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13・そして僕はそれを聞かなかった事にした

 ピヤパを播いて疲れた。それでも仕事が無くならない。


 ピヤパは天水農業で特に何もしなくて良い。放っておけば出てくるし、勝手に実ってくれる。ただ、本当に放っておいたら細い穂が付くだけでまともに食用とはならない。だから、時々草取りなどをしてやらないといけない。

 線上に撒いた理由は、その線上以外から生えてきた芽を摘むため。


 耕して時間がたった畑は既に雑草が生えてきている。こういうのは軽い木の鍬でやればいいから耕すよりは楽なんだが、非常に大変だ。


 カルヤラでは資料を読むだけでこんな作業はしていない。つか、必要だとすら思っていなかった。なんせ、前世は農薬散布しとけば雑草を抑えることが出来たんだから、こんな苦労なんか知らなかった。ただ、豆類とか根菜類なんかは時々土かけをしたり、除草の必要があったような記憶はある。


 そこでまた思い出した。中耕機とかいうのがあったぞ。あれなら作るの簡単じゃないだろうか?


 そう思ったのだが、問題があった。鉄とか竹があるならそれっぽいものが出来たかもしれん。ここには木くらいしかないから、小さな馬鍬しかできなかった。

 一応、この村にも大工は居るので釘を分けてもらって、板に打ち付けてそれっぽくできた。


「これなら多少は楽だろう」


 無いよりマシ程度には楽になった。それだけだった。


 大工とカラクリ作りはまるで違う。必死で取り組もうとして住宅建設に支障が出てきそうだったので制作を中止してもらった。領主が思い付きで動くと大変なことになると改めて痛感させられた。でも、農作業はやっている、移住組の人手が足りないのだから。



 そもそもの俺の考えが甘かったのかもしれない。鍬さえあれば開墾なんて楽勝だと思った。少なくとも、前世で読んだラノベではそうだった。鍬一本で畑を大きくして、何でも栽培できるんじゃなかったのか?


「お、カブじゃないか」


「カブとはなんですか?これは、東の山の民がコンコと呼んでいる作物です」


 こんこ?まあ、よく分からないが、それは間違いなくカブだった。そうだと思いたい。そう言えば村に来てから漬物を食った気がするが、どことなくタクワンだった気がしないでもない。


 いま目にしているのは漬けたカブかダイコンだと思う。ただ、何かが違う。切って漬け込んだのではなく、一度乾してから、そこにいろいろ加えて漬た物らしい。それってさ、まさしくタクワンじゃない?黄色くないけど。

 本来は、この漬物の事をコンコというらしいが、材料の野菜もコンコらしい。他に食い方が無いんだろうか?


 で、こいつもこれから播けば出来るのだという。


 そうだよ、また畑作りだよ。そして、こいつはピヤパのように肥料が無くてもという訳にはいかないので。いや、決してピヤパは肥料なしで育つとは言っていない。無くても育つだけ。あった方が良いに越したことは無い。

 野菜はその点、肥料が必要なのだが、肥料となるモノがこの土地には少ない。結局、やせ細った作物しかできないのだが、かといって、レンゲやクローバーがある訳でもない。唯一、草原を刈り払って切り刻んだ草があるくらいだ。


「この辺りの海はどんなものが獲れるんだ?」


「海ですか?ヘロキやサキぺですね。特にヘロキはよく獲れますが、どうかなさいましたか?」


 魚が獲れるなら、そいつが使えると思う。


「ヘロキはあの小魚だったな?あれを乾燥して粉にして畑に撒こう」


 相手は「何言ってんだ?」という顔をしている。


「魚を粉にして畑に撒くんですか?魚を畑に撒くのは何かのおまじないでしょうか」


 まあ、そうだろうな。


「いや、まじないではない。魚から塩を洗い落として乾かしてやれば、ものすごくよい肥料になる。どうせ食べきれないほど獲れているのだから、食べきれない分を乾せばいい、腐らせたり棄てるくらいなら、何かに使った方が良いと思わないか?」


「確かにそうですね。領主さまがそういうのですから、やってみましょう」


 やってくれるそうだ。どのくらい撒けば良いかは知らないが、きっとどうにかなるだろう。多分・・・




 そんなことをやっていると山の民がやってきた。


「約束のミツマタだ」


 前回と同じオッサンがリーダーらしい。が、何か居る。


「何だ?このガキ、偉そうだな」


「僕が領主だが?」


 なんだか、族長のウテレキに似ていない事も無い。


「アニキが言ってたのがお前か。女みたいだな」


 このおっさんは髭がある。まあ、あると言っても普通に生やしているだけで伸ばしている訳ではない。


 名前はルヤンぺと言い、族長の弟だという。そして、彼がコークス生みの親らしい。


「ルヤンペ、石の炭を作っているそうだが、郷で見た焼き石はどうだった?」


「アレは行けそうだが、あんな少しじゃわからねぇ。そもそも、焼き石は掘るところによってモノが違ったりしてな、俺が居るガイニじゃあ、焼ける石の量はたかが知れてた。同じようなモンなら向こうで良い」


 偏屈なのはドワーフの特性だが、ルヤンペはそれを輪にかけてらしいが・・・


「それなら、案内を付けるから見て来ると良い」


 彼を送り出して、リーダーのミケエムシと新しい農具について話をした。


「つまり、その羽根車をいくつも付けたモノを作ってくれと」

 

 依頼したのは手押し式の中耕除草機。田んぼ用以外にも畑用も存在した奴だ。あれを作れば馬鍬の替わりにもなる。ピヤパの条間に合う大きさで一つとして、それを何個か並べて一つに束ねる様にすれば馬鍬代わりにもなるわけだ。我ながら名案だと思った。


「上から嵌め板を噛ますのか。なるほどな。出来んことは無いだろう。急がないのならば作ってみよう」


 そう言って了承してくれた。多分、使おうと思えば山間地でも使えると思うから、作って無駄にはならないだろう。そして、手押しのスキも頼んでみた。


「それはヒトリビキではないのか?」


 どうやら、山の民の郷ガイナンには、溝を掘って種を播くための道具があるらしい。


「種まきの溝を掘るんじゃない。土をこの指の分くらい反転させることが出来る道具だ。本来なら、馬や牛に曳かせればいいのだが、ここにはあの小型の馬しか居ないから、人が引ける小さなものが出来るなら欲しい。そのうち、馬を買える様になったら、普通の犂を頼みたいが」


 ミケエムシは地面にササっと犂を書いてこれでよいかと聞いてきた。


「人が引け、鍬の替わりが出来る程度の大きさで良い」


 何とかなるだろうとこれも了承してもらった。


 何やら、ルヤンペが崖で奇声を発していたらしいが、俺は聞かなかった事にした。

 


 

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