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125・どうにもホッコと意見が合わないのはどうしてだろう

 目を覚ますとそこは見た事のない天井だった。


 ふと横を見ると見た事のある顔がある。


「来ていたのか、ケッコナ」


 声を掛けるとあからさまに呆れている様だった。


「前線に出てけがをするなんて聞いてない」


 そりゃあそうだ。まさか、あんな矢を飛ばしてくるなんて思ってなかったんだから。


 ただ、そこには幾人かの森の民や山の民。カヤーニも来ているのか。が、居ないといけない人物がことごとくいなかった。


「シッポとミンナはどうした?」


 そう、あの二人はどうした?


「ウルホをケッコイが砦に連れて来て、あの騎馬隊はホッコが率いて追撃戦をやってるよ。林の貴族軍もすでに叩いたって知らせが来てる」


 そうか、増援が来たのかだからあそこにケッコイが居たんだな。そうなると、ホッコはどこまで追撃する気だろうか。


「ホッコは辺境都まで攻め込むつもりだろうか?」


 ホッコならそこまで行きそうだ。というか、そうするだろう。


「このまま放っておけば王都まで行くんじゃない?」


 ケッコナはそんな恐ろしい事を言い出す。


「さすがにそれはマズい。今回の貴族軍討伐は僕と兄の謀だ」


 そう言うと、ケッコナ以外がざわつき出した。


「ヘンナから聞いてるからそのことはちゃんとホッコにも伝えてあるんだけど、ウルホが王に贈った弓でしょ?アレ」


 なるほど、どうやらキエシが機械弓(コンパウンドボウ)を使って、あまつさえ俺を負傷させたことでこうなったという事らしいが、それがそれでどうしたものか。


「あの弓を貴族軍蜂起のキッカケにする話は聞いていた。問題ない。戦矢は残していないと聞いていたから僕の判断が甘かっただけだ」


 そう、まさかあんな方法でくるとは思わなかった。きっと俺では射るのは無理だぞ、あの棒。ホッコやシッポなら器用にやってのけそうな気はするが、それだって今だからそう思うだけだ。


「本当に?兄がウルホを嵌めたんじゃない?」


 ケッコナはそんな疑り深い事を言う。


「あの矢を知らなかったのは確かだが、貴族軍に戦矢があっても良い様にあの鎧を用意してあったんだろう?あの板ならば戦矢も防げたはずだ。準備として問題なかった」


 そう言ってもケッコナは納得していない。が、理解はしたらしい。


「分かった。ヘンナにも言われているからホッコはしっかりケッコイに止めてもらう」


 そう言って伝令を出すためにその場にいた森の民に指示を出している。


「公、辺境都を落とすとなれば公の領地が増えることになると思うのですが・・・・・・」


 カヤーニが何か言い難そうにそう口を開く。


 確かに、辺境都やその南部にある貴族領は無主地となるだろう。が、だからと言って俺の領地にするという意味がよく分からない。


 旧辺境領が山脈を跨いでいたのは他に大公領にするほどの面積を確保できなかったからだと聞いている。格を考えなければ、山脈北部の交通の便が良い地域だけでよかった筈だ。


 そうした状態だったからこそ、以前の騒乱を機に南北に分断して北を俺に、南を長兄親族へと分割したんだ。南は不利になる荷馬車交通しか使えない事が懲罰にもなるからそうなった。


「いや、増えることは無いぞ。辺境南部は兄が新たな領主を任命して治めさせるだろう。もし、くれるとなっても断るつもりだ。カヤーニなら理由を理解しているはずだが」


 そういうと、しっかり理解していたらしく、頷いて来たが顔は厳しいままだった。



 それから二週間ほど激痛を友に過ごす日々が続いた。何とか和らいだころにようやくホッコやシッポが返ってきた。


「ウルホ、せっかく攻め取った街をすんなり兄に明け渡すとはどういう事だ?」


 帰って来るなりそう顔を近づけてくるホッコ。


「言いたいことは分かるが、山脈の向こうとこちらでは明らかに通行の便が悪い。流通も分断され、領の差配すら別々になって不効率だ。それでも欲しいと思うのか?」


 ホッコは全く納得していない。


「それなら代官を置けば良い。カヤーニに聞いたが、以前はそうだったんだろう?なら、問題ないだろ」


 あくまでそう言う事らしい。


 確かに、南部は南部で肥沃な土地には違いない。あって損は無いだろう。が、これまでの流通ルートは一切使えない。そのまま王都へ荷馬車で運ぶくらいしか手段がない。


「森の民で南部へ移住する者は居るか?ほぼ林もない草原だが」


 そう言うと更にに顔を近づけて睨んでくる。


「それは無理な相談だな。俺たちはラッピを出なきゃならない程困っちゃいない。わざわざ住みにくい草原に出る意味が無い。山の連中なら問題ないだろ。東の丘陵で畑をやってやがるんだ」


 が、それは無しだ。兄が直接山の民と接する事を快くは思わないだろう。


 ホッコの顔がドンドン近づいてきたが、すんでのところでホッコの頭に手が乗る。


「まだ北にも開墾できる土地があるのに拡げ過ぎても手が回らないでしょう」


 手が置かれたというより、鷲掴みかな。周りが一気に冷え込んだ気がした。


「ウルホ、堅実なのは良い事だと思う。ヘンナやキエロの事を考えるとそうなるのも」


 理解はしている。ケッコイはそう言いたいらしいが、それだと明らかに不満だと言ってるように聞こえるんだが?


「俺たちはラッピでやっていける。わざわざ草原が欲しいわけじゃない。だが、今よりやり易くなったらその方が良いとも思ってるんだがな」


 ホッコもそんな事を言ってくる。


「それなら十分やり易くなっていると思う。南方に土地も増え、食料も困ることは無くなったカルヤラは北へ向かう必要はない筈だ」


 森の民にとっての懸念はヘンナからも散々聞かされている。そして、カルヤラが北を目指したのだって、南へ行っても肥沃な土地は少なく、アマムの栽培に適していなかったからだ。が、今はベルナがある。イモならば少々土地がやせていても栽培が可能なので神盾兵団がうまく開墾して農地を拡げている様だ。兵団が相応の実力を持っているのでウゴルの襲撃を跳ね返すこともできるようになった。うまく行けばもう少し土地を拡げる事が出来そうだとも聞いている。


 それでも不満はあるようだが、それ以上言ってくることは無かった。



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