表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/161

133・とうとうイアンバヌの出産だが、俺はまた放り出された

 自脱型コンバインはお蔵入りとなったが、普通型コンバインは大活躍している。


 大型のモノは牛が曳いているので機械が故障はしても牛がへばることは無い。


 小型のポニー用はポニーの体力に合わせて動かしている。


 ナンションナーではシヤマムとアマムの収穫が終われば、次には秋ピッピの収穫が待っている。


 シヤマムやアマムは米や麦の類なので同じ網、風量で良いが、ソバに似たピッピは網と風車部分のプーリーを変更して風量を変えてやる必要がある。


 コンバインを掃除して網やプーリーの交換、故障があれば修理も行う。


 村総出でシヤマムやアマムの乾燥、コンバインの掃除と修理が行われる中、とうとうイアンバヌが産気づいた。


 いつものように俺は何の役にも立たないので屋敷から放り出され、いつものようにコンバインの整備に当たっている。


 コンバイン掃除というと、21世紀の日本では、いや、世界中で非常に簡単に出来る様になっている事だろう。


 基本的な点検口やパネル、網と言ったモノが工具を使うことなく取り外し可能になっている事がほとんどだ。


 それを普通と思っていると、掃除がどれ程簡単に終わるか想像は容易い。


 カバーを外し、蝶ネジやクリップ、レバーなどの手で取り外せるようになったパーツを取り外せばだいたいの主要部分が露になる。


 そして、モノによってはさらに揺動板までクリップとレバー操作程度で外れてしまう。


 そこまで外すと掃除も非常になるなもので、パーツの取り外しが20~40分、掃除に30~60分程度、組付けに20~40分、2~3時間あれば確実に1台掃除が終わる。


 もし、摩耗や損傷があっても、ベルトやチェーン程度であれば、まず間違いなく8時間以内だろう。


 ところが、ナンションナーのコンバインではそうもいかない。


 構造が特殊だからではなく、20世紀後半のコンバインでも同じだ。


 後にクリップやレバー、あるいは差し込みと言ったワンタッチで着脱可能な外装カバーごときに何か所もボルトやナットによる締め付けが行われ、それを取り外すだけで30分程度かかったりする。


 当然ながら、大きく開閉するドアやアームで展開する構造ではないので、掃除ひとつするのに各部を分解して取り外す必要が出てくる。


 網を取り出してカバーを取り外して掃除の空間を作るだけで1時間以上の手間は当然。


 修理をしようと思えば2~3日は当たり前。


 なぜそうなのかと言うと、時代を経るごとに工作精度が上がり、ユニット化、キット化が進んで個々の部品としてではなく、大きくユニットやキットとして構成されるようになってきたからだ。


 そうなると、構成部分ごとに展開や着脱可能になる。


 そうするには機械自体の荷重のかかり方をしっかり分析して効率化し、何より、製品個々の製品誤差を極力なくしてどのコンバインのパーツであろうと、同じパーツならば取り付け可能にしないといけない。


 そうしなければユニット化やキット化を行う意味が無い。


 ナンションナーでは一品もののコンバインばかりなので、カバーや網の取り外しにも一苦労している状態だ。


 といっても、コンバインはディスクハローの様に普及している訳でもなく、まだまだ一品もので許される状態だ。


 それに、ようやくあるべき姿を見出したかどうかの状態で試行錯誤続きなのでコンバインごとに構造に差異があったりする。


 たとえば、扱ぎ胴の爪の配置や形状が違うだけで網の配置や形が微妙に異なっているし、揺動板の傾斜角などすべてが違う。同じような簀の子状の板でも、簀の子の間隔が異なっているのは当たり前。


 そうやって作物ごとの効率を見て、次のコンバインを製作してという状態が未だに続いている。


 規格を決めるまでにはまだ2、3年かかるかもしれない。


 しかし、コンバインと云うのはより厄介な事に地域ごとに違う品種に合わせた最適化が必要なので、個々の品種や地域的特性を調べ、そこにあった構造を見出し、汎用性の高い形状を作り出さなければ、広域で同じ機械を利用する事は出来ない。


 現に、ジャポニカ米に近い米を生産する中国や韓国では日本型コンバインが普及しているが、落実性が異なり、元来普通型コンバインが利用されていたインディカ米が主流の東南アジアでは、普通型の方が主に活躍している。


 インドに至っては普通型でも日本型でもない、インド型コンバインが開発されているくらいだ。


 埃だらけになりながらコンバインの掃除を行っていると、うまれたという知らせが届いた。


「ウルホ様、まずは汚れを落として下さい」


 屋敷へ駆け込むとヘンナが俺を引き留めてそう言う。


 さらにケッコナが湯とタオルを用意して浴室で待ち構えていた。


 ふたりにされるがままになって汚れを落とした後、着替えてようやく赤ん坊と対面した。


「ウルホ、男の子だよ」


 そう言って見せられた赤ん坊は、さすがに顔だけで性別が分かる訳ではなかった。


「名前はどうするんだ?ルヤンペの所へおくるなら、山の民の名前を付けた方が良いと思うが」


 俺がそう言うと、少し困った顔をした後、


「そうだね。本当はウルホに考えて欲しかったけど、その方が良いかな」


 そう言ってしばらく悩んだ後


「サンニョアイノ。草原の言葉で思慮深いって意味を持つ言葉だよ」


 と、名前を決めたらしい。


 俺もその名前に同意する。


「思慮深い。か。思慮深く育ってほしいな」


 イアンバヌの子だから思慮深くなるだろう。俺はそう思った。


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 馬や牛で動くコンバインと言うのがどの様にして作動してるのかよく分からないです 近代現代の農業機器の説明は多いのですが小説内で制作した機器の説明が疎かになっている様に思います
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