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137・危ない話だったので論破した

 いきなり何を言い出すかと思ったら、平原反攻計画だという。


 そんな、星間国家の准将による欲のかき過ぎた計画に何で乗ってやる必要があるというのか。


「境界伯。ウゴルはついこの間攻めて来た。確かに今なら侵攻部隊を失った痛手はあるだろうが、大平原を自由に往来する騎馬がたったあれだけで終わるとでも思っているのか?」


 まずは根本的な部分から問いただす必要がありそうだ。


 なにせ、これではまるで星間国家の侵攻計画の様ではないか。カルヤラ軍が平原奥地へと誘い込まれて兵站が伸びきって弱ったところを包囲殲滅されて終わりだ。

 もし、拡張が必要と言っても、実のところ北部ではアホカス領が拡大した事でその目的を果たしている。


 南部についても神盾兵団が配された土地はラガー谷の外、アホカイネンの爵位である境界伯が示す通りそこは境界。カルヤラ防衛線の外に当たる。


 確かにカレロという場所は荒れ地で芋や救荒作物が主体という土地柄だという事を考えると、複数の湖と沼地に守られた西部、湾が広がる東部はどうしようもないが、ネバー川という川が流れる肥沃な土地を手に入れたい気持ちは分からんではない。


 カレロのすぐ先にあるヴィーブリ、ネバー川河畔にあるレパルという港町が手に入ればそりゃあ、ね?


 しかし、河畔で農耕可能地域となれば、当然ながらウゴル配下の街壁や砦が形成されていると見るべきだ。まさか、そんな事が分からない訳ではあるまい。


「現在の所、ネバー川流域近辺の騎兵は払拭している事は確認が出来ています。今なら侵攻は可能というのが王国軍の大勢です」


 なるほど、すでに準備は出来ているのか。


「だが、ここはもうすぐ結氷する。兵備を整えるなどと言って縁辺に残れば春まで身動きは取れなくなるが、そのことは理解しているか?」


 そう、クロスボウであれ、新たな盾や槍であれ、今から用意して船積みするとなると準備をしている間に結氷するのは間違いない。


「その様ですね。これから準備をしていては作戦開始は来春以降となるのは避けられませんが、それで良いと言われております」


 そんな大侵攻を準備しているんだろうか?内戦が終わった直後だというのに。


「公の懸念はもっともです。つい最近もキエシの乱が収まったばかり。更にはウゴル撃退からも日が浅く、カルヤラは大規模な侵攻が出来る状態にはありません」


 そうなると、山の民や森の民頼みだとでもいうのか。動くとは思えないんだが。


「もちろん、森の民やガイナンの戦士の参戦は陛下も望んではおられません。縁辺公の護衛も可能な限りヘンナ夫人やハユハ卿の部隊程度に抑えて頂きたいとの事でした」


 それはまた矛盾に満ちた話と言って良い。


「それでは縁辺の力を使わず、境界伯自らが主力となると?」


 神盾兵団以外にどれほどの戦力があるんだ?


「はい、そもそも、神盾兵団は陛下直属の兵団ですので、私の兵力は少領の兵団という規模でしかありませんが」


 で、そんな少数で何がやりたいんだろうか。星間国家の准将の方がまだ勝算があるんじゃないかと思うレベルではないか。


 そんな話をしているとヘンナが戻って来た。


「公、境界伯歓迎の宴の準備が整いました」


 そんなことやるんだ。と思いながら、ヘンナにもコイツの計画を話して意見を求めた。


「ウゴルへの侵攻ですか。ゼロでも緩衝地帯を得ようと考えてはいる様ですが、南方で同じことをやるのは無理ではないでしょうか?」


 え?ヘンナの母親もやろうとしてんの?


「母の考えは境界伯のようなモノではなく、森の民と共に川の対岸に監視網を敷こうという分をわきまえた計画です」


 それ、コレが分不相応な妄想語ってると批判してる奴やで


「境界伯のお話を伺う限り、非現実的と言う他ありません。春は窮乏期であり、騎馬も農民も街に固まっているモノと思われます。一見して狙いやすい様に見えますが、その守りに対して神盾兵団と境界伯の手勢だけでは少なすぎるでしょう」


 まあ、当然だな。相手が固まっているのを好機と見ればそうなんだが、攻撃三倍の法則に照らせば危険性ばかりが見えてきてしまう。


「その上、神盾兵団は守りを専らとする機動性の低い編成と装備になっております。相手は騎兵であり、その偵察範囲の広さを考えれば敵に守りを固める時間を与える不利も、考慮する必要があります」


 だろうな。


「加えて、我々が撃退したウゴル騎兵は北方部族のみであり、北方部族の衰退を突いて侵攻して来るであろう内陸部族との戦いにも備えるならば、連戦を覚悟しなければなりませんが、窮乏期の攻城戦を制した後に、守勢戦闘を行うだけの兵糧がすぐさま整えられるとは思えません」 


 作物の収穫というのは秋と初夏が多い。


 秋に収穫したもので冬を食いつなぎ、秋の収穫物で一年の税を治める。


 その為、春には食べ物が少なくなり、秋播き作物の収穫が始まる晩春から初夏にかけては非常に苦しい生活をしている場合が多い。まあ、保存技術や輸送技術が整備された前世や納めさせた税による食料で生活する貴族にとって、そんな環境など想定外ではあろうが。


「夫人まで・・・・・・」


 困惑しているらしいが、ヘンナは近衛出身だからな。戦術にも明るいんだから俺が気付く程度の弱点を放置するわけない。


「そう言う事だ、境界伯。縁辺はその計画に乗る事は出来ない」


 きっぱりそう伝えてやったが、何だろう。開き直ったのだろうか?今までの困惑がウソのように晴れやかだ。


「なるほど、分かりました。私もウゴルと対峙するには山の民のような力が必要ではないかとは思ってはいたんですよ」


 いや、その割にはまるで理解してなかった気がするんだが?


「そこで、縁辺公にぜひ手伝っていただきたいのですよ。パワードスーツ作りを!」


 何?コイツ何言ってんの?何の脈絡もなくいきなり変な事言いだした。


 ホッコやシッポみたいな変態なんてチャチナもんじゃねぇ、本物のアホの片鱗をまざまざと見せ付けられてる気がするんだが、大丈夫なんだろうな?  

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― 新着の感想 ―
[一言] すげぇ(頭抱え
[一言] バカと何かは紙一重と言わんばかりですが、1話から見返すとウルホもジャンル違いですが常識外れの言動は大概いい勝負じゃないかなと思った次第。  まあ中身を伴ってのことなので実情はまるで違いますが…
[一言] どこの駄女神だよ、こんなの転生させた奴は……。
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