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106・帰ったら突然ヘンナに怒られたんだが

 シッポは俺に仕える事が出来ると飛ぶように帰って行った。


 大丈夫なんだろうか?アレ


 シッポたちに渡すといった長弓だが、当然だが、洋弓ではない。洋弓で騎射しようだとか、そんなバカげたことは考えても居ないし、ホンデノがいくら優秀でも無理がある。


 当然だが、この世界では西方世界にあるという弓、和弓を与えるつもりでいる。


 和弓の評価は日本凄いという話とアンチ勢とで根底から違うのだが、基本的に弓の性能が極端に違うなどという事はあり得ない。


 アンチはカタナについても片刃の薄い刀身は折れやすいから云々と言っているが、戦で使う太刀や昭和に作られた軍刀はそんなヤワなモノではない。わざわざ悪い時期、実戦より工芸品として作られた時期や戦国期の数打ちの話を飛躍させすぎているに過ぎない。

 そもそも、カタナというモノは護身用か頸取り用なのだから、鎧が切れないのは普通。乱造品が簡単に刃こぼれして当然。

 そこを何やら間違っている。


 さて、弓の話だが、世界の弓の大半は弓の中心点で番えるように出来ている。


 何を常識をと思うだろうが、和弓にはそんな常識はない。


 しかし、世の中、ちゃんと考証していないゲームやアニメ、或いはスケッチにおいては、固定観念から中心点で矢を番えた和風装束のキャラクターやモデルなんてのがあったりする。


 より細かな話だと、西欧や中東の弓は弓を持つ手の手の甲側に番えるのに対し、中央アジア以東では親指側に番える。

 弦の引き方も違っていて、手で引く西方系に対して、アジア系は親指と人差し指を基本としている。


 現代のアーチェリーと弓道を見てもその違いが分かると思う。弓道の場合、弦を引くのは手に付けた弓かけという道具によって、親指部分に仕込まれた段付きに弦を引っかけて行う。アーチェリーが指をすべて使うのとは引き方自体が異なる。


 そして、アーチェリーは身長同等かより小さな弓を使うのに対し、和弓は2メートルを超える長さの弓を使う、いわゆる長弓という分類になる。

 しかし、下から三分の一の辺りに番える構造となっているので、身長を遥かに超える弓でありながら、番えた部分から下は短弓と変わらない程度の長さしかない。


 これが、馬上で使うにも拘らず、日本では騎射が可能な要因。いわば、馬上で長弓を使えるように考案されたものと言えるんではないだろうか。


 弓自体も竹と木を張り合わせたもので、単一材ではない複合弓という部類になる。例えば、トルコ弓、この世界でいうウゴル弓は動物の腱や骨を使うが、それが出来るのは乾燥地帯だけであって、日本みたいな多湿の地域ではあっという間に使い物にならなくなってしまう。当然だが、竹と木の複合弓でもその扱いが難しいのは変わらないのだが。


 

 さて、俺がホンデノに話したのは、そんな和弓に関する話だった。彼も「西方の弓の知識があるとはスゲェ」と感心して聞いてくれていた。まあ、それを睨む視線が合ったのは確かだが、それについては気にしてはいけない。


 そして、どうやら彼は和弓モドキを作ったらしい。その上で、コンパウンドボウの道具であるリリーサーを利用して、和弓に近い扱いを可能にした。


 冬前に弓を調整に出しているので、帰ったころには俺の弓と共に和弓モドキも持ってきてくれるはずだ。


 


 俺はナンションナーに帰ってホンデノが来るのを心待ちにしようと考えていたのだが、帰ってすぐにヘンナに捕まった。しかもどうやら怒っているように見える。何故?ちゃんとアマムの様子を見に行く事は伝えたよ?


「公、陛下よりの書状をお忘れでしょうか?」


 なんか怖いんですが、ヘンナさん?


「覚えているぞ、跳ね鹿の肉がまた食べたいそうだから、次に向こうへ行くときには獲って来よう。シッポも来るだろうから、その実力も測れる」


 そう言うと、なぜかより厳しい目で睨まれた。


「そうですか。まるで読んでおられないと」


 ん?どうして?何言ってんの??


「私は注意するようにと言ったはずですが?なぜ、シッポの仕官を受け入れたのでしょうか?」


 え?あの変態、そんな危険人物だったの??


「ハユハ家はアホカス家の寄子です。忠実な家臣であり、武に優れた家柄でもあります。しかし、反王派との繋がりを疑っても居ります。私が公に嫁ぎ、子をなしたことで動きが怪しいとの注意も受けております」


 それ、聞いてない。


「しかし、シッポはそのような気配はなかったぞ」


 実は何か言っていたような気がするが、あまりに変態だったので詳しくは覚えていない。


「はい、次男シッポは公に対する尊敬の念はある物の、当主や長男の様な二心は持てなさそうではありました」


 なら、良いんじゃね?


「しかし、その弓の腕は確かで、カルヤラでも十指に入ると評されております。その者が公へ仕官したとなるとどのような噂が立つか分かったものではありません!」


 いや、そう怒らなくとも・・・


「確かに腕は立つようだったが、山脈地域の警護を任せるのみだ。従者も20に満たないそうだが?」


 ヘンナはなぜかため息をついて呆れている。


「それは当然です。ハユハ家は子爵とは言え、領地もなく、アホカス家の騎士身分と言って過言ではない家柄ですので、その勢力は200程度です。当主に二心があったとて、主家に仕えるべき兵や騎士を他者へ渡す余裕はございません。次男とその子飼いが抜けることも、本来は痛手です」


 そうなのか。


「という事は、山脈に来るということ自体が・・・」


 ヘンナはようやく話が通じたと安堵している様だ。


「はい、当主の二心の証明と言えましょう」


 と言っているが、さて。


「ならばちょうど良い、新設する騎馬50を与えると言ってある。その指揮をするという事はこちらの人質という見方も出来る。弓もホンデノに作らせている馬上長弓を使わせる。これまでのようにはいくまい」


 そう言って胸を張ってヘンナを見た。


「分かりました。いえ、あの次男は当主より公の命を優先するでしょうから、公がそうとお決めになったのであれば、これ以上言う事はございません。ただ、注意だけは怠らずにお願いします」


 あの変態が異常人物以外に見えるというヘンナの考えには首を傾げてしまう。反王派?そんなのまだ居るの?さすがにそれは無いと思うんだが。 

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