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52・コンバインを作ろうと思ったが、簡単なことではなかったようだ

 ホッコと話し合ってクフモとナンションナーの交通網整備の話が出来たのだが、俺がすぐにクフモへ向かうことは出来なかった。


 まずは、ピッピの収穫が待っている。そして、夏播きのピッピの為に畑を耕す必要もあった。


 ピヤパの除草やアピオの土寄せは道具があるので非常にやり易くなったが、収穫だけは未だに鎌で刈っている。


 ピッピもピヤパ同様に落実性が高いので、強くゆすると実が落ちてしまう。山の民は刈り取りに苦労している様だった。

 ピヤパに慣れたナンションナーの農民たちは慣れた手つきで手早く収穫しては束ねていく。それを追いかける様に、森の民も収穫を行っている。

 

 俺も鎌をもって収穫に加わって、5日ほどかかって収穫を終えることが出来た。


「ピッピを実だけにして干すことは出来ないか?」


 ふと、俺は森の民に聞いてみた。


「先に実だけを落として干すのも一つの手ではある。ただし、火にかけたり窯の煙を利用するのは止めた方が良いと思うぞ?」


 俺が遠くに煙を上げる炭焼き工房を見ながら言ったので、何をやりたいか察したらしい。

 彼の説明によると、十分に乾かしていないピッピの実を炒ったりしては変質して風味が損なわれてしまうそうだ。

 そのため、収穫した実は、最低でも10日程度は天日干しするのが習わしだという。


 確かに、ここには適切な温度管理ができる乾燥機などは存在しないし、水分計もないので、何度で何時間乾燥させれば適切な状態になるかが分からない。


 前世の乾燥機は熱風温度が概ね40~50℃程度であったはずだ。それも穀物の種類や品種、或いは含有水分量によって送風温度や乾燥時間を変えていた筈だ。

 それを真似て、網の上に穀物を敷き詰めて下から炭火でも当てればと考えたのだが、見事に否定された。


「そうか、ならば、やり方によっては、実だけにして、あの魚を乾かす台を使っても良いのだな?」


 森の民も、それは構わないという。


 最近では魚肥づくりのつまみ食いから、案外、小魚の乾燥させたものがおいしいことが分かって、いくらか食用のモノが作られている。と言っても、ちゃんとした干物ほどは保存が利かないので、旬の珍味程度の生産量でしかないが。


 そうした食用を生産するため専用の乾燥台が作られているのだが、同じものが使えるという。実は、あれを冬にはフェンの乾燥にも使う事を考えているので、大量にあって困る事は無い。



 さて、どうしたものか。


 一般には知られていない話ではあるが、汎用コンバインの脱穀機構には二通りのモノが存在している。


 一つは、脱穀部の前から後ろまで縦長の長大なドラムを設け、上で叩き落した実を下方に設けた揺動棚で選別するタイプで、日本の汎用コンバインは大抵このタイプだ。基本的な考えは日本で考案された自脱型とほぼ同じで、揺動棚でふるい分けるのは、実だけとなる。


 それに対し、欧米で使われている巨大コンバインは、本体投入直後に横置きドラムを設けて、ここで実を叩き落した後に、残留物を後方の揺動棚へと搬送し、残留した実をここで更に振るい落とすという仕組みになっている。 


 同じ汎用コンバインと言いながら、その構造が全く異なるんだよなぁ~


 共通しているのは、下からファンで風を送って選別するという所だけな気がする。



 おっと。前世のコンバインの考察がしたかったわけではない。ポニーでは曳けなかったコンバインを牛に曳かせられないかと考えたんだ。


 そもそも、今のコンバインの原型は19世紀半ばごろに米国で誕生したそうだ。当然、それは揺動棚で実を振るい落とす欧米型の機械だった。


 エンジンが登場する以前のコンバインは馬が曳き、動力は車輪の回転を利用して、内部の揺動棚などを動かしていたそうだ。

 要するに、昨年唐箕を作って、その投入口でピヤパを叩いたあれを、機械がやってくれる仕組みと思えばいい。


 刈り取りも複雑な機構を必要としない汎用型コンバイン型ならば、刈刃と掻きこみリール、搬送ローラーで構成できるので、作ることは可能だろう。稲の様に倒れることが少ない縁辺の作物の場合、掻きこみリールは無くてもよいかも知れないな。



 そんなわけで、ミケエムシがやって来た時期を狙って話を持ち掛けた。ルヤンペだけだと以前の様に失敗するかもしれないからだ。


「また凄い事を考えたな。刈り取りと脱穀と選別を一つの機械でやるのか。牛に曳かせるのは良いんだが、実をためる桶がデカすぎやしないか?」


 と、図面の時点で指摘されてしまった。そうか、収穫物をタンクにためて、後で排出してホッパーか何かで運ぶという前世の考えそのままだった。


「桶を交換できるようにすれば途中で荷車に乗せ換えることで、収穫を継続できると思う」


 そう取り繕うと、ミケエムシも感心していた。


「なるほどな。すると、この下の桶は交換を前提に考えなきゃいかんな」


 そう言って構造に修正を加えたり、実際作れそうな構造に一部を変更したりと図面作業だけでそれなりの時間を費やしてしまった。


 そして、まずは模型を作って構造を理解して、実寸大の模型を再度作って、どこにどのような材質が合うかを検証していくこととなった。


 図面を見せればホイホイ作ってくれたこれまでとはかなり違う。


「そりゃあ、そうさ、こいつはこれまでみたいに経験や勘で作るには複雑すぎる」


 ミケエムシをしてそう言わしめるものだったらしい。


 残念な事に、夏の間に完成する事は無く、ピヤパの収穫にも間に合わないので、今年は別のモノを使う事にした。


 まあ、それがクフモで役に立つとは思いもしなかったわけだが。


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