29.白猪竜(バイズーロン)と黑猪竜(ヘイズーロン):後編
シュウ王朝太史寮の編纂した歴史伝書の中に、滅亡したインの紂王が為したとされる長夜の宴が後の世に“酒池肉林”の語源として伝わる一節がある。
妲己を愛しみ、妲己の言これ従う。賦税を厚くして、もって鹿台の銭を実たし、鉅橋の粟を盈たす。
ますます沙丘の苑台を広め、酒をもって池と為し、肉を縣けて林と為し、男女をして倮ならしめ、あいその間に逐わしめ、長夜の飲をなす。百姓怨望して諸侯畔く者有り……とあるが、おそらくはインを貶めるためのシュウの宮廷による捏造だったと思われる。
「勘弁してください……」
ピアッシングは涙目で、私は真っ青になっていた。
「あぁっ、御免なさい! 二人でしちゃった道具屋さん達との火遊びは本当に本当は、内緒だったんですね!」
「お母さん、お母さんっ、忘却魔術っ!」
茫然自失、穴があったら入りたい。
さっきドロシー様に“私は私の夢を追いかける”なんて大層偉そうな覚悟を述べて、優し気に微笑まれる視線を頂いたように思えたばかりなのに急転直下、崖下に突き落とされた気分だった。
身分不相応な大言壮語などするもんじゃない。私は生涯において今日ほど、自分が矮小で無価値な存在に思えたことはない。
微塵子にでもなったような気分だ。生きていてすいません。
嫌な汗が噴き出ているような気がして、亭主達の顔を盗み見るようにして窺うと、聞こえていなかったふうを装っているのか、見た限り平静な顔付きだった。
私とピアスはきょどって、せわしなく目を泳がせてしまう。
隠していた訳じゃないんです、いえ、浮気の不義密通だから秘密だったんですけど、でも……あぁ、惨めで居た堪れなかった。
しどろもどろになって、犯した情事を悔いた。
ことの起こりはキキさんの能力の話になって、他人の心が読める、でもドロシー様方との207条の法度集で親しきものの心を覗くことは禁じられている……って話になって、よせばいいのにピアッシングが“嘘だよね?”と鸚鵡返ししてしまったのが、そもそもの発端と言うか導火線だった。
「出会ったアーリントン・セントラルでホームを歩いていたときなんだけど、ピアスさんと一緒になって浮気した道具屋のお兄さん達とのアバンチュールを思い出していたでしょ……リンティアお姉さんが嬉しそうにニヤニヤ笑っていたので、何故かなって思って」
「あのときはまだ、赤の他人だと思ってたから……」
血の気が引いていくのが分かった。
今更親しい人の心は覗かないって言われても困る。大体、読心術できるならもっと早く言ってください。普通、そんな能力を持ってる人が居るなんて想像もしてないのが私達の冒険者界隈ですから!
「あれっ? あれれぇ! 大して罪悪感無いみたいだったから、大事な隠し事じゃないと思ったんだけど、違うのおおおぉっ!」
「だって、貞操観念、笊だったからああっ!」
私とピアッシングはキキさんの追い討ちに、目に見えて見る見るうちに萎れていった。大して罪悪感無いは堪えた。
平均的な女冒険者の性的モラルなんてこんなものだと高を括って、亭主以外との他人との情事を楽しむのは、これが初めてじゃなかったけど、伴侶を裏切って秘密の逢瀬を楽しむのは摘み食い感覚のゾクゾクする快感があってやめられなかった。
違う男の子種で自分の身体を汚す背徳感に酔い痴れていた。
今思うと、なんて薄っぺらい裏切りだろう。
私は完全に頭を抱えてしまった。
急に胸倉を掴まれ、蹲ろうとするのを引き起こされる。
まるで鬼神のように鋭く睨みつけるドロシー様の、固く握られた拳が私の鼻っ柱をへし折らんばかりに叩き込まれる。
ジンジンする痛みと共に、生温い何かが垂れてくるのが分かる。
「作戦前だ、……シャキッとしろ!」
「お前の役割は何だ? 見届け役でも、浮付いていたら死ぬぞ!」
「大体、安い浮気を暴かれたくらいなんだ、言っておくがあたしは他人の心を覗く方法を56通り持っている、過去視もできる、お前達の中身なぞ最初から丸裸なんだ」
「……あたし達は王宮内に有った離宮、勇者ハーレムの居館を追われた後、身の置き所も無くして国中を彷徨った、唾を吐かれ、石や腐った卵を投げ付けられ、生きるために身体を売ったっ、身バレして垢にまみれたあたし達を承知で買うのは大概が変質者だ!」
「長い荒淫で疼きが消えなくなった身体を寄せ合って、束の間の昂ぶりのために互いの傷を舐め合うようにして慰め合ったっ!」
「最低だった、恥の上塗りにあたし達の心にはヘドロのような黒い澱が積もって行ったんだ……あたし達のクズっぷりに比べれば、お前達の不倫ごっこなど、笑って許せるレベルだ」
「いい戦士の条件はな、例え親の死に目に会っても自分が生き残ることを優先することだ……人間性を捨ててさえ、みっともなく生き残るのが強者だ」
「冒険者の条件は違うのか?」
それだけ言うとドロシー様はゆっくりキキさんの方を振り返られたが、まるで地獄の羅刹のような瞋恚の焔を幻視するかと思われた。
「お前はあとで説教だが、先に208条を追加する」
「ヒイイイイィッ!」、日頃愛らしくておっとりしてるキキさんが震え上がっていた。
