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60・俺を男の娘に扱うのはホッコだけで十分だ

 灰色の餅が出来上がり、皿の上に丸めて置かれていく。餡子があったらおいしくできるのになと思ったが、砂糖と小豆が無い。


 いや、探せばあるのかもしれないが、今すぐ手に入るという訳ではない。カルヤラで甘味と言えばメイプルシロップの事を指す。

 ちょうど、サトウカエデの様な木があって、その樹液を煮詰めて作るのだ。茶色なので、樹液だと分かるだろう。


 確かに、アレを使うのも良いが、この灰色の餅にどう合わせるのか。


 豆類はいくつかあるにはあるが、小豆以外で餡子って作れるの?それとも、きな粉の要領で豆を粉にしてしまうか?



 などと思っていたら、山の民が持ち込んだアピオを潰して蒸したシヤマムと混ぜて撞いている。まあ、アレで良いか。


「ところで、この実はいつ頃収穫するんだ?」


 俺の前で餅を丸めているメイドに聞いてみた。


「シヤマムはちょうど今の時期から収穫が始まります。地域によって種まきの時期が違うので、これからひと月ほどかけて各地で収穫が行われます」


 と返事があった。


 なるほど、アマムよりも少し早いんだな。


 そうと分かれば、もしものために持ち込んだアレが使える。



 そして翌日、ルヤンペやヘンナも連れて、アレをもってシヤマムの畑へと出向くことにした。


 護衛は山の民だけで良いといったのだが、カヤーニが兵を付けて来たのでものすごく大所帯での行進になってしまった。


 シヤマムの畑がある村はクフモからほど近く、湿原の一角を畑、いや、見るからに水田化している様だった。


「なるほど、あの黒々としたあたりが全てそうなんだな?」


 俺が道案内の騎士に尋ねると、そうだという。


 村人は俺たちが現れたことで収穫作業どころではなくなっているようだが、騎士たちが作業に戻る様に促している。


「さて、ここに置けば良いだろう」


 俺はその混乱を横目に山の民が運んできたアレを田んぼの畔に置くよう指示をする。そして、傍らの農民へと近づいた。


 ヘンナや護衛も付き従っているので農民は平伏してしまっている。まあ、ヘンナを見ればそうなるのも仕方がない。なんせ、ヘンナに威厳がありすぎるんだ。



「すまないが、その束を少し分けてはくれないか?」


 俺は農民の横に積み重ねられているシヤマムの束を指して言った。


「へへー」


 と、内容を理解するよりも言われたからそう言ったという風に答える農民。


 ナンションナーではありえない光景だが、ここではそれが普通なんだろう。


 仕方がないので、それを了解と受け取って、山の民と手分けして束をアレまで運んだ。


 今回のハーベスターは改良品だ。動力は人力だが、今回は脱穀ドラムの配置が違う。以前のモノは唐箕の上にドラムを配置して、唐箕上の投入口をそのまま利用する形だったのだが、今回は滑車の原理を利用して、手回しハンドルと唐箕の風車や脱穀ドラムを大小系の違うプーリとしてそれらを縄製ベルトでつないでいる。

 そして、一番大きな違いは、唐箕に脱穀機を上乗せしたのではなく、ミケエムシの試作から応用して、揺動棚までも設けた本格的なハーベスターにしたことだ。


 搬送チェーンも付けたかったが、さすがに手回しでは無理があるというので、そこは従来通りで我慢することにした。


「さあ、みんな、見て見ろ」


 そう言って山の民がハンドルを回し、機械が始動する。エンジンではないので大きな音がする訳でもなく、多少、揺動棚が動く音がするだけだが、ゴトゴト音がするので、近くの農民や騎士が何事かとこちらを見る。


 そして、俺が脱穀ドラムにシヤマムを挿し込むと脱穀が行われ、ハーベスター下方からは脱穀、選別されたシヤマムが流れ出てくる。


 その光景を農民や騎士が手品でも見るかのように驚いた顔と声をだす。


「これは一体・・・」


 近くに居た農民が疑問を口にする。


「これか?見ての通り、脱穀と選別を一度に行う機械だ。真下の出口から出てきたのは、実った実だけだ。先の出口から出てきたのは、多少茎も混ざっているが、出来の良くない実だな」


 俺がそう言って大まかに説明する。


 そうしている間に先ほど俺たちが持ってきた束の脱穀を終え、桶には実だけが山を作っている。


「どうだ?やってみるか?」


 声をかけてきた農民を促して、使い方を説明し、体格のよさそうな者を呼んで、ハンドルを回してもらう。

 ハンドルの重さも山の民でなくとも回せるように調整してあるので、難なく回している。


「こいつはすげぇ~」


 農民が歓声を上げて喜んでいる。


「出てきた実をムシロに並べて乾燥させれば出来上がりだ。あとは、これまで通りで問題ないだろう」


 本来なら水車式の籾摺りや精米も教えればよいのだが、今すぐ設備がある訳でもないので、今のところはこれで喜んでもらえれば良い。


「ところで、あなたはどこのお姫様で?」


 身なりの良い農民がそう聞いて来たので、ヘンナが説明し、それを聞いた農民は驚きのあまり一瞬固まった。


「このお方が、縁辺公・・・」


 どう対処して良いか戸惑っているらしいが、ヘンナがナンションナーでは領主も農民に交じって作業をしている事を伝える。


 まあ、そうだよな。大公が農民に交じって農作業などやる事はなかっただろうからな。


「こんなきれいな男がいるとは・・・」


 農民が驚いていたのはそっちらしい。ここでもなんか視線を感じるが、そう言うのはホッコだけで十分だ。アレの扱い自体困っているんだから余計な混乱は避けたいんだが。


 


 


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