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15・順調な生育

 山の民が帰ってしばらく、せっせと除草を続ける日々が続いた。余分に獲れた小魚を天日干しして粉末化するという事業も行っている。


 そこで気付いたが、この村はどこから油を手に入れているんだろうか?


 油と言っても燃料ではない。燃料は炭と石炭がある。コークスが出来れば石炭に代わって主用燃料にもできるだろう。

 しかし、夜の灯や食用油には植物系油や動物系油脂が必要なはずだ。


「油ですか?それなら東の山の民から買っていますが?」


 うん、菜の花を育ててれば到着した頃は花畑だから分かっただろうと思うよ?大豆の場合、これから種まきだから、その話が出てこないんだから無いだろうと予想は出来てたよ。


「油の搾りかすが肥料になるから栽培して良いと思うのだが?」


「しかし、この村では土地はあってもすでに人手が足りなくなっていますよ?」


 確かに、村長のその指摘はもっともだ。自給したいが全てを自給という訳にもいかない。そこは困ったことだなと思う。こんな悩みはラノベの開拓では起きていなかったんだがなぁ~


「肥料として油の搾りかすが使えるのでしたら、東の山の民から購入することは可能だと思います」


 東の山の民、そこがどんなところかよく分からないが、王宮で読んだ資料によれば、ハルティ大山脈の東端に位置するガイナンカではないかと思う。山脈は東に行くほどなだらかになり、ガイナンカは丘陵地帯と言った方が良い地域らしい。カルヤラよりさらに温暖な地域で、鉱物資源は少ないが、土地が豊かで農業に向いているらしい。

 草原の民と言われるウゴルの勢力圏との境でもあり、争いが絶えない土地だともいう。


 ウゴルは草原の民だけあって騎馬には強いが海は苦手で、山の民はその器用さを生かして船を操るのが得意らしい。ハンザ同盟だとかヴァイキングだとかそんな単語が頭をよぎったが、ハンザ同盟のような確固とした都市国家間の海運は成立していない。あるいは廃れた後なのかもしれないが、数百年前の話になるとカルヤラの歴史は神話に突入してしまうため判然としない。


 そう言えば、ガイナンでは山の民の戦士について話をしていたが、西の国とはどんなところかと思ったのだが、森の民のさらに西へ行くと氷海であることはカルヤラの資料でもわかっている。しかし、その西については神話風な話しかない。

 ウゴルの領域はかなり広く、カルヤラから西南へ行けば大陸の大山脈の向こうに別の文化があるという。森の民はその健脚を生かしてそんな遠方とも交易をしているそうなんだが、如何せん、草原の民とは不仲であり、山の民とも最低限の交流しかない。ポニテの源流については不明な状態だ。


 まあ、それは良いとして、戦士の多くは東のガイナンカでウゴルへの備えに就いているか、西のガイニで森の民に備えているという。

 その軍事都市らしいガイナンカのすぐ西方が大農場らしく、そこでは多種多様な農産物が採れるという。問題は陸上交通では険しい山や谷を越えるため時間がかかりすぎ、海運に頼る事が最短ルートだという。ガイナンの最寄りの港はナンションナーだというから、最盛期がしのばれる。


 鉄鋼の街ガイナンは昔は有名な場所だったらしい。今でも良質の鉄を産出し、その鍛冶技術は山の民随一だというから、燃料さえ潤沢に手に入れば再浮上は可能だろう。


 なるほど、ここって中継貿易の拠点にもなれるんやね。単に自給自足ではなく、交易都市として発展させるのもありかもしれない。


 だからと言って、開拓を止めてはもしもの備えが無くなる。


「肥料を購入すると、その分食糧の購入が出来なくなるのではないだろうか?」


 開拓によりある程度の食料は自給できるだろうが、完全自給には程遠い。昔の農業舐めてたよ、しかも、畜耕が出来ないと効率も挙げられない。

 今できるのは、細々とした海産物の取引に付随した食糧確保だけ、それ以上の余力はない。ナンションナーの発展はルヤンベのコークス生産とそれによって可能になるより効率の良い製鉄にかかっているのかもしれない。

 他力本願だが、それしかない。それに、コークスが出来たからと言ってすぐに製鉄が最盛期の様に復活するとも限らない。今のガイナンは炭の供給に合わせた工房しかなく、生産量拡大には時間もかかる事だろう。


 そもそも、鉄製品の販売先ってそんなにあるのかな?ガイナンカの農具に戦士の鎧や武器。股鍬みたいに新発想の農具が売れるなら、合金鋼による新しい武器や鎧が売れるなら可能かもしれないね。



 そんなことを考えていると、ミケエムシがやってきた。


「とりあえず、こんなもんでどうだ?」


 中耕機とヒトリビキを作って来てくれた。


 中耕機はまさに思い描いたようなソレだった。除草にはちょうど良かったが、複数並べたからと言って馬鍬の替わりが可能かは怪しい。やはり一つ一つが小さすぎるので表層を砕くことは出来ても、種まきに適した土づくりには程遠かった。馬鍬やハローという類の道具にはある程度の深さを耕せるだけの大きさと重さが必要なんだと痛感した。


「草取りには良い。これはこのまま作ってもらって良いが、連結は無しで頼む。土塊を砕くには向いていなさそうだ」


 彼もそのことは分かっていたらしい。


「そうだろうな。郷で試してみたが、結果は同じだった。傾斜が無い分、ここでは使いやすいだろうが、表面をまぜっかえすだけじゃあ、草取り以外にゃ使えねえな」


 そう頷いていた。


 さて、ヒトリビキである。


 こいつの扱いは少々悩む。一応、反転は出来ている。反転部分、つまり犂の部分が人、一人用に合わせたために小さく軽いため、深くは掘れない。股鍬の方が深く掘るのには向いているだろう。しかし、一度耕し、馬鍬で細かくした後、肥料をまくなどした後に土と混ぜるような作業には向いていると思う。中耕機と違ってそれなりの深さで反転可能なので、いわゆる混和が出来る。そして、荒れ地ではなく、すでにある畑で試してみると、鍬より早く耕すことが出来る。犂やプラウと言った畜力農具とは比べてはならないが、十分な能力があると思う。問題は、多少大きく重い事だろうが、移動用に車輪を組み込んでもらっているので問題はない。


「これは用途によって違う形が欲しいな。もっと大きくて軽い車輪にして、反転板を二、三枚に増やせば草取りと肥料の混和に使えるかもしれない。幅も出来るから一枚のコレより楽になる」


 ミケエムシは少し考えて地面に形を描いていた。


「そうそう、膝くらいまでの大径車輪にして、出来れば犂は真ん中は両向き、左右に少し後退させて内向きの刃を。そう、三角形になる様に」


 前世、何かの動画で見た形だった。できればもう一つ、円盤を配置したディスクハローも作ってもらいたいが、アレは馬か牛が手に入ってから本格的なモノを依頼したい。手押しの小型では無駄になってしまう。


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