17・街に活気があふれてくる・・のか?
ルヤンペが連れてきた大人数はその多くが炭焼き衆の居るナンガデッキョンナーへと向かったが、採掘組はこちらに拠点を置くのだという。
「うちの長が騒がせて済まない。これをガイナンカとの交易に使ってくれ」
採掘組のリーダーが村長と俺に何やら渡してきた。
「これは?」
「ガイニで採れる鉱石だ。向こうで精製した奴だからそのまま売れる。向こうにはない材料だから高値で引き取ってくれるだろう」
なるほど、当人があまりに強引に事を進めてるから周りがこうやって気を使ってるのか。
「それと、最初に二、三日は向こうの窯づくりがあるから採掘の仕事はない。人手が要ることがあるなら言って欲しい」
そう言うので早速聞いてみると、大工のできる者が三人いたので、彼らに村の建築や補修を手伝ってもらうことにした。数人は採掘準備があるので崖へと向かったが、残りの者たちには農作業を手伝ってもらった。
彼らの中にも鍛冶が出来る者が居り、簡易の補修なら出来るというので農具の補修も依頼してみた。大工に種まき機の図を見せたら、乗り気だったので暇を見て村の大工も交えて試作してもらうことになった。鍛冶と木工双方の職人が居るので金属の補強が必要な部分には金属の使用も可能になってなかなか期待が出来そうだった。
そんなことをして三日目の事だった。窯が出来たので採掘開始を知らせにルヤンベが来たのだが、話しはそれだけではなかった。
「おい、あの谷の向こう側、白い崖になってるだろう。あれは鉱石から鉄を取り出すときに使う材料になるモノなんだが、ついでに掘ってもいいか?」
なんと、石灰がそんなところにあったのか。
「それは構わないが、その石は肥料にもなるんではないか?」
ルヤンベはニヤッと笑った。
「嬢ちゃん、鋭いな。その通りだ。肥料の作り方も分かってるからちゃんと焼いて肥料化した奴を渡す事にしよう。それでいいか?」
ルヤンベが俺の事を嬢ちゃんと呼ぶのは治りそうもないので修正するのを諦めている。
「それでいい」
そう言うと、満足して帰って行った。
採掘現場と谷にはそれなりの距離があるが、山の民たちの一部は道路づくりに従事している様だ。そして、山の木を切って即席の荷車を作ったりしている。正規の荷車は当然、木を乾燥させるが、現状で足りない分はそのまま作っている様だ。
本当に連中は怪力で驚いた。男女問わずそんな作業に従事しているのだから本当にすごいよな。
そろそろ夏が来るという気候になって、農作業は草取りが中心になっている。中耕機の導入もあってかなり人手に余裕が出来たので一部は干物や魚肥づくりに回っている。
干物はこれまでもガイナンへ売りに行っていたが、それに加えて魚肥を試してもらっている。こちらでもコンコ畑で使っているが、効果は上々らしく、ガイナンへも売ることになった。
「谷からすごく気味の悪い煙が立ち上ってますよ!」
そんな報告が来たので見てみると、村からも分かるほど異常な煙が上がっていた。
「炭焼きとは明らかに違うな。煙の色もおかしいし、量は比較にならないな」
黄色い煙がモウモウと立ち上っている。何か事故でもあれば知らせに来るだろうと問題を放置して畑仕事に戻る。
気が付くと煙の色が紫がかったものへと変わっていた。夕暮れで風向きが変わったことでわずかだが煙がこちらへも流れてきている。
「かなり匂うな」
まだ苦情を言うレベルではないが、異臭がしている。風向きが変わったのかしばらくすると匂いはしなくなった。
二日後、谷からコークスの第一陣が村へとやってきた。
「石炭が出来た。この荷車は村の分だ、置いて行くぞ」
ルヤンベがそう言って荷車を一つ置いてガイナンへと向かっていった。
他の連中はセッセと次の材料採掘や焼けた石の荷造りをしているらしい。
貰ったのでコークスを使ってみると、炭より火力が強くて、素の石炭みたいに煙もくもくという惨事は起きなかった。
「石炭は凄いな。炭のつもりで使うと危ない」
使ってみて、その火力にびっくりした。ちょっとした調理なんかで使うのはちゃんと使い方をマスターしてからでないと、物体Xを量産しかねなかった。
そんなことをやって、谷から黄色や紫の煙が上がるのも慣れたころ、ルヤンペがまた新しい事を言い出した。
「嬢ちゃん、こっちに一つ炉を作っていいか?」
炉を作るというが、何をする気なんだろうか?
「ガイナンから鉄鉱石を運んで、ここで採れる石灰石を石炭と共に放り込めば品質の良い鉄が取り出せる。ガイニの鉱石も少し混ぜるとさらに良い鉄が出来るぞ?」
だから、それをなぜここでやるのかを聞きたいのだが
「ここで鉄を作ればガイナンカに売れる。あっちの鍛冶屋共に石炭とここで作った素材鋼をセットで売れば儲けになるぞ?」
ここでやってはガイナンが損をするんじゃないのだろうか
「心配するな。材料を東の連中に渡してもガイナンの加工技術には敵わない。ガイナンの道具を連中が欲しがるが、向こうにも鍛冶屋は居るんだ、連中だって同じ材料が欲しいさ。だから、ここで作るんだ、兄には話を付けてきた、心配するな」
また勝手に話を進めてしまってやがるよ・・・
そうは言っても悪い話ばかりではない。ルヤンペたちは主に製造を担当し、ナンションナーが商談や荷役を行うんだという。昔のナンションナーを再建できるかもしれないだけに、期待も膨らむ。
ただ、俺がやろうとした開拓とは随分方向性がずれている気がするんだが?




