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45・王からの手紙は召喚状だった

 商人は予備で使っていなかった播種機と余りものの除草機、土盛り機を持って帰って行った。使い方も教えているのでうまく売ってくれることだろう。評判になればそこそこ売れるかもしれない。


 さて、商人から買ったアマムを粉にして麺を打ってみた。


「アピオみたいなコシがないよ、これ」


 フェンだと喜んで飛びついたイアンバヌだったが、食感はお気に召さないらしい。


 確かに、アピオは芋だからなのか、そのコシは凄くて、まるでゴムでも食ってるのかと思う様なほどだ。しかし、それが意外とおいしい。ピッピに混ぜるとピッピの蕎麦っぽい風味にコシがすごく出ておいしく感じる。


 が、アマムだけで打った麺は何だろう。伊勢うどん?そんな感じにしかならない。きっと、麺用小麦とは成分が異なるからだと思う。この小麦はパンを作るのにちょうど良いんだけどな。あの、クレープ状のパンムにもひじょうに合う。ンビセンに混ぜても良いけど、やはりピヤパの独特な甘みを消してしまうので俺は好みではない。


「そうか、やはり、パンに向いたアマムでフェンがおいしくできる訳ではないんだな」


 そう言いながら見ていると、言葉とは裏腹に、リスの様に頬を膨らませながらおいしそうに食べている。


 ピッピのつなぎとして使ってみたら、ケッコナが喜んで食べていた。


「こっちは良いね。ピッピの風味や食感があまり変わらずにおいしくなってるよ。ピヤパだと雑味になるし、アピオはコシがありすぎるから、このくらいが丁度いい」


 そう言っている。


「それで、ウルホ、カルヤラへ行く気なの?」


 食べながらケッコナが聞いてくる。


 というのも、商人が持ってきたのは召喚状だった。商人自身は中身を知らなかったらしく、特に何も言ってはいなかったのだが。


 召喚状の内容は、春の長兄の侵攻についてだった。


 当然の様に、長兄は無いことない事言い募っていたらしい。が、王はそれを分かっている様だった。


「春の騒ぎについて直接聞きたいらしい。そのついでにフェンを兄に食べてもらおうと、カルヤラで食べているアマムで作ってみたんだが、あまり評判がよくない」


 イアンバヌの評判は気にしていない。おいしそうに食べているから、言葉ほど悪くはないんだろう。しかし、アピオやピッピのフェンをおいしそうに食べていた投降した騎士たちに食べてもらったところ、数段落ちるという話だ。麺用小麦を作り出すのも良いだろうが、残念ながら、縁辺の気候では少々難しい。


 アマムの種蒔きは秋が一般的で、冬の寒さで持って成長を促す訳だが、雪が多くて春まで残っているので、うまく育たない。麦類には春まき種があるはずなのだが、カルヤラには大麦みたいな品種しか伝わっておらず、パンの元になる小麦用のアマムは秋まき種しかない。ならば、麺に出来るピヤパで良いという話になるのも仕方がない。

 

「ウルホ、カルヤラ王も春に来た奴みたいなんじゃないの?行ったら殺されるよ?」


 ケッコナが心配そうにそう言うが、俺は大丈夫だと思う。長兄みたいなアホは殆ど居なくなっているはずだ。


「心配ない。僕がここへ来ることになった原因の戦乱で、長兄の様な連中は大半が滅ぼされている」


 ケッコナはそれでも心配そうにしていた。


「大丈夫だよ、ケッコナ。ウルホを殺せばケッコナンと山の民が攻めていくことくらい分かってるだろうから。そんなに心配なら、私たちも付いて行けばいいんだよ。妻を同行させるなとは書いてないんでしょ?」


 イアンバヌがサラッとそんな事を言う。


「同行者の制約は書いていないな。イアンバヌやケッコナが付いてくることに問題はない」


 そう答えると、イアンバヌは悪い笑顔で俺を見る。


「なら、私に任せて」


 


 それから数日後、一隻の船がナンションナーの港へとやって来た。


「縁辺領主を乗せることが出来るのは光栄だ。よろしく頼むぜ」


 屋敷へやって来た船長は俺にそう言う。が、俺は何のことかわからなかった。


「ありがとう。あなたの船が東で一番速い船?」


 答えたのはイアンバヌだった。


「イアンバヌ殿、俺の船より速い奴が居るかどうか、港の連中に聞けばわかる」


 そう言って笑う。


「ならば、よろしく頼む」


 俺を置き去りにして話がまとまった。


「ほら、カルヤラへ行くよ」


 イアンバヌに促されて俺はカルヤラへ行く用意を始めた。


 港へ行くと、普段見慣れた丸っこい船ではなく、前世の帆船の如く細長い船が一隻停泊しているのが見えた。


「あの細い船で行くのか?」


 俺がそう聞くと、その様だった。


「おう、アレが俺の船だ。その辺の船より速いぞ」


 普通、3日程度かかる航路なのだが、2日で到着できるという。なぜわざわざそんな船を用意したのか分からないのだが。



 船に乗り込むと、皆が俺たちを見て来る。そりゃあ、イアンバヌは森の民譲りの美形で美少女だし、ケッコナは当然、美人なのだから注目が集まるのも無理はない。


「あれが縁辺公か、男とは思えない美形だな」


「ああ、ガイナンの息女や森の民とは違った美形だ」


「カルヤラってところは、あんな美形がたくさん居るのか?」


「いや、カルヤラへ行ったことあるが、森の民とは造形の違う美人は居たが、あそこまでは居なかったぞ」


 なんだろう、聞こえてくるのはイアンバヌやケッコナではなく、俺の話だった。なぜ?



「ウルホ、大人気だね。山の民には私やケッコナは見慣れた存在だけど、草原の民ってすこし顔の作りが違うから、私から見ても可愛いんだよ。今更だけど」


 イアンバヌもそんな事をいう。あれか、欧米では日本人がかなり若く見えるみたいな奴かも知れん。


 そんなことを言いながら、俺たちは船尾にある豪華な部屋へと案内された。


「俺の船なら一泊だ、少々窮屈だろうが我慢してくれ。船は狭いからあんまりはしゃぎすぎないでくれよ」


 そう言って船長は去って行った。


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