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154・そして、詰めの話を行った

 境界領の将来についての話を一応、終えた。はずだ。


「さて、ところで境界伯、ヴィーブリをどのように攻略するつもりだ?」


 一応、そう問うてみた。


 さんざっぱらコイツが言っているように、陸路、ヴィーブリを目指す気でいるのは確かだ。


「我が兵団と神盾兵団で押し込むつもりです。ヴィーブリならば境界領から近いので十分可能です」


 まあ、それは聞いて来た。そこで、ヘンナを見る。


「基本的にはそれで構いません。しかし、ヴィーブリを短期間で陥落させるには、それ以外にも戦力が必要ではありませんか?」


 俺の意図を察してそう口にした。


「それ以外と言っても、戦力無いですよ?」


 そう、首を傾げるアホ。


「旦那様。アホカイネン家は境界伯となりましたので、騎士団の創設が必要です」


 ハタと気が付いた幼女がアホにそう提案した。


「騎士団?え?だって、兵団あるよね?」


 どうやら気が付いていない様子。


「アホカイネン家は境界伯に任じられました。縁辺公、アホカス公爵と並ぶ軍権を持つんですよ?兵団は主に領内の警備を行います。神盾兵団は我が家の兵団ではなく、陛下からの預かりです。ウゴルに対する我が家独自の備えとして、騎士団を持つことが必要になると思います」


 と、幼女の説明が続く中で、なにも理解していないらしいアホ。


「キエシの乱や以前の辺境の乱においてアホカス家預かりとなった騎士の中には新たな仕官先を求める者が居ります。境界伯さえよろしければ、騎士団の基幹として頂ければ」


 と、ヘンナが言う。


「旦那様、アホカス家預かりとなった騎士であれば、陛下もご納得いただけます。なにより、キエロ夫人の指導下にあった騎士ですので即戦力間違いなしです」


 なぜかそう言ってヘンナと幼女が頷きあっているがよく分からん。


 アホカイネン家はこれまで小領であったため、規模の小さな兵団しかなく、境界領と言う軍事的に重要な地域を治めるには向いていない。


 神盾兵団という戦力が加わるとはいえ、アホの言いだした領土拡大が成功すれば、神盾兵団だけでは戦力が不足するのは明らかだとヘンナが言っていた。


 そして、ちょうどこれまでの内乱によって取り潰しとなった貴族に仕える騎士たちの受け皿の一つとして、アホカス家が存在していた。


 ウゴル侵攻という事態に対応するため、アホカス家では従来よりも仕官基準を引き下げて採用していたらしく、今となっては余剰人員も居るらしい。まあ、シッポみたいな例は少数派だろうが。


 あの変態は少数派だが、キエシの乱でシッポの騎馬隊が活躍した事に触発された連中が居るのは確かだ。


「兄からも境界伯へ騎士を斡旋する話が有るという事だったが、そういう人材で構成した部隊による攻勢だな」


 と、俺も口を挟んだ。


 兄から返ってきた返事によれば、兵団の派遣と共に、境界伯家に新たに騎士団を設け、戦力を拡充してはどうかと言う話だった。

 その話をヘンナに伝えると、どうやらアホカス家にも変態に触発された連中が居て、新たな仕官先があるならと言っていると言い出した。


 そして、どうやら兄の言う連中と言うのが、パーヤネンの部下らしく、船の事についても知見があるとか言っていた。


 そう言う話なら、いっそ、奇襲部隊としてヴィーブリ周辺に送り込むのもありじゃないかと思い付いた。


 その様な話にも、アホはピンと来ていない。どうやら幼女は何かひらめいたらしく、ヘンナと目で語り合って、俺に頷いて来る。ちょっと意味が分からない。が、何か言えという事らしいので


「境界伯、愚直に陸路を行くだけではなく、海を渡って攻め込むのもありだとは思わないか?」


 そう声を掛けると、何やら思い浮かんだらしい。


「海兵隊!」


 うん、たぶんそうだ。そうなんだが、固有名詞ではなく、何か作戦案はないのか?


 そう思いながらアホを眺めてみたが、何も出て来ないらしい。


「ヴィーブリ周辺はいくつかの島があり、入り江があるそうだが、ウゴル側には独自の船団は置かれていないらしい。レパルへ通報される以前に、この島々を奪い、有利な戦闘を行えば、勝利はさらに確固としたものになるだろう」


 と、まあ、それらしく言っておく。


「なるほど、海兵隊によって後方を遮断してしまえば援軍も来ませんね。あと、空挺部隊があれば完璧!」


 ねーわ、んなもん。


「騎兵であれば、内陸からの迂回も可能でしょう」


 と、ヘンナが話を引き継いだ。


 どうやら、アホの言葉を聞き間違えたらしい。


「幸いな事に、アホカス家では騎兵を多く有しており、境界伯騎士団への仕官も騎兵が中心になろうかと存じます」


 と言う。


「ちなみに、軽装騎兵は辺境騎兵団と同じ装備だ。境界伯が知る鎧と長弓を備える」


 俺がそう付け加えた。


「あの変に近代的な装備で和弓を持つんですか?なんだか信じられない光景ですよ」


 まあ、そうだろうな。俺もそれは思ったさ。


「しかし、今から騎兵など間に合わないでしょう?ゼロや辺境からは随分離れていますよ」


 なぜそこだけは正常なんだろうかコイツ。そこは小躍りして仕官を喜ぶ所じゃないのか?


「そうでもありません。辺境騎兵団とアホカス騎士団は領を接している事もあり、交流もあります。もちろん、森の民とも。その為、王国内を最短距離で境界領まで来ることが可能です」


 ヘンナの言葉にキョトンとするアホ。


「それ、精鋭部隊なんじゃ」


 そう思うよな。普通。しかしだ。


「いえ、森の民と行動する騎兵はそのくらいのことは出来る様になるそうですので、その様な騎士と騎兵は辺境騎兵団やアホカス騎兵には普通に居ります」


 そんな騎兵を150は都合するというヘンナ。まあ、キエロがそう提示してるんだろう。なんかすごい話だ。


「兄が提示している騎士も指揮官級は近衛出身らしいぞ」


 そう言うと、より一層唖然とするアホ。なぜか幼女は喜々としている。


「そこまで陛下や公、侯爵家が支援してくださるなら、心強いですよ、旦那様」


 まあ、その編成はアホがやる仕事なんだがな。と言っても、近衛騎士クラスが居ないと、アホの言う作戦はマトモに機能しないのも確かだ。


「なんか、メッチャ大事になってません?」


 お前が言って来たことがドレだけ重大事か気付いてなかったのか?そっちが驚きだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 境界伯よ、もちっと落ち着け……。 幼女の苦労が……。
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