「今後、如何なる事情があろうとも許しなく他人のプライベートを口外してはならない……208条だ」
私に相対していた時がまるで鼻歌気分かと思われる程の、死者の国から湧き上がってくるような陰々たる声が染み渡っていった。
「汚れるわ、鼻血を拭きなさい」
ステラ様が差し出してくださった綺麗な亜麻布のハンカチにお礼を言って、鼻と口許をぬぐうと、不思議なぐらい痛みと火照りが引いていった。
癒しの加護が付与されているらしい。
「ナイーブという感情には感受性と惰弱の二つの側面があるわ、でも……感受性と惰弱は全く違うものよね」
「……人は誇れる思い出なんか無くても、今日という日を生きていける、そう私達は思っているの、それでも、そこから先の話なんだけど、何かを追い求める者、前に進もうとする者は心の中に消えることのない誇りを灯していなくてはならない」
「心の中の誇りは、惰弱を遠ざけるわ」
「それがなければ、手に掛けた同郷の二人を許せなかった貴女が同じようなことをしても、心が痛まない恥知らずのままでしょうね」
辛辣な指摘だった。勿論気がついている、いつしか私が私を裏切って愛欲の虜になった幼馴染み達と同列の不心得な人で無しに堕ちていることを……露見しなければ、このまま駄目な女のままだったろう。
ステラ様の言葉が、素直に染み入り、私の中に刻まれた。
「みっ、皆様、申し訳御座いませんでしたっ! 黙っていれば私と言う最低の尻軽女が許される筈も、ありませんでした……どう心を入れ替えるのか、詫びるのか……少し時間をください」
誰も聞く素振りは無かったが、謝罪せずにはおれなかった。
気になったので、ステラ様に問うてみた。
「あ、あの、ステラ様も、そのぉ、同じように心が読めるのでしょうか?」
「勿論よっ……」
ステラ様は、満面の笑みで即答されるのだった。
「全員4点ハーネス確認、これより状況を開始する!」
ドロシー様より号令が掛かったので、それぞれ座席に着く。
遣り直したいという私の話には何もコメントを頂けなかったが、優し気に微笑まれる視線が暖かな慈しみに溢れているような気がしていたのだ、つい先ほどまでは……
例え永劫に近い星霜が必要だとしても、責めを負うべき贖罪に生きるつもり……そう、おっしゃったドロシー様に面と向かって会わせる顔が無い。
「ダンジョンをちまちま攻略していては時間が掛かる、本機ボーリング・シリンダーにて一点突破、九尾の狐に直接アクセスする」
「この3Dホログラムが殺生石の全体像だ、九尾の狐はこの辺に封印されている」
空中に映し出される像の一点を指し示されると様々な情報が展開されるが、私達には良く分からない。
オートパイロットにするのだと、攻略突入ルートを手動で打ち込んでいるのを説明されながら、作業を続けるドロシー様に念の為のお守りだと“強化バルブ”というものを手渡される。
「もしもの時以外使うな、口に加えてコックを捻れば吸引できる、一時的に筋力と反射速度を驚異的に引き上げるが、人体へのダメージが多少なりとも残るからな」
「ダンジョン・コアの破壊を確認後、散開して敵対UMAにコンタクトする、突入手順としてコンソール前部の専用ハッチを解放、各自帯剣などすみやかに再装備、殺生石基底部を制圧する」
「カウントダウン開始と同時に、各自のドライブデッキ・シートに付属するタブレットがシュミレーションを復唱する、作戦行動をよく確認するように」
「カタパルト・フロア傾斜開始!」
「推進プランジャー、フルブースト!」
機体がゆっくりと傾いていく。細かな機械の点滅や、甲高い何かの音が急に高まっていくのが分かった。潮垂れている場合ではないと私とピアスは、今一度気合を入れ直す。
「秒読み開始、ビット回転超電磁反転オルタネーター出力最大!」
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作戦通り、ダンジョンには何階層にも渡り大穴を穿ち、供給元の竜核を砕いて無に帰すのに3秒を要した。
続いて超高速回転の先端ビットの完全停止までに2秒、制御ジャッキを展開して機体姿勢を水平に戻すのに2秒、可変ムービング・アームに支持された操縦ユニット、計器ユニット、モニターユニットが収納されるのに3秒ほど掛かる。
コックピット・シートはそのまま前部の突入ハッチにフロアごと移動する。
宇宙船並みの気密装甲は自動でハッチの内扉を密閉、斜め上の二重外扉の複雑な篏合構造のロックピンが抜け、負圧にシームが切れる音と共に装甲ハッチが大きく開いていく。
センサーには脅威の反応は無く、外気も耐性を超える害は検出されていない。有毒ガスこそ発生していないが、ただし瘴気は半端じゃないようだ。
「前照灯オンッ」
機体制御を引き継いだナンシーが復唱すると、拡散型超輝度LEDが周囲の様子を照らし出した。
「皆んな、得物はちゃんと持ったか? 遅れず付いて来いよっ!」
(ステラ姉とキキは4人を見てあげて、あたしとエリスで会敵駆除にて侵攻、ハンドサインは通常で、サイレントは不要!)
