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119・そこは本当に何もない場所だった

 戦力にならないと言っても、俺が指揮官なのは変えようがない。いや、実際の作戦立案は森の民やミンナの領分だし、実働部隊の指揮はシッポが行う事になっている。


 そして、戦場になるであろう場所を一度は見ておくべきだという意見によって現地へ向かう事になった。


「何も無いんだな」


 第一印象は何もない場所だった。


 そこは山脈が途切れてなだらかな尾根となっており、西を見るとそのまま高原が続くさまがよく分かる。


「はい、もともと大公領であった頃は南北の要衝でしたが、領内という事で特に砦や関所は設けられていなかったとのことです。現在もそのままの状態です」


 まあ、そうだろう。南北交通には必要性があるが、あくまで連絡路でしかない。交易路としては重視されていないのは、クフモからムホスへと河川交通が発達しているからだ。


「この峠を越えるとアホカス領へも行けるのだな」


 ミンナへと聞いてみる。


「はい、峠を降りて西へ向かえばアホカス領ですが、そちらも砦や関所は設けられては居りません」


 なぜかよく分からなかったが、詳しい話を聞くと、アホカス領から王都への交通手段も河川交通が主体なのだそうだ。

 ゼロから南下、川を遡上していくと湖がある。そこから川伝いに三つほど湖を超えると分水嶺となる王都側へもゼロ側へも流れ出るパーヤネン湖へと至り、そこから川を下れば王都へと繋がっている。


 辺境領が辺境である理由はこの河川交通をうまく利用できない立地にある。


「辺境領は山脈南部は平地が多いですが、内陸部と違い、大きな川も湖もありませんので、王都へ至るにはこの峠を下り、領都から街道を南下するしかありません」


 街道の旅は内陸部を川で結ぶソレに比べて遠回りとなる分、交易路としては不利になる。環境的には不利なはずの北部が大穀倉地帯として重視されていたのは、クフモからムホスへの河川交通が可能だったかららしい。


「辺境はカルヤラの主要な河川交通から遠い地域か」


 そう言うとミンナが補足してくる。


「現在は陛下の意を理解できない貴族の領地も辺境に付随する地へ転封とされたものが多いと聞いております」


 なるほど、不平貴族をひとまとめにしてしまっているのか。それって反乱起こしてくださいと言ってるに等しいが・・・・・・


「そうなると、こちらへ攻めやすい状態だな」


 俺はそう言ってみる。


「内陸の街道を通る分にはそうなります。しかし、以前の叛乱がそうであったように、近衛などは海路ムホスへ移動できるので、公への援軍は迅速に行えると思われます」


 なるほど、遠回りして来るよりも海路で一気にか。さらに、ゼロへ至る河川交通を利用すれば、確実か。


「ただ、辺境周辺貴族の軍勢を叩いてしまえば、騎馬によって王都へ至る事は容易になる事でしょう。公に反感を持つ貴族ばかりを集めた結果、連中が公や森の民に蹴散らされてしまえば王都までに有力な貴族は配されておりませんから」


 少し森の民へと視線を向けながらそう言うミンナ。500で王都へ至れる理由がそれか。


 ってか、ホッコやケッコイもそのことを把握してたのか。森の民の能力は凄いんだな。


「僕にとって、兄以上の王は居ない。替われる王が居ない状態でそんなバカげたことをやっても意味は無いだろう」


 そう言うと、ミンナは何処か安心した顔になった。


 この辺りの境界は複雑で、実のところ明確な線引きすらされてはいない。


 なにせ、境界となるべき山の稜線や川などが存在しない場所だからだ。しかも、接する三者にとって重要な地でもない。そもそもが少し前まで大公領という一つの領地であったというのもあるだろう。


「どこまでが辺境領で、どこからが縁辺になるんだ?アホカス領も知っておきたい」


 そういうとミンナも困っていた。


「明確には決まっておりません。縁辺領はおおよそ峠から下った山沿いまでと思われます。アホカス領は西に見える林あたりです。ただ、この辺りは放牧がなされている場合があり、辺境、アホカス双方の牧童が自由に行き来する場所となっております。そのせいで家畜を狙う盗賊なども出没しますが、境界紛争を恐れて討伐の兵を送り込まない緩衝地帯なのです」


 まあ、そんなところらしい。緩衝地帯といえば聞こえは良いが、行ってしまえば無法地帯だ。かと言って、アホカス家や配下が大公家と紛争を起こす訳にも行かなかったのだろう。今でも微妙な関係性があるのだからその点で変わりはない。

 俺もこんな所には無関心だったし、経済性のない辺鄙な土地に執着する気も無い。それに、少し北は森の民の縄張りにも係ってくるから下手に手を出すのもはばかられる。


「こんな所しか街道が無いというのにも困ったものだが、仕方がないのだろうな」


 街道とは言いながら、大きな街を繋ぐ道ではなく、しかも、主要なルートとも言い難い。常に人が行きかうという事は少なく、アホカスと辺境の農村の行き来が行われる程度の事でしかない。


「道を辿れば辺境領都か」


 東を眺めてそう呟くが、特に何が見える訳でもない。ただ、丘陵と山脈が見えるだけだった。


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