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151・コイツと話していると酷く疲れる

 でっかいハンバーガーの晩餐の後に兄への手紙を書いて至急で届けてもらった。


 そこまでは良かったのだが、アホカイネンが提出した修正計画の検討の時間が必要だと次の日には屋敷へと使者がやってきたので数日アホカイネン邸で過ごすことになった。


 アホカイネンは仕事の山に追い回されているので相手をしなくて良くなったが、俺たちはとくにすることもない状態だ。


 幼女から境界領のあらましを聞いてみたが、北部は少雨地帯だが農耕に適した場所ではあるらしい。


「境界領北部は雨は少ないですが、農業に適した場所であることは確かです。ただ、河川も少ないので水を多く使う作物は育たないとされております」


 その説明から、ちょうどベルナやピッピに適した環境であることが分かる。マイシィも多分可能だろう。



 その事を説明すると、幼女も頷く。


「頂いた資料によれば、適地と言ってよさそうです。ピッピと言う作物は春と夏の二回、蒔く事が出来るようですね。ベルナもすでに春と夏の二回、植え付けを行っている様です。これまでのアマムやピヤパよりも収量も多く、生活も安定してきているとの事でした」


 という、ジャガイモをひろめた身としてはうれしい話をしてくれる。


 そして、境界領南部についても、話を聞いた限り、砂漠のような地域ではない。湖もあるのだからそれは当然ではあるのだが。


「南部でも農耕が試みられたそうですが、これまでのところ、短期間で畑がダメになる事態が続いている様です。しかし、馬やヤギの放牧が出来ないという土地ではないとされているようですね」


 と言うのも、これまでの森の民からの報告や王国の資料から分かってはいた。


 いわゆるステップ地帯と言った感じの所で、少雨であることから、作物の生育には不適な土地なんだろう。

 下手に耕作を続ければ砂漠化してもおかしくはない。


「そうか、王都の資料でも読んだが、境界領は主に北部と南部の河川周辺が農耕地域としては適地で、それ以外は放牧地としての利用が主となる」


 ふと、ヘンナを見る。意図を察してくれたらしい。


「それではヘルヴィ殿、アホカス家が行う毛糸生産をこの地で行う事も可能になると思われます。ヤギは水の消費が少ないので少雨地域でも育てることが可能です。刈り取った毛を河川に設けた水車動力を使って機械織りを行えば飛躍的に生産力が上がる事でしょう」


 そのヘンナの言葉に幼女が首を傾げる。


「それではアホカス家の産物に打撃を与えませんか?ゼロの地は広大と聞いておりますが、旦那様の言う通りにヴィーブリを手に入れるならば、境界領における放牧地も大きく増えることになると思われますが」


 まあ、その通りだな。アホカス領も農業よりも放牧に適した土地のため、毛糸生産が盛んになっている。

 ただ、王都との距離を考えれば、ヴィーブリ港を整備すれば利便性は境界領にある。わざわざ利敵行為を行う必要があるのか疑問だろう。


「その心配には及びません。ゼロの地は比較的寒冷なため、育てるヤギは毛の細く密度の高い種類になります。対して、境界領では気温が高いので毛の密度が荒い種類のヤギが主体ではありませんか?」


 ヘンナがそう、幼女に質問した。


 確かに、気候の違いで同じ毛長ヤギでも品種が違うらしいが。


「そうですね。境界領のヤギはゼロよりも毛が太い種類です。・・・・・・なるほど。ゼロの毛糸は冬服に適した品質であるのに対し、境界領の毛糸はより温暖な時期の服に利用するのが適していますね。同じ毛糸と言えど、利用用途が異なる事での住み分けが可能。分かりました」


 アホより話がスムーズに進む。アホを書類の壁で防いでこちらでちゃんと話を付けておくというのは必要な事だな。


 こうして、縁辺やアホカスとは住み分けが可能な産業振興の計画が進んでいく。


 しかし、必要な機械はほぼ同じ。農機具や水車動力の織り機の導入でより効率的で大規模な生産が可能になる事だろう。


 こうして、現在の境界領での産業振興の話も進めていく。


 なるほど、そうなると重量のあるジャガイモや体積の嵩張る毛糸の輸送に馬車鉄道と言うのは利用価値がある。


 思い付きを口にしている様で、アホの考えも間違っちゃいない。



 などと見直していた晩餐での事。


 アホは所詮はアホである。


「さあ、今日は公の地元で流行っているカレーです!」


 そう言ってグリーンカレーが出された。


 そんなよく知ったものをそこまでドヤ顔でなにやってんだこいつと思わなくもないが。


「違いにお気づきですか?縁辺のカレーはほぼスープとして食されていますが、このようにして食べる事も出来るんですよ!」


 いや、知ってるし。


 ただ、微妙に違和感があるのも確かだ。


 そのご飯がオカシイ。


 この世界のコメであるシヤマムはこんなに丸くない。ジャポニカ米ともインディカ米とも違う、よく分からないモノを使っている。



「気づきましたか?それはチネリ米です」


 チネリ米って何?聞いたことがあるような名前だが、何だっけ?


「それはアマムの粉を練って、播種機を基に作ったチネリ米製造機で作りました。米みたいでしょう?」


 なるほど、思い出した。テレビで出てきたアレか。


 だが、それっていわば、クスクスとかリゾーニとかっていう小麦食品だよな。カルヤラには無かったけど。


「そうか、シヤマムではなく、アマムを練って粒にしたのか」


 スプーンで掬ってよく見ると、なるほど、コメでも麵でもないソレは新たな食品だなと感心した。


「公に興味を持っていただき光栄です。アマムを粉として保管するより、乾燥チネリ米を作った方が保存もしやすく調理法も増えそうなので、ジャガイモやトウモロコシでも挑戦してみようと思います」


 と、競合してほしくなさそうに訴えてきている。


「それは良い事だ。縁辺のフェンは冬季の冷涼な気候で作る事に意味がある。境界領では同じ製法は不可能だが、このように製法を変えて保存性の高い食品を作り出すとは感心する」


 と、褒めておいた。シヤマムがある辺境北部やナンションナーでわざわざクスクスを生産しなくても食材はあるし、シヤマムは王都に流通させるほどの生産量はない。どうやら、こちらの意図は伝わったらしい。


「そうですか!このカレーをひろめて頂ければ、チネリ米の需要も増えるのですが!」


 などと他力本願な事を言っている。


「キナは産地が限られている。栽培こそ容易だが、乾燥法には高い技術が居るので大量に出回るほどのモノではない。境界領でヤギを育てるのだから、乳製品を利用する手もあるんじゃないか?」


 そう教えてやると、何か思いついたらしい。どうしてコイツと話すと疲れるんだろう?




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