(特に女達は、集中力が切れてないか注意して……、まったく……キキはお仕置きだよ、お仕置きっ!)
(ごっ、御免なさいいいっ!)
こいつら連れてると遅くなるからなあ……一応足手纏いにならないよう瞬歩のハーフ・グリーブを装着させているが、順応訓練のときももたついてたし。
大体、クォータースタッフや長弓がダンジョン最奥で役立つとも思えない。
「突入っ!」
確保された岩盤との僅かな隙間に身をかがめざま、腰を低めてボーリング・シリンダーの胴の上、約200メーター程の距離を天駆でなかば跳ぶように、瞬時に駆け抜け、先端の殺生石基底部が剥き出しになっている熔岩洞と氷河の浸食で出来たのだろう巨大な自然窟に躍り出た。
プラチナ同位元素の装甲はいつものショルダー・プロテクター、アッパーカノンではなく、より堅牢なフレキシブル構造ブレストプレート・タイプを装備している。
もともとの自然の洞穴を利用して創造されたのだろうダンジョンの最奥は、ウジャウジャと妖魔が蔓延り、さながら大増殖したレミングが行き着く先の谷底のような様相だった。
「来いっ、我が同胞、瘴気喰らい、黄金の魔遊アロワナ、ファイブマンセル!」
私の影に棲む従魔、悪食の大食漢を5匹呼び出す。
大気を泳ぐ至大なる飽食の怪魚は、瘴気も妖魔も喰らい尽くす。
何も彼もを呑み込んで、高濃度の魔素へと変換する。ちょっとした大木ほどもあろうかという胴長の魚体をくねらせ、悠然と、そして捕食者の貪欲さを持って、妖物共に渾身のバイトを見舞い、大口を開けて瘴気を吸い込む。
「Ω!」「Ω!」「Ω!」「Ω!」「Ω!」
象や犀を丸呑みするという巴蛇、黒蟒の類いが縺れるように蝟集するのに、消滅魔法を連撃する。
竜核を打ち砕いても、この場を守る妖魔獣の肉垣は厚い。
洞内での掃討戦は、崩壊や延焼に気を遣う。だが、それなりに方法はある。
キャトルミューティレーションのように、部分的に肉体を消失した魔獣共の惨殺体が積み上がっていく。
長の年月に渡り生まれ続けた妖魔獣が我が物顔でのさばっているのは、データから予想されてはいたが、実際に目にするとこの密集さは異様だった。
すでに、けたたましい断末魔と威嚇のハウルで洞窟内は割れ鐘を並べたように反響し続けている。
重なる吠え声が、物理的な剛性を持った轟音のようだ。
選択指向性魔術の幾つかを無詠唱で放つ。
大量の比禰須三とも呼ばれる火鼠や、一本角のライオンとも見紛う諦聴を選んで氷結魔法の上位版、絶対零度、最上位版結晶化魔法のウルティマ・クリスタルで足を止め……他も速いが、その中でもこいつらは断トツに速い。
動きの止まった奴等に間髪入れず、物質分解魔法天魔降臨で分子結合を解き、霧消させる。
左手に刃物の王たる“無明丸”、師匠から拝領した、およそ切れぬものの無い剃刀、右手にはナンシーに開発して貰った異空間固定超振動刀身のディメンジョン・ソードを引っ提げて、妖魔の群れへと突っ込む。充分に頭に叩き込んであるが、初見も初見だ。
牛頭鬼馬頭鬼の凶悪な群れを切り捨て、頑丈な毛皮で覆われた幾多の封豨、封豕を撫で斬り、青毛犼、狗、獅、騶吾虎を切り刻む、切り刻む、切り刻む、切り刻む、切り刻む、切り刻む!
