物資を積んだ船もムホスへと出向させた。

 必要ない事が望ましいが、運河工事の山の民も援軍としてゼロへ向かってもらう必要があるので、その装備を乗せている。


「ウルホも考えたね。使者が見たらこれからムホスへ第一陣を送り出すように見えるよ。これから船団の準備をしてクフモ経由なら、どう頑張っても一月近くかかると思うだろうね」


 イアンバヌがそんな事を言っている。使者を騙して何か良い事でもあるんだろうか。よく分からない。


 そんな事を言いながらも俺たちは出発の準備を整え、森の民の使う獣道の様な道へと分け入っていく。当然、俺の脚では付いて行けないので、森の民に背負ってもらっているのは、大公が攻めて来た時と同じだ。


 ゼロの谷を目指すのでウマゲを経由するのかと思ったら、ヒョウゲから直接ゼロ地域の北に位置するテンゴへ向かう道を使うという。

 俺は森の民に背負われているので景色を見ているのだが、すでにどこを走っているのかまるで分らない山の中だった。道すらよく分からない。


 あたりが暗くなりだしたので今日はこの辺りで夜営すると言って降ろされたが、どれだけ進んだのか皆目見当もつかなかった。


「少し先の道を南に走ればクフモへ行けるよ。ただ、この辺りは熊もかなり出るからおすすめはしないけど」


 ケッコナがそんな事を言ってきた。


 俺にそんなことを話し掛けながらも、何やら調理している。


 山の民は干し肉とアピオを持っているので、アピオを潰して団子にしたり、簡易の製麺機を用いてフェンにしている。

 その鍋に干し肉とその辺りの香草や山菜を刻めば出来上がりらしい。


 森の民はヤムという栗みたいな木の実を持っている様で、それを焼いて食べるグループと乾燥団子にして持ち歩いていて、腸詰や干し肉と一緒に鍋で煮てスープにするグループが居る。


 ケッコナはピッピを持ってきていたようで、ピッピと腸詰、山菜を煮ているようだった。


「塩もしていないのにしっかりしたスープになっているな」


 ケッコナが作ってくれたその粥を食べてみると腸詰から出汁が出ていて、調味料を使っていないのにしっかりした味だった。


「フェン作ってる・・・」


 イアンバヌはどうやら山の民のグループに製麺機を持った者が居たことがうらやましいらしい。まだ数日あるから借りてくればいいと思うが、フェン用のアピオを用意していないらしくて、器具だけ借りてもどうにもならないらしい。


「明日はあのグループと夕飯の交換して見れば良いんじゃない?」


 ケッコナがそう言うと、イアンバヌの表情が明るくなった。



 その次の日にはテンゴの郷を横切って夜営となった。


 朝食?昼食?朝食は夜の残りの団子や粥を温めなおして食べる程度で特にこれといった調理はしない。昼食に至っては小休止の間食程度なので、ンビセンと干し肉か腸詰を炙って食べる程度で移動を続けるという状態だった。


 2日目の夕食はフェンを作るグループが入れ替わっており、イアンバヌはフェンのグループへと向かって行った。

 ケッコナは今日は何をするのかと思ったら、アピオと腸詰と山菜でポトフを作った。これにンビセンを添えて食べるという。

 イアンバヌがフェンのグループに行ってフェンを調達してきた代わりに、ケッコナが作ったポトフをひとつ、フェングループへと渡している。

 俺の隣では調達してきたフェンをおいしそうに食べるイアンバヌが居る。


「そのフェンは少し黒いな」

 

 俺がそう言うと


「ピッピを混ぜてるらしいよ。ウルホが作った乾燥フェンのレシピを元にしてるみたい。打ったフェンをそのまま鍋に入れるから水も無駄になってないよ」


 そう言って食べていた。


 なるほど、うどん県の打ち込みうどんを模したフェンだからゆで汁を捨てる必要が無いのか。乾麺でもそのタイプを作っておけばよかったのかもしれない。


 そんなことを考えながらポトフを食べた。やはり、腸詰って万能なんだな。携行保存食用に作った奴らしいから、香草や塩もずいぶん大きいのかもしれない。そのまま齧ると流石にキツイ奴だが、こうしてスープにするとものすごくおいしい。


 さすがに夜営での食事というのはバリエーションは多くない。持ち運べる食品が限られるので、作れるものも固定されている。

 ヤムを焼いて食べているグループは3日目には、山の民から製麺機を借りてフェンを作っていた。どうやら二つのグループで共同して作るらしくて味の問題で少し対立があったようだ。


「干し肉か腸詰かで喧嘩とか止めて欲しい」


 話を聞いて俺はそう思ったのだが、そもそもの味付けの問題があるのでどちらも譲れない問題らしかったが、干し肉の在庫の問題で山の民が折れたようだった。


 ケッコナは腸詰出汁でオハウを作ってくれた。本来ならその日獲った獲物を使うオハウだが、夜営なので腸詰になるらしい。これはこれでおいしいから問題ない。


「ウルホ、今ある材料だと、明日はピッピ粥に戻るから」


 ケッコナを褒めたら苦笑しながらそう言われた。


 軍隊に必要なものは何か?


 武器?防具?馬や戦車?


 どうやら一番必要なものは食事らしいと読んだことがある。その昔は日本だと米や味噌をそのまま齧ったりなめたり、炊いた米を乾燥させたアルファ化米の原型みたいなのを作ったりしたらしい。欧米だとクッソ堅い乾パンが主流だった。

 それが、ナポレオンの頃に瓶詰を遠征に持って行っていろいろ困ったらしく、その後、鉄で作った缶を用いる缶詰が開発された。

 当初は鉄だったが、ほどなく酸化に強い錫をメッキしたブリキを用いるようになる。ただ、当初は蓋がはんだ付けであったために鉛中毒も起こしていたらしいが、鉸め技術が開発されると大きく普及していったらしい。

 一番に普及したのはナポレオンが求めたように軍の携行糧食だった。


 というのも、戦場で士気を保つのに一番必要なものは食事であり、日常と変わらない食事を提供することが最も士気を維持するのに適しているという事らしい。


 そのため、21世紀には各国、自国の名産料理をそのまま缶詰やレトルトパックにして兵士に持たすようになっている。ドイツやフランスなどの糧食は何処のレストランかという様な豪華なメニューまで揃う一品だが、合理主義の米国のモノはとにかくカロリーという事で味は二の次で不評だという。


 瓶詰や缶詰がないこの世界では、保存食と言えば塩漬けや干し肉が中心になるので、どうしても味についての争いは起きてしまう。缶詰、作れたらいいんだが、さすがに錫メッキなんか分からん。ルヤンペもメッキ法までは知らないんじゃないだろうか?

 瓶詰ならビンに詰めて熱湯で良いんだが、缶詰の場合、圧力蒸気釜が必要になる。流石にそんなものは今作るのは無理がありそうなので、諦めるしかないな。



 そんなことをしている間にとうとうスッコゼロまで来てしまった。


 

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