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130・とある国王の驚嘆

 神盾兵団から技能履修者を派遣することになり、ウルホを留め置いたのだが、いつものようにフラフラどこへともなく出かけてしまった。


 辺境の騒乱は自身もその画策者として納得しているらしいが、負傷したと聞いた時は肝が冷えたものだ。


 辺境都まで怒涛のごとき進撃を行った森の民やアホカス子飼いの連中がそのまま王都まで来るのではないかと宰相が騒いでいたほどだ。


 実際その気配が無いではなかったが、結果として杞憂に終わった。


 そして、ウルホが連れて来たその指導者というのがケッコナンの精鋭を率いる次期族長だという。


 なるほど、近衛と比較しても長身で屈強な体躯をしているではないか。以前、ウルホの嫁という森の民が来た時には皆が感嘆したものだ。噂に聞く美男美女というのが現実であったことがよく分かる。

 そんな森の民をあのウルホが制御している。そのことにも驚いたが、かといってアレに宛がう女郎も男娼もいやしない。森の民以上の美人かウルホ以上の美少年を探すなど無駄という物だ。


 神盾兵団を待つ間、行動の自由を認めた途端にまさか東の山の民を訪ねるなど思いもしなかったが、一体何をやっているのだろうかと訝しんだものだ。


 宰相などまるで仕事が手についていなかったらしいが、そのしわ寄せがこちらに来るのだから勘弁してほしい。


 そんなウルホが王都へと舞い戻ってきた。


 予想に反して船団を従えている訳でもなく、人も増えてはいなかった。


「兄上、とても良いものが手に入りました」


 そう言って見せられたものは何故か皮に覆われた巨大なアマムの穂だった。


 いや、アマムにしては色々おかしい部分があるが、植物で間違いはない。


 そして、驚くことにそれは東では飼料として栽培されているという。初めは馬のエサでも手に入れて喜んでいるのかと思ったのだが、それを食うと言い出した。


 家畜のエサだぞ!


 やはり、ウルホは常識の外で生きているとしか思えなかった。


 そもそもが山の民や森の民と誼を結んで縁辺を発展させたことが常識外れだったわけだが。


 山の民は鍛冶を得意としているが、そこまで奇をてらった道具を生み出す連中ではなかった。それがウルホと交わった途端に爆発的な変化を起こし、今では縁辺で作られた便利な農具なしには農業が成り立たないという者が居るほどだ。


 確かに、神盾兵団が入植する土地は荒れ地が多い。そんなところでアマムがマトモに育つか不安であったが、そこにウゴルの食料であったベルナを持ち込んできたのはウルホだ。


 あの揚げ物はこれまでにない食べ物であることは間違いない。しかも、神盾兵団が入植する荒れ地でも育つ上に相応の収穫まで保証されるという話には驚きもした。


 たしかに、ウゴルが従える農奴たちも死に絶えることなく働いている事を考えれば、ベルナという植物の強さは本物だろう。


 さらに、ウルホが置いて行った茹で蒸し揚げの料理の数々は食のレパートリーを増やすに十分だった。


 が、だからと言ってなぜ飼料を食うと言い出したんだ?馬のエサだぞ。


「それで、このマイシィというモノはその背丈が人の倍近くになるんですが、現在の栽培品種は硬粒種のようですね。なので、硬い皮を柔らかくするために灰や石灰を混ぜた水に浸して煮立たせ半日ほど置いてからこれを潰して材料とします」


 などと調理法の講義を始める。当然だが呼ばれていた料理人がそれをメモしている。


「そして、このマイシィの実は硬いので機械での収穫が可能なんですが、コーンヘッダという特殊な機構によって実を切り落とすことになります」


 と、収穫に関する話まで始めてしまった。


 すぐに調理が出来るわけではないので、話しはそれで終わり、普通に食事となったのだが、その間もマイシィを使えばトルティーヤというパンムが出来るだとか、ひき割したモノで粥状のモノまで出来るのだとか話していた。フェンに関してはその性質上無理かも知れないと言っているが、ウルホならやりかねん。


 そして、東で聞いて来た栽培環境によればかなり広範囲での栽培が可能だそうで、神盾兵団の開拓地や縁辺でも良いらしい。

 のだが、灰汁で煮立たせ漬け置きしておくことは必須で、それをせずにマイシィばかり食べていると病気になる危険があるかも知れないという話までしだした。


 お前は何処でそんな知識を得たんだ?


 翌日、料理人たちが昨夜のうちに仕込んだマイシィが出来上がったらしく、朝食には俺に出すとウルホが張り切っていた。


 出された料理は何のことは無い。よくあるパンムであり粥だ。


 しいて違う所と言えば、昨日見た実の色がそのまま粥に出ているので粥なのに酷く黄色い事だろう。辺境北部にあるという香草もこんな色に出来るらしいが、それとはまた違うのだという。


 食べ方はパンムと同じく肉や野菜を挟んで食う。粥は粥として食う。


 何だろうか、アマムやピヤパ、ピッピといったこれまで食べた物とはまた違った風味があることに驚いてしまった。


 だが、あらためて考えなおせば、これ、飼料なんだろう?


 だが、そんな事は忘れさせる味と風味だ。しかも、裏ごしして乳と混ぜて煮込んだスープまで出てきたことには驚いた。


 ウルホの頭の中は一体どうなっているのだろうか。

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