爆発するような手業と疾駆で走り抜け、切り裂く魔物の臓腑と体液が降り注ぐ中、間断無い発頸と斥力結界で押し返し、押し通る。
立ち塞がる大物を見上げると、宮毗羅蛟龍だろう蛟精が鎌首を擡げ、伸び上がる姿は洞窟内、殺生石基底部側が遥か上方まで抉れているのに沿い、爛々と光る双眸で睨む様が暗視強化で見て取れた。
飛び上がりざま左手の“無明丸”で斬り込みを入れる。そのまま宮毗羅の胴体に沿って螺旋を描くように上へと斬り上がる。
剃刀と侮るなかれ、“無明丸”に切れぬもの無し。
技をもって押し斬れば、この程度の肉塊、輪切りもまた容易い。頭を下に、脚を上の体勢で、螺旋状に引き斬るようにグルグルと天辺まで一気に掻き斬った。
無言のまま逝った蛟性の怪物は、崩れ落ちる鮮魚の三枚おろしならぬ、生蛇の変形おろしで図体がでかい分、洞窟が塞がれるかと思われる程だ。
音を立てて積み上がる肉の残骸に群がる従魔の黄金アロワナは、早速パクついてはいたが、流石にこれを食し切るのは暫く掛かりそうだった。
斬り上がったまま、上空待機で逡巡した。
全階層の隅々まで確認するため打った感知魔法で見れば、運良くトンネル・ボーリングのファースト・アタックを耐えた、ダンジョン内の無傷で生き残った妖物が、全て集まってくるのが分かった。
ダンジョンの出入り口には暴走するスタンピードが逆流して外に溢れ出さないよう、少し前にナンシーの手により消魔ブロックが撃ち込まれている。
ここの妖魔もご多分に漏れず、元を辿ればヒュペリオン文明が遺伝子操作で創り出した使役獣だ。
忌避するものが何かは、ナンシーには良く分かっている。
だがそれも杞憂に過ぎず、何故か外に逃げるものは一匹たりとて居なかった。
太公望の残した術式、斯程のものか……データからは読み取れない執拗さには舌を巻いた。
いや、この場合は破壊した竜核に魔力、神力を注ぎ続ける術式に取り込まれた、九尾の尽きせぬ妖力魂始祖の根源にこそ、驚嘆すべきだった。
長きに渡り育んだ妖魔獣の深層芯部、おそらくはここまで辿り着いた者は創造以来、皆無だったに違いない。
「仕方ないな……」
(エリスっ、ちょっと足止めして貰っていい? やっぱりダンジョン内の妖物、一気に滅却するよ!)
(了解……、ステラ姉、中性子シャワー撃つからクルセイダーズの皆んなを生存結界でくるんであげて)
(分かったわ……)
エリスは自らの特殊装備であるビキニ・アーマーをカテゴリーBレベルの異形コンバット・アーマー、非破壊疾走型多脚戦車に変形換装して辺りを掃討していた。
自動追尾照準システムの超音波カッターや次元消滅榴弾砲で弾幕を張り、遠隔操作のオールレンジ攻撃端末を幾つか射出するところだ。残留放射能ゼロで、透過性と殺傷力だけを高めた中性子ビームの他、何種類かの拡散投射兵器を搭載している。
ただ、充分に打撃力のある中性子線から身を守るためには、それなりに特殊な結界が要る。
一気呵成に殲滅する無属性深淵魔法の禁忌術の構築に入る。
極大魔法を撃つのに充分な魔力は、準備万端すでに突入前に練り上げてある。
イメージで組み上げた異結界の魔術回路に、通電するように魔力を流し込む。
「Ω・深淵司どるハデスの名に於いて」「Ω・黒いゲシュタルトの野に集いし死霊の神は」「Ω・魂魄を繋ぎ止めし因果を解き放つ」
起動式の複合構造立体魔法陣、“解錠”が、かざす手の平の間にゆっくりと回り出す。
一部、詠唱省略も破棄も利かず、高速化も叶わない分、発動に手間取る。
「来たれっ、アビス・ソウルダウン!」
遥か上空、“クミホの北壁”頂上部分より僅かに上の天空に、ダンジョン領域を全て包括する規模の巨大な多層構造魔法陣が確実に、毅然と、出現するのが空間遠視で見て取れた。
やがてそれはゆっくりと下降を始める。
因果律に繋がる以外の有象無象、生けとし生けるもの、端虫から苔類の植物に至るまで、霊的観念上のスピリチュアルなものに至るまでことごとく、全てに死を与えるために……
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遊牧民族の泣き処というか欠点は、棲み家を定着しないが故に文化の熟成がなかなか進み難いと言うことだろう。
現に、祭儀に連なる身ではなかったから、導引の仙道を修めるために天仙、地仙に弟子入りするまで、文字というものの存在を知らなかった。
ましてや花の名前などは、蛮族と呼ばれる羌の民にとっては生き抜くための知恵の範疇ではない。
必要なのは食べれるか、韓医処方としての薬効があるかだ。
石楠花や牡丹を愛でる、華夏を名乗る中原文化とは相容れないものだった。
其れゆえ、蘇候が北方の土方を巡視している頃、付き従った妲己を遠乗りに誘ったときに教わった花の名は、今でもよく覚えている。
小振りなアザミに似たその花は、綿毛塔飛廉といって野趣の中に可憐な趣きがあり、薄紫色の儚げな気色は摘むなどとは思いも至らぬものだった。
然るに、妲己は自分の方から手折られに来た。
象嵌で装飾した羅漢床にはお付きの女官の手により香が焚き込められていた。
匂い立つようなうら若き乙女が肩掛けの披帛を衣桁に掛け、襦裙の上の半臂を脱ぐに至り、紐を解いていく衣擦れの音にいよいよ進退極まった。
想いはあるものの、道士としてタオを極める身が女犯の禁を破るわけにはいかぬ。仕方ない、あまり使いたくはないが閨房術が奥義の性術で煙に撒いて逝かせるか?
