147・さすがにソレには驚いた
乾麺作りは製造から仕分け作業中心になって来ており、サポートなんとかは大活躍している。
「それは何だ?」
そんな中でひときわ変わったパワードスーツの作業員が居る。
「これは灰撒きに特化した装置だそうです」
ここの所、アイスバーンとなった道の滑り止めに灰を撒く作業が行われているのだが、灰を入れた箱を背負って、箱から伸びる筒を腰のサポートから伸びるヒンジで支えていた。
その形は肥料散布器具を思わせる構造で、そのまま肥料散布に使えそうだなと考えていると、その作業員もそうらしかった。
「これは畑の肥料散布でも使えませんかね。魚肥を撒くのが楽に早く出来る様になると思うんですが」
そう、その通り。
背負って撒く前世の散布器具もバケツより楽に早く撒ける様になっていたが、こうして腰や脚の負担を軽減できるならその効果は飛躍的に向上する。
「だろうな。ぜひ、これを畑でも使ってみたい」
そう言うと、作業員も頷いて、作業に戻って行った。
工房に言ってその話をしたら、やはり、そこまで考えて作っているらしい。
「そりゃあ、考えてある。元は腕を強化してクロスボウを腰に装着して使うって着想だったんだが、実現できなくなったから灰撒きに変わったんだ」
という話まで聞かされた。
色々とアホが提案していたらしいが、現状ではほぼお蔵入り。代わって散布器具が開発されたというのは何と言って良いのやら。
「アレをもう少し改良したら、草原の連中でも鉄の柱や棒を運ぶ事が出来る様になるかもしれんな」
そう言ってくるカプタイン。
なるほど、後にヴィーブリの工房では山の民に頼らずにカルヤラ人だけで重量物の移動をやる必要があるが、機械の設置や土木工事と言った場面でパワードスーツの活用が見込める訳だ。色々考えている事の幅が広いな。
そんな事をやっていると湾の氷が解けて交易船の往来も可能になった。
今年の初荷は境界伯領へ送る武器類となる。アホカイネンの兵団に持たせる盾や槍、鎧が積み込まれていく。
「公、良いのですか?」
アホが聞いて来るが誰も無償でやるなどとは言っていない。ベルナやマイシィの優先的な輸出やヴィーブリの利用権と言った条件と引き換えだ。
「神盾に槍、鎧と言うかアーマーベスト?」
そう、鎧は変態弓騎兵隊と同じタイプである。アレが軽くて使い勝手が良いのでそれを発注しておいた。
「弓も必要であれば用意はできる」
そう聞くと、欲しいというので騎兵隊の予備分を分け与えることにした。
「そこまで・・・・・・、分かりました。確実にヴィーブリを落します」
指揮するのは王都の兵団長だがな。邪魔をしないように頑張って貰おうか。
一通り武器の送り出しを行った後、サポート何とかを積み込んだ交易船で俺たちも王都へと向かった。
そして、アホに計画修正書を提出させ、しばらくアホの王都邸で待つことになった。
「境界伯なんて言うたいそうな爵位を頂いたとはいえ、まだまだ肩身が狭いですから、貴族の屋敷と言ってもこの程度ですが」
そう言って案内されたのは、伯爵級貴族が住むにはこじんまりした屋敷だった。とは言え、増改築前のナンションナーの屋敷に比べれば十分に広くて立派で、何より綺麗な塀が周囲を囲っているんだがな。縁辺公館なんか、街の整備計画の関係から塀を作ることなく今に至る。当然ながら、王都に屋敷すら構えていない。兄も必要なら王宮に泊まれば良いと言うし、王都の治安が良いので宿屋でも安全だ。
「十分だろう。境界伯は領地警備の出費も多くなる。無駄に見栄を張るより王への忠義を優先すべきだ」
と、それっぽい事を言っておく。
「ですよね!」
どうやら、アホも上機嫌なので何よりだ。
そして、館の門をくぐって屋敷の玄関前へとやって来た。
「お帰りなさいませ旦那様」
メイドや執事を従えた幼女が出迎えに出て来た。ん?幼女?
「ヘルヴィー!今帰ったよ。ごめんね。寂しかったね」
アホが幼女を抱きしめてそんな事を言いだす。
そして、ほどなくして俺の存在に思い至って取り繕う。
「これは失礼いたしました。いえ、そんな顔をしなくても大丈夫です。合法ロリですので」
などと言い出した。
幼女を捕まえて合法ロリと宣言するアホ。
カルヤラでは日本と違い成人も早いし、結婚だって家の都合で13、4歳くらいから行われたりする。俺も他人の事言えない歳ではあるんだが。
なるほど。相手が日本で言う未成年でもカルヤラでは確かに合法ロリで通せるが、その幼女はいささかその範疇からはみ出してはいないだろうか?13歳にすら見えんぞ。明らかに日本で言う小学生ではないのか?
「これは縁辺公にヘンナ様。ようこそお越しくださいました」
などと少々舌足らずな仕草であいさつするソレは、明らかに何とか二桁だと良いなと言った状態に思えてならない。
合法ロリ?何それ、合法なの?
「ヘンナ」
そう、ヘンナに問いかけると意図を察してくれたらしい。
「ヒマネン家御令嬢、ヘルヴィー殿で間違いありません。このように容姿は幼く見えますが、19歳です」
「ハァ?」
一瞬、素でヘンナの方を見てそう応えてしまった。いや、10歳もサバ読んでる?いや違う。え?10歳なのに9年分何処かで過ごしたの?あれ?
「容姿の関係であまり知られてはおりませんが、文官としては優秀との事です。オット卿は彼女を次期当主にしても構わないというほどの逸材です」
そうなん?
「どうかなさいましたか?」
どう見ても19歳には見えない容姿と声でそう聞いてくるヘルヴィー。何故かドヤ顔のアホ。頭がどうにかなりそうだ。




