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116・どうやら兄から手紙が来たらしい

 脱穀機(ハーベスター)ヘッダー(刈り取り機)を取り付けてコンバインを騙るなどとアホを言うなと思うだろう。ケッコナは内心思ってそうだ。


 しかし、これは俺のアイデアではない。日本のコンバインの始まりというのがまさにこれだった。


 日本におけるコンバイン、つまり、自脱型というのは元をたどると脱穀を行う足踏み式脱穀機にさかのぼる。

 足踏み式脱穀機が登場したのは大正時代。それまでは千歯扱きが使われていた訳だ。


 この足踏み式脱穀機と唐箕の機能を合体したハーベスターが開発され、まずはテイラーなどの外部動力を用いて駆動していたモノが戦後20年を過ぎる頃からエンジンを内蔵し、自走も出来るようになっていく。


 この頃、ちょうどガソリンエンジンを用いた刈り取り機、バインダーも開発され、ハーベスターとバインダーを合体させた機械、そう、合体機(コンバイン)が1966年に誕生した。


 これ、21世紀を迎えても10年前後は改良を続けながら大型のコンバインが入れない棚田向けに生産が続けられていたのはマニアの間では知られた話だろう。その後、超小型乗用コンバインが代替として登場するのだが、需要の少なさから短命で終わっている。


 では、海外ではどうかというと、1860年頃に牛馬曳きのコンバインがすでに開発され、第一次大戦後には飛躍的な発展と普及が行われている。

 なぜ、日本はそれを導入しなかったのか?


 実は、日本でも導入は試みられていた。そして国産開発も行われたのだが、如何せん、大きすぎた。そして、外国ではコンバイン以前の脱穀方法が千歯扱きではなく叩き棒であった事実が、その脱穀性能を表しているともいえる。


 日本で千歯扱きが普及し、明治後期にドラムに歯を付けた足踏み式脱穀機の開発が始まったのは、何を付けてもジャポニカ種という米が、他の穀類に比べて脱落しにくかったことにあった。


 つまり、外国製の直流型コンバインではジャポニカ米の脱穀は難しかった。いや、出来なくはない。北海道の様な大型機械が使える地域であれば。

 だが、耕地が細分化し、道もあぜ道程度でしかなかった日本の大多数の地域においてはそのようなコンバインは利用不可能であった。


 更なる問題も抱えていた。


 日本は東南アジアや南アジアの米産地と違い、寒暖差が大きくそれでいて湿気がある。そのため稲刈り時期は朝露が降りている事が多い。

 

 普通型コンバインというのは穂も茎も何もかもを掻きこんで脱穀作業を行う訳で、そんな濡れた葉や茎を掻きこんでは脱穀に支障をきたす。そうでなくとも水分量が高いので脱穀の障害になることが指摘されていたというのに。


 こうした理由から日本におけるコンバイン導入は日本で発展した穂のみを脱穀部に通すハーベスターと倒れた稲を引き起こしながら刈り取るバインダーを合体(コンバイン)するという独自の進化を遂げることになった。


 その結果、穂先の実を脱穀するにはそれに適した形状の機械を作物ごとに必要とすることから、背丈や結実形態が似通った稲と麦にしか対応できない専用機となっている。だから、自脱型の別名がジャパニーズコンバインと呼ばれるわけだ。


 そのため、ソバや大豆、菜種などの機械収穫には欧米で開発された軸流型コンバインを導入し、日本の田畑に合わせた小型のモノが開発されている。


 そんなわけで、俺が作りたいのもバインダーと脱穀機の合体品だ。


 何用かって?ナンションナーで栽培に成功したシヤマム用だよ。


 まず考えて欲しいが、水田というのは水を張る関係で水平に造らなければならない。畑であれば丘陵だろうと斜面であろうと地形そのままで問題ない。

 そのため、土木機械が発達していないこの世界では、水田を作るには沼地でもない限りは等高線に沿った細切れの水田が形成されることになるのは仕方がない。そこは日本と同じだ。


 そのため、牛に曳かせるマイクロバス大の大型コンバインでは取り回しが悪すぎる。かと言って、ポニー用の普通型コンバインでは詰まるだけで作業が進みそうにない。


 幸いにもシヤマムはフェンと酒の需要があるので用水近傍の平地をある程度水田化することが決まり、ポニーコンバインの需要が存在している。


 ところで、世界には欧米型と日本型しかないのかというと、それがそう簡単ではない。


 実は、南アジアにも独自のコンバインが存在している。


 南アジアのコンバインは日本の小型コンバイン程度の大きさしかないのだが、4条や5条の刈り取りが可能だ。もう、何が何やら分からないのだが、日本型の引き起こし部分が無く、欧米型のトウモロコシ用ヘッダーの様に歯車で茎を確保してバリカン状の刈刃で刈り取ると、ヘッダーに内装された脱穀機で脱穀して、そのまま藁を吐き出している。

 日本型とどちらが効率的か興味があったが今じゃどうする事も出来ない。


 さらに、欧米の普通型にも面白いヘッダーが存在する。


 一般的に麦を収穫する場合に使うヘッダーは日本でもおなじみ、籠車(リール)が回る下に顎を突き出した受けがあり、顎の先端にバリカンを備え、その後ろにスクリューがあって機体の脱穀部へと運ばれていく。どこか除雪機にも似た構造だ。


 ところが、ロシア圏では脱穀ドラムがヘッダーに備えられてロータリーよろしく、そいつが穂だけを機体へと放り込むものがある。当然畑には穂だけが無くなった麦が林立したままだ。


 日本ではトラクターとはロータリーで耕すもの、コンバインとはジャパニーズコンバインが常識となっているが、外国には驚愕するような農機、アタッチメントがゴロゴロしている。


「ウルホ様、陛下から文が届いていますよ」


 俺がケッコナに呆れた目で見られながらもポニーコンバイン(零号機)を2列と3列、どちらで作業すべきか悩んでいるとヘンナがアイからの手紙の知らせを持ってきた。


「わかった。夜に読むから置いておいてくれ」


 ヘンナは何か言いたそうだったが、ケッコナのあきれ顔を見て何か納得したように帰って行った。


 なあ、ヘンナさん、ケッコナのあきれ顔だけで理解できたんですか?俺にはサッパリだ。 



https://www.youtube.com/watch?v=E3b5lqoam_o


謎な国のコンバインのようつべ見つけたので貼っておきます。


これよコレ。

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[一言] エンジンの無い大型コンバイン?
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