だが実際に直面すれば、結局己れに嘘は吐けなかった。
妲己のあまりにも真剣な眼差しに魅入られると、こちらも覚悟を決めざるお得なかったからだ。色香に迷いしこの身が例え妖仙に堕ちようとも……そう思わせる、生涯を掛けるに値する恋だった。
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「妾に、呂望殿と別れろと申しておるのか?」
「妾の方から口説いて契った益荒男を、裏切れと? 身分を捨て、家を捨て、使命を捨てて、共に手を取り合い世事や督責から逃げ続ける道を選んでくれた相手を裏切れというのか?」
「御意……再び戦乱の世が席巻しても良いと、姫はお思いか?」
「っ、それは……」
「姫様は生まれながらに天命を背負っている筈、己れの幸せのみ追い求める生き方が許されるとお思いか?」
幼い頃から白に、大局を見定める目を培かわれ、養われてきた。身分在る者は私生活と公務の分け隔てなど無いのだと諭され、いつしか生きる規範になっていった。
「呂望という男、崑崙十二大師派の門下にして教主元始天尊の直弟子と噂される者、ただ者ではない」
「絶対に姫様に含むところのある筈……うつつを抜かしている場合ではありませぬ!」
遥か夏より以前の時代、三皇五帝の伏羲、炎帝神農と共に語られる蛇身人首の女性神女媧より密命を賜っていると言う白の言葉、ないがしろには出来なかった。
感情の起伏の少ない鉄面皮の千年狐狸精、何よりその神通力は知れば知る程、生半可なものではない。
その昔、天を支える四極の柱が傾き世界が裂けた。
天はずれ、大地は割れ、火災や洪水が止まず、魔獣共が人を襲い食う破滅的な状態となったとき、女媧は五色の石を錬りそれをつかって天を補修、大亀の足を四柱に、黒竜の体で土地を修復し、芦草の灰で洪水を抑えたとされるが、白はその力を引き継いでいると言う。
「姫には、朝歌に行って頂く」
朝歌には今、商王朝第三十代目君主帝辛が威信を掛けて、天を衝く鹿台とそれを取り囲む楼閣群を建設中だと言う。
帝辛は臣下に命じて世界中から珍しい宝物を収集させ、楼閣を豪奢に飾り立てて大庭園を造っている最中らしい。
こんなとんでもない皇帝の慰み者として出仕せよと言うのか?
人身御供も同然ではないか?
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「こんな戯言を信じろと言うのか?」
「信ずるも信ぜぬも、すでに姫君が真意はそちには無い」
「汝が手挟む法具、宝貝は哪吒太子が斬妖剣と見た、足の運びは夏王朝が始祖の編み出した呪的歩行術、反閇の歩法か?」
脆い鉄は悪金、青銅こそ美金、だが斬妖剣は能く撓う万錬鋼でできていた。
白い脚絆の道服のような衣装に袖無しの裲襠甲を鎧っている崑崙方士を睨めつけるが、相手には怯む隙など一切見られなかった。
鷹か鷲のように鋭い眼光、姫様が惚れるのも無理からぬ。
長柄の戈にしては細過ぎると思ったが、巫山戯たことに糸の無い釣り竿をたずさえている。
「ふっ、古神道が道家修験術の真髄、披露してくれようぞっ!」
言うが早いか、望という男、釣り竿を地面に突き立てるや、目にも止まらぬ早技で見たこともない手印を結び出す。
蘇姫の筆跡を真似、白絹に別れの歌を綴って詩に託した。
変化にて姫君の似姿になり誑かそうかとも思ったが、相手は名にし負う崑崙方士、怪しまれぬ筈もない。
さすれば、綿毛塔飛廉を一輪、白絹に添えた。藁に縋ったがそれで騙し通せる程、この男は甘くはなかった……
「身共が妖術ならば、お手前自慢の兵車戦団も虎賁部隊も灰塵に帰さしめるが、それでもよいか?」
「戯けたことをっ、その前に今ここで、白、お前を、九尾を討てば何の憂いも無し!」
「武林が俠客、並ぶ者無き無双の内丹頸力が神をも封ずる、氏は羌、字名は子牙、零落した神格は巫女にあるまじき、女丑、女魃の類であろう、我が業前に散るがいい! 豪乱煌殲席巻無式!」
ああ、この漢、本当に好いな……だが遣らねばならぬ!
