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138・宴はやはりフェンだった

「パワードスーツです!重い鎧を着てなお山の民の様に軽々と走り回れる機械です!」


 呆れている俺たちをパワードスーツが分からないと受け取ったアホが、そんな更に訳の分からん説明をしてくる。


「さて、ヘンナ。宴の時間だから屋敷へ戻ろうか」


 正直、放置するのが一番だと思った。


「待ってください!パワードスーツなら連弩も扱える上に鎧を着こんでなお走り回れるんです!」


 ここにはモーターも無ければ異世界テンプレの魔法もないのにどうやって動かすってんだ、このアホは。


「分かった。宴の肴に聞こうではないか」


 そう言ってさっさと屋敷へ向かう。


 当然、着いてくるが、その間も口を休めようとはしない。


「本当なんですって!モーターも要らなければ魔法も必要ないんですよ。カナダのスモウ社が開発していたパワードスーツから発案したんです!


 おい、カナダとか言い出したぞコイツ。本当に警戒心ゼロだな。よくこれで今まで生きて来れたもんだ。平民なら魔女裁判よろしく処刑されていてもおかしくなかったんじゃないか?


「縁辺公は和弓を生み出しているじゃないですか。だったら、パワードスーツも作れるはずです。樹木や動物の腱や骨を用いた反発力やしなりを利用すれば可能な筈なんです!!」


 どうやらそのスモウ社の開発していたパワードスーツは外部動力を用いない代物らしい。


 そう言えば、重量物を取り扱うパワードスーツと銘打たれた商品の中には空気やゴムの力で人の動きをサポートすることで負担を減らすモノが存在していたなと思い至った。


 それと同じように。人の動きをサポートすることで長時間重装備を運んだり、負担の大きな動きをこなせたりするようになるらしい。


 と言っても今更立ち止まって聞いてやろうという気も起きず、屋敷へと歩き続けた。


 宴はフェンパーティーだった。企画したのがイアンバヌでは仕方がない。


「え?何。アニメのヒロインみたいなの居る」


 何だかんだと必死に訴えていたヤツがイアンバヌを見てそんな事を言いだした。


「公が娶った山の民です。ガイナン族族長の息女ですので失礼の無いようにお願いします」


 ヘンナが静かにそう説明している。


「ガイナン?山の民とは思えない細身でカワイイ系じゃん」


 聞こえる様に言うのはどうなんだ?


 もちろん、当人はそんなつもりはないようだが、本当に色々マズいだろ。


「イアンバヌだ」


 俺がそう紹介し、イアンバヌが礼をする。


「ユッカ・アホカイネンです」


 そう言って、まあ、貴族の儀礼はとりあえずこなせるらしい。


「もう1人、ケッコナだ」


 静に現れたケッコナも紹介すると一瞬驚いたらしい。


「ケッコナは森の民、ケッコナン族の者だ。気配を消すことに長けているからあまりおかしな事はしない方が良い」


 と、警告はしておく。


 たぶん、「爆発しやがれ」とか聞こえた気がした。


「え?ラーメンにうどん?」


 どうやら料理にも驚いているらしい。


 普通に一般的なフェンを出しても慣れていると考えたんだろう。趣向を凝らしてつけ麺やざるうどんが用意されている。


 アホカイネンが当然の様に箸を使えている事に皆が驚いているのだが、当人はまるで気にしていない。これまで実家でもこんな状態だったのかもしれないな。


「これは何とも懐かしさを感じる料理ですね。フェンは王都でも人気ですが、まさか、本場はこうなっていたとは」


 一応、異世界と言わない分別だけはあるらしい。それならもっと自覚したらどうなんだと。


 そんなやり取りがあった後、和やかに宴を終えるとどうやら先ほどの続きがあるらしかった。


「公、ところでなぜここに和弓が存在するんですか?」


 ようやく転生者疑いを掛けられているのかもしれない。自分でもやり過ぎている自覚はあるが、コイツの様に無自覚にバラして回るつもりはない。


「ワキュ―?」


 知らないふりをしてそう問うてみた。


「あの長弓ですよ。アレは騎射の出来る長弓ですよね?騎射の出来る長弓というのは私の知るある極東の島国の武器なのですが?」


 疑いのまなざしでそんな事を言ってくる。


「東の島国にあのような弓があるとは聞いたことが無いな。アレはウゴルよりも西方にあるという国で使われている長弓だ。境界伯の見立て通り、騎射が可能な特殊な長弓だから採用している」


 シレっとそう答えると疑惑は解消したらしい。


 もちろん、嘘は言っていないが西方の弓が本当に和弓の形状をしているかどうか、実は俺も知っている訳ではないんだがな。なんせ、アレはネタ元が和弓だから。


「そうだったんですか。もしかしたらと思ったのですが」


 無自覚にばらしまくっていたのではなく反応を見ていたのだろうか。下手に反応しなくて良かった。


「それで、先ほど訴えていた件はどうなんだ?ワキュ―があれば出来るのか?」


 わざとボケてみた。


「いえいえ、あの長弓よりもウゴルの弓の方が近い様ですね。動物の腱や骨、樹木を使うんです」


 改めて冷静に説明しているそれは、なるほどと思う内容だった。


 伸縮力や反発力を利用することで動力を用いずとも負担を軽減し、動きをサポートしてくれるという事だった。


 モーターや魔法による動力駆動が無い分、限界も推測できるようではあるが。


「足に沿うように腱や骨で出来た外骨格を縛って、上体には背中に背骨と同じ形状のものを這わせるんです。その上から鎧を着ることで動きの制約を小さくできるでしょう。腕に関しても巨大な戦斧を扱ったりクロスボウのレバーを軽々と引くことを可能にするはずです」


 力説しているのだからとりあえずは構造を理解しているんだろうな。


「そうか、だが、ここには鍛冶師は居ても革職人は限られる上に弓職人は居ない。職人に当てはあるから聞いては見るが、期待しない方が良いかもしれないな」


 搭乗型ロボとか言わないだけまだ現実が見えているのかもしれないが、まさかそんな実用化の目途が立っていない想像上の産物を前提に侵攻計画を上奏していたとは。


 兄もまさか本気で裁可してはいないと思うんだが、何をやっているんだか。  

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさかのマワシ社。 実用化できるなら民生品としても需要は高そうですが…。
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