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14・そんな話は聞いていない

 山の民一行には当然ながら、アピオの指導に来た者がいた。


「さて、アピオはどこに埋めているのかな?」


 ん?


「納屋に置いてあるが?」


 なぜだか相手が不思議そうなな顔をしている。


「納屋が山の民に分からないのなら仕方がない、こっちだ」


 俺は納屋が分からないのだと思って案内しようとした。


「納屋なら分かる。道具や種などを保管しておく場所だろう?なぜそこにアピオを置いているのかが分からなかったのだ」


 何を言っているのかわからない。納屋で大事に保管しているだけなんだが?


「心配しなくても日に当てたりはしていない」


 そう、もしかしたら日に当てたら発芽時期が狂うとか、発芽しないとか言う事もありうるからだ。


「あ~、そういう事ではないんだ。それを言うなら、土に埋めていないことの方が問題だ」


 ん?土に埋めるって、植えることと違うのだろうか?


「もしかして、知らなかったのか?」


 何のことだろうか。


「そうか、聞いていなかったか。山の民には常識だから、誰も言わなかったんだろうな。来る途中、そうじゃないかとは思ったんだ」


 どうやら、アピオは食用ならともかく種イモにする分は出来るだけ早く土に埋めて発根を促すようにすることが重要らしい。だからこそ、芋が土中に残るとどこからでも芽が出てしまうんだとか。


「すると、土に触れていないこのアピオはダメなのか?」


「ダメかどうかはやってみないと分からないが、今年は出ても数が少ないと思った方が良い。そのまま放っておけば来年は出てくるから心配するな」


 なんと、すでに来年の話になってしまっている。つまりは期待薄って事なんだろう。


「ならば、植えるだけ植えてみよう。来年出るならそれでもいい」


 俺はそう言って納屋へと彼を連れて行った。彼も芋の状況を見て、あまり期待しないように念押しされた。


「じゃあ、ここに畝を作ってこれを等間隔に植えていく。今年は半分出れば大成功だ。残りはそのまま来年まで待てばいい」


 彼は集まったメンバーにそう言って畝の高さや掘る深さを指示していく。俺もそれに従って畝を作っていくグループに入って作業を行った。あくまで実験の一環なので、そんなに広くはない。少々広い家庭菜園と言ったところだ。持ち帰った芋の量自体も多くはない。なんせ、ポニー車に載る量しか運べないのだから。


 アピオの管理もピヤパとそう変わらない。こいつはツル性らしいから、雑草取りの手間は省けるかもしれない。しかし、その代わりに成長するごとに土寄せが必要になるそうだ。それは芋や根菜類にはよくある事だから大した問題ではない。コンコを作っているというと、同じ要領で良いと言われた。


「それじゃあ、俺はいったん帰る。収獲は4か月ほど先の話になる。その頃にまたよらせてもらう」


 そう言って鍛冶グループの元へと向かった。


 家庭菜園規模なのに人手が多かったので作業はあっという間だった。終わるとすぐさまそれぞれの作業へと戻って行った。


 そんな事をしていると、また崖の方から人がやってきた。


「先ほども報告に上がりましたが、あの山の民、本当に放っておいて大丈夫でしょうか?」


 何やら奇声を発して暴れ回っているという。先ほどよりも状況が悪化したのかとも思ったが、そうではないらしい。が、休む気配もなく狂ったような状態らしい。心配でないというとウソになる。


「少し見に行ってみようか」


 崖までは多少距離があるのだが、まだ奇声を発していた。ヒャッハーとかウッホーとか言いながらツルハシ状の道具を振るっている。問題ない、アレは正常だ。そう自分に言い聞かせて見なかったことにした。


「大丈夫だ、きっと石炭・・になる良い焼き石だったんだろう。気が済むまで放っておこう」


 確かに、近くで採掘している者には迷惑だと思うが、我慢してもらうしか仕方がない。ほら、随分、採掘が進んでるじゃないか。俺たちの腕力じゃ、ああはいかない。


 とりあえず放っておいて村へと戻ることにした。彼が村へ帰るまで正確な事は分からないが、あの様子ならコークスに出来ると踏んで間違いない。



 ルヤンペが村へ戻ってきたのは日が暮れてからだった。あれだけ暴れていたはずなのに、息切れ一つしていない。俺が事のあらましを話したせいか、ミケエムシも化け物を見る目で見ている。


「おう、嬢ちゃん!ここの焼き石はスゲェ、これなら選ぶ必要もなく焼けるぞ、近くで焼きたいが、あの辺りは結構広く焼き石がありそうだな、どこか焼くのに適当な場所はないか?」


 興奮してそんなことを言ってくる。


「僕は男だ。それで、石を焼くにはどのくらいの窯が必要なんだ?それ次第の話になると思うが」


 そう言うと、横からミケエムシが割って入ってきた。


「ルヤンペ、ここはガイニではないぞ、いくらガイニの長でも、他所で迷惑を振りまくんじゃない」


 どういうことかと聞いてみたら、コークスの製造でかなり煙が発生するという。炭焼きでもそうだが、やはり煙が出るらしい、


「焼くんだから仕方がないだろう。炭焼きでも出るんだ、大した違いはない」


「炭焼きで出る煙とは違うだろう。あんなもうもうと気味の悪い色の煙をまき散らすから森の連中がやってくるんだ。少しは大人しくしていろ」


 なるほど、煙の公害で争いが起きていたのか。しかし、ここなら多少は大丈夫なんではないだろうか?


「ここなら今のところ土地はある、多少の事ならどうにかなると思うが」


 俺はそう言ったのだが、ルヤンベとしては条件があるらしい。


「この草原にゃ木が無い。炭焼き同様に焼くための燃料が要ることに変わりはない。ここの焼き石は上質だが、その分火が付きにくいだろう?それを焼くんだ、材料としては文句はないが、燃料としては心もとない、火をつける木が多く必要になるから森へ行くしかない。崖の近くが本当は良いんだが、すぐ下に焼き石があるんじゃあ、燃え移ったら事だ、それなりにあそこから離れた方が良い」


 そう言うので、村長に相談すると、炭焼き地区の外れに少々煙が出ても良いところがあるらしい。枯れ谷で水もなく、谷間のくぼ地なので他の炭焼き衆の迷惑もほとんど無いだろうとのことだった。


「村長がそう言っているから多少面倒だが、そこでなら構わないようだ」


「おう、少々離れるのは仕方がない。多少仲間を連れて来るから時間をくれ」


 こうして話はまとまった。



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