「崑崙の小僧が図に乗るなよ、神農、黄帝に並び立つ女媧様が命にて世の平定に身を捧げた身共が真力、しかと見よっ、泰山府君密技、偃月夢渾っ!」
……この一戦にて、呂望も私も深く傷付き合い、その活動と暗躍、戦闘力を大きく制限されることになったのは計算外だった。
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“アビス・ソウルダウン”は一網打尽の死滅魔法、静かに浸透し、等しく逃れられぬ死を与える。
この世の未練も、個々の都合も、勿論破壊衝動や許容できざる悪意も諸々等しく、無関係に、無差別に、無視されて、受け入れざる負えない抗えぬ魂魄消滅の終焉……禁忌術たる所以だ。
今、太公望の組み上げたダンジョンは完全に沈黙した。
残るのは魂の失せた抜け殻だけだ。
肝心の九尾の狐は起きているのか、眠っているのか、気配が揺らぐ感じはしなかった。やはり土地鎮めの儀や、“黄泉比良坂御霊寄せ”が必要か?
口が悪くて済まないが、鈍間なドン亀と化した見届け役達がようやっと合流する。
自覚は無いかもしれないが、まぁ、見届け役だからな……下手に突出されて、深手を負われたら面倒だ。
「あたしの黄金アロワナ達が瘴気を吸い続けてはいるが、殺生石はいまだ毒素を吐き出しているようだ、下手に近づくな!」
これだけの凄惨な現場は初めてなのか、怯えているのか、緊張しているのか力なく頷く4人だった。
それでもリーダーのコナンは少しは気概を見せているようだ。抜剣した抜き身に、気を溜めている。
ピアッシングなどはライカンスロープらしく獣人化しているのはいいが、気圧されているのかイキる筈の獣耳が伏せる様に、折れてしまっている。これでは最初から勝負にならない。
やはり、如何なグループ評価Aとはいえ、言い方は悪いが、冒険者レベルではこの現場は酷に過ぎたようだ。
今の腑抜けた状態のこのパーティを同道したのは、間違いだったかもしれない。
いや、過去を問えばキリが無いし、リンティアは人妻のくせに亭主以外にも股を開く尻軽なクズ女だった自分を恥じて乗り越えようとしている。
皮肉にも過去の不信心な行いが暴かれた今、少なくとも私にはそのように見えていた。
良くも悪くもこれからだな……結果も大事だが、最初の一歩を踏み出すのはもっと大事だ。
戦闘力を問うのではない。怯えるのも構わない。
だが判断を放棄するのは、それは最早戦士とは言えない。
「しっかり見ろっ、リンティア!」
「お前の役目は何だっ! 何も出来ずにただ臆病風に吹かれて縮こまっていることか!」
「見届け役が目をしっかり見開いていなければ、ことの本質を見落とすぞっ」
叱咤が届いたか、リンティアの目に力が戻ってきた。
目の前に埋まる巨大な殺生石の最深部に、相対する。
私は得物専用ストレージから、師から賜った黄金色の戦槌を取り出す。ウォーハンマー“黄金の天誅”はこの世で最も美しい武器のひとつだ。軸はしなやかに細く黄金色に輝いていて、ピックの部分も黄金色の鉱石で出来ている。
素振りをくれると、ビリビリと空気が震える。そのままやおら、弧を描いて一回転、二回転、三回転と速度を上げていき、威力を乗せたコンパクトなスイングが殺生石を叩く。
耳を劈く打撃音が独特な、戦槌術武技トルネード・インパクトにさしもの殺生石にも罅が入った。
「聞こえるかああっ、九尾いいいいいっ!」
我が言霊は、全てを貫く一本の槍となりて惰眠を貪る者を容赦なく叩き起こす。神々も照覧あれ、我が声音は天変地異に等しく地脈さえも揺り動かす。
(…………今は、今は何年ですか?)
地の底から湧き上がる思念にしては不思議なほど、それは澄み渡っていた。
「今はアルメリア歴1914年、中華紀元とほぼ変わらないから、その方が封印されたとする紀元前1100年前後から数えて、ざっと3,000年近くの刻が経っている」
(…………私を呼び覚ます貴女は、誰ですか?)
