134・何だか変な奴が来たらしい
さて、ある意味新章スタート?
ピッピの収穫も終わり、とうとう乾麺製造の準備が始まり出す。
水車には石臼がセットされてそれぞれの製粉が始まる。
大半の場合は手間をかけずに全粒粉なのだが、中には精麦工程を加えるモノもある。
そうすることで更に商品価値を高める事で新たな消費先も開拓していく。
が、俺はそれどころでは無い。
ピッピの収穫を終えたコンバインの掃除、更には今年使用した結果必要になった改良点の中で、実機を改造、改修出来る部分の作業を行っている。まあ、本格的な作業は鍛冶師や大工の仕事だが、機構の変更などは俺が指示する場面も多い。
さらに、ベルナ収穫機についても神盾兵団から研修要員を受け入れて実用機で実際に作業したのだが。それがまた色々と難問だった。
「芋ほりが楽になったのは良いんだが、イモを半ばで切ってしまう場合が結構あるのがな」
ミケエムシがそう悩んでいる。
収穫機は地面に爪を挿し込んで車輪の偏芯を利用した振動で芋を掘り出し、後方のカゴへと取り込んでいくのだが、深さを一定に保つのが意外と難しい。
多分、重量や爪の角度なんだろうが、試験で巧くいったモノが複数台による実用になるとこうして不具合が出てくる。
「使い手の慣れによる部分が大きい作業だ。ポニーと馬で損失率が大きく違う訳ではない。違いがあるとすれば使い手だろう」
というのが俺の見立てだ。
芋が実っている深さ、爪を差し入れる角度、そして、牽引する手綱さばき。問題はその辺りの見極めや慣れという部分にある。
畝を作っているから従来通りにクワで掘り起こす分には問題がない。しかし、クワでは爪より先の土まで持ち上げるので、芋は深さに関係なく姿を見せる。
だが、収穫機は爪が畝の下を切って進むので、これまで大雑把で良かった深さの見極めが求められる。
その上、移動速度も調整しなければ爪の深さが変わってしまう。畜力牽引なので機械牽引ほどの重量に出来ていない。耕運機でさえ6~8馬力もあるんだ。ポニーよりはるかに小さいのに、けん引力はポニー以上だろう。
「そうだな。多少、重量と爪の角度は変えても良いだろうが、最終的に深さを決めるのは扱うヤツだしな。慣れてもらうしかないか」
ミケエムシもそれで納得したらしい。
コンバインについては刈り取り歯の摩耗や脱穀部の爪や網の寸法や配列で更に変更点が見えて来た。
「仔馬用のは負担がデケェ。必要なのか?二、三頭で曳かせるように改良するのはありだろうが、網とドラムがすぐ詰まるからな」
そう、扱ぎ胴が巨大な牛用コンバインなら問題ない。シヤマムを考慮しない馬用の場合は軸流を止めて直流にしてみた。
かき込み式なので日本でよくある細い爪では無く、本当に叩き落すことを前提にした平爪にしてある。
ただ、直流式がどのような効率になるか分からなかったのでドラムを二つ設けることで性能を確保している。
が、ポニー用は自脱型前提だったので軸流式。その割に胴は短く網の目も細かい。
それが最大の問題だったのだろう。
自脱型がお蔵入りになった現在、自脱型の手法を使う必要はないんじゃないか。という考えに至った。
メインはピッピであり、アマムにも使える構造。
日本においてソバ専用コンバインを出しているメーカーがあったが、その構造を拝借しても良いのではないか?
などと考えている。
「ポニー用は負担軽減を優先してパイプで構成した脱穀部を試してみたい」
そう言うと、ミケエムシだけでなく、ルヤンペまでが「何言ってんだ?」という顔で見てくる。
「嬢ちゃん、さすがにそれは無理だろ。パイプって・・・」
そう、たしかにおかしいと思うが、実際、日本では実用化しているメーカーがあるのだから出来るのではないかと思う。
「やるだけやってみても面白いと思わないか?」
そういうと、さすがは鍛冶師、ルヤンペが乗り気になっている。
「軽いパイプを使う必要があるな。かと言って、強度も必要。そこそこの太さがあって軽いパイプか。まずは小径の薄肉中空パイプを作るところからだな。冬の間に考えて来てやる」
やはり言ってみるもんだな。
そんな事をしていると神盾兵団からの増員がやって来るという知らせが届いた。
今更増員が来ても何もできる訳ではないのだが。そもそも、もうしばらくすれば流氷で身動きが取れなくなるだろうに。
「今頃来てもピッピもベルナも収穫を終えている。研修の意味が無いのだが?」
知らせに来た役人にそう疑問を返すが、どうにも農民が学びに来たというのではないらしい。
「いえ、それが、貴族の方がいらしておりまして、何でも新たに神盾兵団を統べる境界伯なるお方だそうです」
何ともよく分からん。
とりあえず、ヘンナを連れて出迎える準備をして到着を待った。
きっともうひと月もしないうちに流氷で船での往来が出来なくなる。最低限の研修を終えた神盾兵団からの研修要員は帰る準備をしているというのに、新たにやって来るとは何を考えているのやら。お気楽貴族だな。
その船はどうやら商人ではなく、兄が用意したモノらしかった。
「王国の船ですね」
ヘンナがそう声を掛けて来るので頷いておいた。
そして、港へとやって来た貴族とやらは意外な事にまだ少年といった感じだ。俺より少し上といった程度でしかないように見える。
「・・・・・・アホカイネン子爵家の・・・」
その人物を見たヘンナがそう言葉を漏らした。
おい、アホカイネンって・・・・・・




