139・やって来た森の民はホンデノでは無かった
「ホンデノではないのか」
山の民の革職人がすでに村には居た。
しかし、弓職人は居なかったので森の民を呼んでもらうと、2人やって来たのだが、ホンデノは居なかった。
「ああ、悪いな。ホンデノは木を扱わせれば一人前だが、今回は獣を扱う必要があるという話だったからな、ウゴル弓を研究しているオトッチャマだ」
そしてもう一人居る。
「革の事なら俺に聞いてくれ。ゴジャハゲだ」
普通に森の民の風格をしたオトッチャマ、渋メンに分類されるであろうゴジャハゲ。
「そうなのか。よろしく頼む」
そして、山の民の革職人であるヘキリパを二人に紹介した。
「ヘキリパだ。よろしくな。ウゴルの弓をやってんのか?そいつは話が合いそうだ」
ヘキリパもウゴルの品に興味があるらしく、険悪な空気にならずに済んだ。
だが、問題は他にある。
「今回呼んだのは、神盾兵団を任されたアホカイネンによる斬新な提案を実現してもらうためだ。詳しい話は本人に聞いてもらった方が良いだろう」
俳優級の顔面偏差値を持つ強豪勢に圧倒されまくりのソレに話を振った。
「あ、お、はい」
おい、コイツ大丈夫だろうな。いきなりこれだよ。
「オッホン。カレロを拝領した境界伯、ユッカ・アホカイネンだ」
気を取り直してそうあいさつした後は自分のペースを取り戻したらしく、三人へとそのスモウ社とかいうメーカーのパワードスーツの説明をしていった。
「チタンとは何だ?」
まずはヘキリパがそう疑問の声を上げた。
「チタンは硬くて軽い金属です。比重ではアルミに負けますが、硬度は圧倒的。鉄より優るほどですよ」
とドヤ顔をしているが、ここでチタンだのアルミなどと言っても通じないんだがな。
と言っても、コイツに分かる訳もなく。
「アルミというのも良く分からんが、鉄より軽くて硬いとなると、誰か鍛冶師も呼んだ方が良さそうだ」
まあ、そう言う事になるだろう。
という事で、ルヤンペに着いて来たというガイナンカの鍛冶師、カプタインが連れて来られた。
「チタン?アルミ?なんだそれは」
当然ながら、彼も知るはずがない。
当然だが、こちらでチタンやアルミに該当するものがあるかどうかも知らないヤツが適切な説明を出来るはずもなく
「ああ、中世には鉄はあってもチタンもアルミもまだ精錬法が無いんだった」
と、途方に暮れだした。
まあ、こんな状況では先へ進めないので助け舟を出すことにした。
「チタンやアルミというのはコレが使えるんじゃないか?」
そう言って俺が見せたのは、自分の鎧。
多分、アルミではありえない。どちらかと言うとチタンを疑わせる、軽くて硬い金属。
「軽鉄か。鉄より軽くて硬い金属ならそれがあるな」
鎧を見てカプタインが反応した。
「え?それ、チタンぽいんじゃない?」
金属に詳しくないから何かは知らんし、地球と同じ組成かどうかも分からんが、性能が近い金属なのは確かだ。
「軽鉄を使う鎧はちと値が張るな。純粋な軽鉄じゃなく、ちょいと落ちるが合金で良ければそこそこ生産されてる。こっちで地金作るのは無理があるが、俺と何人かなら加工ぐらいはできるぞ」
という頼もしい返事が返って来る。
「チタン合金みたいなものが作れる?」
どうやら驚いているらしいか、だからこそ異世界だろと突っ込みたいのを我慢するのも少々苦痛だな。
「金属はそれで何とかなりそうだが、オトッチャマ、ゴジャハゲ、何かあるか?」
俺は何かを考えている二人に声を掛けた。
「話を聞いてもイマイチよく分からん。鎧ではなく、人の体の外に骨や肉を付けるってのが想像できん」
まあ、そうだろうな。
パワードスーツを一応知っているから話に付いて行けているが、そうでなければサッパリだ。
「よくわからんから、動く動かないはとりあえず置いておいて、どんな格好をしたモノなのか、作ってもらうのはどうだ?」
まあ、百聞は一見に如かずというから、それっぽい物をまずは作ってみるのも良いだろう。
「え?いや、俺は作れませんよ?公」
言い出しっぺが作れないと言い出した。
「まずは動く必要はない。外観だけでもそれらしいモノを作って、そこからどうやるかを考えるんだ。僕も難しい農具ではそうやっている」
コンバインの一部は機能はともかく外観のモックアップからってのもあったしな。
その一言でなるほどと思ったらしい。木と鋸を持ち出してとりあえず大雑把なモノを作り始めた。
「脚部はこんな感じです。背中は、本当に形だけですが」
そう言って出来上がったのはまあ、本当に木と布をあしらったよく分からないモノだ。
「足に添え木?それを軽鉄で作るって言うのか?」
カプタインが首を傾げる。
「背骨に沿って動物の背骨を背負って何の意味があるんだ?」
ゴジャハゲが呆れている。
「腕はどうすんだ?腕に何も着けずに戦斧は振り回せんだろう」
ヘキリパが笑っている。
「そう言えば、腕はあれには無かったな・・・・・・」
おい、言い出しっぺがそれで良いのか。連弩が扱えるってお前が言ったんだぞ。
「そうか、背骨と脚に弓を仕込むようなもんだな。腕もその類になるんだろう」
オトッチャマだけはどうやらインスピレーションを得る事が出来たらしい。
それを聞いてパッと明るくなるアホ。
「ですです。弓を仕込むのは多分違うけど、発想としてはそんな感じですね。反発力や伸縮力を使うはずなので」
妙に明るく言っているが、動かないモックアップを足に付けて動こうとするな。
「コケるだろう。気を付けろ」
よろめいたアホを支える。
「ありがとうございます」
そういって何とか俺に掴まり、オトッチャマが手を貸してモックアップを取り外した。
「こいつは難問だな。草原の連中の脚力でも動かせるしなりの力で鎧の重量に耐え、あまつさえ、それで戦士並みの運動をやろうだとは、想像の埒外じゃねぇか」
ヘキリパはどうやら難しそうな仕事に喜びを感じているらしい。
この調子じゃ冬の間じゅう、このパワードスーツの試作をやる羽目になりそうだな。