「巡礼の徒だ、義により難易度別格とされた太公望が術式、“クミホのダンジョン”攻略と殺生石の無効化、白い猪竜たる“九尾の狐”の再封印を請け負った者だ」
(妲己様のお声に似ているような気がします……)
(ド、ロ、シー、ド、ロシー、ドロシー)
何処からか、小さく私を呼ぶ声がする。ふと気が付くと、私の中に棲む多くの歴代のニンリル達、過去に破天荒な宿命を生きた者達の、魂の一人だ。
(確かかどうかは分からないけれど、地母神女媧が、世の平定を願って二対の猪竜を産み落としたと聞いたことがあるわ、とても薄かったけど妲己が私達ニンリルの血筋に連なる者だったとも……)
!!!!!!!、何かの推論が私の中で高速に組み上がって行く。
何だ? だが、まだ何かが足りない。パズルのピースが不足しているような気分だ。
突然の地響きと共に、それは来た。
最初はゆらりと地面が揺れたのが分かった。続いてどーんっという激しい横滑りに同道した冒険者達から悲鳴が上がる。彼等は立っていられないようだ。
やがて地を割り妖魔の死骸も何も彼もを押し除けて、迫り上がる大きくも禍々しい、見覚えありまくる神殿……私の傍若無人な、傍迷惑を考えない眷属の棲む宮代だ。
のそりとケルベロス・ドラゴンが伸び上がり、俺様最強と言わんばかりにこちらを睥睨する。
「何度言ったら分かるのかなあ! 来るときは静かにって言ってあるのに、このバカチン! おまけに呼んでないしっ!」
「狭い穴ぼこの中にデカい図体で来るなんて、常識ってもんが無いよね! いっそのこと崩れる岩に頭でもぶつければ少しは増しになるんじゃないの?」
怒り心頭のまま、突如出現した最強無敵の眷属を罵倒するが、何処か様子が違う。
いつにもまして、辺りを圧し尽くすような迫力だ。
降り注ぐ石塊が覇気のオーラに触れて、一瞬で蒸発していくのが分かる。
(我等は本来、二対揃って本領を発揮する……この白い猪竜は、我のもと番い、別れた婢妾と見知り置くこと、主人に願う)
「はあっ? はああああああああぁっ!」
(主人よ、心外だな……我が妻帯していたらおかしいか?)
「だって、血も涙もない地獄の番犬、ケルベロスだよっ! 狂気の死神、歩く災害、空飛ぶ疫病、絶対に踏み込んではいけない深淵の支配者にして暴君、それがあんただよ……頭に虫涌いてないよねえっ!」
(失敬な、創造主女媧のもとで番いの誓いを立てたし、短かったが蜜月をこのものと過ごした、我にもそんな初々しい……)
(黑っ、もしかするとそこに居るのは黑かっ!)
(もしかしなくても我だ……久しいな白よ、健勝だったか?)
(ふっ、残念ながら、ほとんど寝て過ごしたようだがな)
「……どうやら嘘じゃなさそうだが、なら、何故別れた?」
自分の眷属ながら、その生い立ちを知らないことに今更ながら気が付いた。
えええぇっ、だってケルベロスだよ! おかしいだろう、奥さん居たなんて絶対似合わないって!
三千年前に新婚家庭でイチャイチャって、勘弁してえっ!
(話せば長くなるが、一番は成り立ちだな、我等が力の源は二極、取りも直さず我等の力は万物の混沌に太極を創り出す、陰と陽の互いに引き合い、反発し合うその性質にある)
(だがそれ故に互いに相容れぬ存在、絶対的に真逆な相手と仲良くなれる筈もなかろう)
(黑よっ、……もしやして、身共が聞き間違えでなければ、その方に仕えておるのかっ!)
(おうよ、長きに、……長きに待った甲斐が有ったわ)
短い答えにプリの、彼の感慨が凝縮されているような気がした。
(お顔を、どうかお顔を見せて頂けないだろうか!)
