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107・ようやく待望の弓が来たようだ

 海の結氷が緩み始め、いっそ塩水選を海水でやってみてはどうかと考えていたら、ホンデノがやってきた。


「長、弓を持ってきた」


 俺の弓と共に2メートルを超える長さの弓も携えている。


「調整ご苦労。それは言ったやつか?」


 そう言うと、和弓モドキに巻いた布を剥いでいく。


「そう、これだ。なかなか苦労したが、これはこれで作りに意味があるんだな。中央で番えるよりも反発を抑える効果も出てるようだぞ」


 そんな事を言う。見た目はまさに和弓だ。


 当然だが、俺の話だけで作れたわけではない。森の民にも西方の話や文物を知る者は居るそうなので、そういう者たちからも聞いたり図柄を描いてもらったりして試作をしたそうだ。流石に詳細な構造までは俺は知らない。


 本格的に打ち込むならともかく、部活動でやっていただけだ。使っていたのもグラスファイバー製。


 そもそも、学生が使う弓の大半は扱いが容易なグラスファイバーで最近はカーボン素材の弓もある。


 竹と木を素材とした弓だと取り扱いにも気を使うし、学生が扱うには不都合も多い。何より高価すぎておいそれと買えるようなものではない。


 しかも、ここには竹らしき植物も見当たらなかったので、素材はホンデノに任せた。


「長の言う特性を出すのに苦労したぞ。単純に俺たちの作る弓の形状を多少変えただけじゃ無理だった。素材から考えながらやったんだ。おかげで、弓職人が新しい発想に出会えたのはうれしい誤算だ」


 どうやら苦労もあったが、収穫も大きかったらしく、職人たちの中には和弓をメインに造るものまで現れたらしい。


 そんな事を言いながら弦を張り、弓の準備を終えるホンデノ。


「ちょっと腕の長さを測らせてくれ」


 そう言うので腕を出すとひも状のモノで測り出す。


「おい、ホンデノ」


 そうこうしているとホッコが来たらしい。厳しい声が上がるが、どうもその後の言葉は出ないらしい。いつものように気配に怯えている。誰のとは言わないが。


 どうやらホンデノも事情は把握しているらしく、挨拶以上の会話はない。


 そうこうしていると気配の正体が的の準備をしてくれている。こちらに微笑みかけるが、一名それに怯えている。


「私もその弓を試したけど、なかなか良いね」


「そうだろう。ケッコイならこれよりもう少し大型でも良いかもしれない」


 的の設置を終えて話しかけてきたケッコイにそう答える。どうやら森の民には相応に大型化した弓の試作もされているらしい。身長があるからその方が有利なのは確かだ。


 そんな事をしている間にホンデノはせっせと俺専用の矢を製作している。


 弓が大きいのでかなり引けるわけだが、引く人には腕の長さという限界が存在し、それが個人差となる。

 そのため、出来る事ならこうして矢を特注した方が綺麗に飛ぶようになるわけだ。


 俺の場合、和弓のスタイルに合わせてコンパウンドボウも改造してもらっているが、やはり、和弓とコンパウンドボウでは引き代が変わって来るので矢も違うものを用意することになる。


「よし、出来た」


 そう言って矢を作り終えたホンデノが手渡してきた。


 それを一本番えて引いてみた。


 重い。かなり力が必要だ。


 コンパウンドボウの場合は引き始めはともかく、滑車の原理で引くごとに力を必要としなくなるのだが、当然ながら、そんな構造ではない和弓モドキは普通に力を要する。

 コレ、たぶん、25kg超えてるんじゃないか?引いた状態で維持するのが難しい。


 パンと音を立てて弦ははじかれ、矢が飛んでいく。当然というべきか、コンパウンドボウほどの矢速はない。


 それも当然で、コンパウンドボウは最終点では力がほぼ半分しか要らない仕組みなので、思い切って強い弓になっている。おまけに、滑車構造は矢速をあげる効果もあるので、その矢速はホッコとほぼ変わりなく、当然のように熊の皮膚を貫通する。が、たぶん和弓では難しいだろう。


 パン


 的から音がした。流石に真ん中とはいかない。というか、久々に扱ったはずなのにかなり扱いやすくないか?コレ。


 当然、弓というのは番える場所の弦は弓の外側に位置するように配されているのだが、コイツは和弓以上にそれが絶妙で、狙いやすく、扱いやすい代物に仕上げている様だ。


「気が付いたか?さすがに長の機械弓みたいな仕組みには出来なかったが、俺たちの弓にも取り入れた工夫は生かしてある。長の知っているという西方の弓よりは扱いやすい筈だ」


 なるほど。本来は僅かな反りでしかないモノをこいつはアーチェリーのようにより狙いやすい構造を取り入れている訳だ。どうやら見かけ以上に手が込んだ代物なんだろうな。


「コレを夏までに60ほど用意するというのは無理か?」


 一応ダメ元で聞いてみた。ダメなら通常の短弓を騎兵に与えておけば良い。シッポたち数人分と、後に揃えるための練習用の弓がとりあえずあれば良いだろう。戦争する訳じゃ無し。


「60で良いのか?長弓の新しい形だと言ってコレに惚れ込んだ奴がいるからすでに20はある。夏までにあと40なら十分揃うぞ」


 次は何処と戦うんだと聞きそうな顔だが、あえて聞いて来ない。


「跳ね鹿対策だ。これから開墾する山脈ふもとに騎兵を置いて害獣対策をしようと思う」


 それを聞いて少しがっかりしていたが、跳ね鹿には興味があるらしい。


「その話は聞いたな。長の弓じゃなきゃ一発で仕留められない鹿なんだろう?ほかにそんな事が出来るのはホッコやケッコイあたりの一握りか・・・・・・」


 ホンデノもそんなことを言っている。あの鹿はやはりすごいんだろうな。  

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