興奮する九尾の思念が私に向かって、吹き付けてくるようだ。
「スター・クルーズ・ターム、SCTと言ってニンリルの一族だけが使う星間航宙術の技術用語がある、確か“プリ”は黒いと言う意味だった、してみるとその方の真名は“シャル”か?」
(!!!!…………)
無言だったが、慟哭するような気配があった。
「暫し待て、今“解呪のペグ”を仕上げる」
「外に出る、ステラ姉、エリス、皆んなを頼む」
言うが早いか、短距離転移で“クミホの北壁”天辺付近の宙に躍り出ると、素体ペグを取り出し、あらかじめイメージで組み立てている多層構造の魔術回路を転写していく。
極大魔術発現のために練り上げた魔力の残量があれば、超威エネルギーの付与も問題ないだろう。
仕上げたペグを投げ撃ち、溶けない万年雪を吹き飛ばした頂上付近の岩肌に刺すや、黄金の戦闘槌で渾身の打撃を打ち込む。
一瞬の光に呑み込まれた後、地中から迫り出した1800メートルほどの一枚岩、埋まった部分も入れると総質量3000万トンの大岩が音を立てて崩れていく様は圧巻だった。さながら大災害のように崩れ行く瓦礫同士がゴンゴンとぶち当たる騒音は百里四方に響き渡り、火山噴火のような噴煙が遥か上空に立ち昇る。
噴き上がる粉塵を避けて距離を取ったが、基を正せば神仙力で創り出されたもの、やがてそれは残滓のように大気へと溶けて行った。
「太公望の怨念がどれ程のものかは知らないけれど、これでもう、誰も脅かすことはできないわね」
皆んなを連れて滞空したステラ姉が側まできた。
「あぁ、瘴気を噴き出す殺生石は無くなった……九尾は」
瓦礫の底に踞るどこまでも白い聖魔獣の姿を、遥か下方に捉えていた。
「九尾はおそらく連れて帰ることになるだろう」
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(その額に頂く御印こそ、仕えるべき“天秤の女神”が証し、一度は道を誤った不肖の身ながら、今度は間違えない……見れば分かる、貴女様が真の主人であること)
(この身朽ち果つる迄、終生お仕えいたします)
こうして傍らに寄れば良く分かるが、白く、白く、神々しいまでに白いこの獣は、美しく、気高く、その双眸は賢者の如く澄み渡っていた。ただ横たわり、その巨体を休めるように踞っているばかりなのだが、その有り様、最早神獣だった。
リンティア達など平伏さんばかりだ。
ふと、瓦礫の間にそよぐ小さな花が目に入った。
「おかしいな? あたしの術式でおよそ生あるものは死に絶える筈なんだが、キク科アザミ亜科属ワタゲトウヒレン? 余り見かけぬ珍しい花だ……」
「この花が生き残っているのは、多分だが、何か因果に連なっているからだろう……誰か心当たりがあるか?」
(………身共の罪の象徴でしょう、呂尚殿と妲己殿が愛を誓われたときに互いに贈られた花です)
(決して万人に好まれる派手な花ではありませんが、私奔しても鄙びた寒村で平凡な庶人として生きて行こうとしたお二人が選んだ花でした……身共の早計がそれを阻んでしまった)
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「この始末……、大山鳴動して身内が一匹とか洒落にならないって、これどうやって歌姫に報告すんの?」
一息付いたエリスがお手上げの仕草で、誰に告げるでもなく独り言ちた。
「まぁまぁ、新しい眷属、ファミリーに仲間が加わるのは目出度いだろう? はっ、はははっ」
乾いた笑いしか出てこない私は寒冷高地用のホワイトガソリン・ストーブ、ホエブスのオプティマス8Rとペトロマックスの大きめのパーコレーターなどをギア収納イベントリから取り出して、お疲れ様の紅茶を振る舞う準備を始めるのだった。
茶葉は我が家のキッチンメイド役のシルキーが持たせてくれた、ダージリンのファースト・フラッシュだ。
長いお話になってしまいましたが、中国絶世の美女“妲己”と同時代を生きた英雄“太公望”が恋仲だったらどうなんだろうってのと、ドロシー達の陣営に新たな仲間が加わる着想で書いてみました
調べてみると中国の妖怪って独特の思想があって面白いですね
戈[カ]=敵を打ち据える動作によって殺傷するのに適した穂先を持つ、古代東アジアのピッケル状の長柄武器(長兵)
東アジアの都市国家世界での豪族間で戦われた戦車戦が、こうした形状の白兵戦用武器が適していた
両手で柄を持って用い、戦車同士がすれ違う時に敵に打ち込んで突き刺したり戦車から転落させる、引っ掛けて首などを斬るといった用法で戦った
反閇歩法=夏王朝初代皇帝は禹といいます、この人の発案した呪術的歩法なので禹歩というそうです
羅漢床=中華風のベッドですね、昼間は寝椅子にもなったそうです
巴蛇=黒蛇、黒蟒〈こくぼう〉とも言い、巨大な大蛇である/海内南経に依ると大きなゾウを飲み込み、3年をかけてそれを消化したが、巴蛇が消化をしおえた後に出て来る骨は「心腹之疾」の薬になるとも記されている
火鼠=南方の果ての火山の炎の中にある、不尽木〈ふじんぼく〉という燃え尽きない木の中に棲んでいるとされ、日本の江戸時代の百科事典「和漢三才図会」では中国の「本草綱目」から引用し、中国西域および南域の火州〈ひのしま〉の山に春夏に燃えて秋冬に消える野火があり、その中に生息すると述べられている
諦聴=一角をもつ獅子のようなすがたをしており、毛の色は金色あるいは青く描かれることが多く地蔵菩薩の乗り物であるとされている/体の各部位は色々な霊獣に似たかたちをしてると語られており、頭は虎、角は犀、体は龍、尾は獅子、脚は麒麟のようだとされてもいる
封豨・封豕=巨大な猪の姿をしており、途轍もない怪力で、乱暴な性格の持主/家畜を襲い田畑を荒らすだけではなく、人間も食い殺し、多くの人々にとって恐怖の存在であったといわれていた、また鎧の様に頑丈な毛皮で覆われている為、普通の武器では全く歯が立たない
青毛犼=一般的には日本でいうところの唐獅子や狛犬の姿をした霊獣として描かれ、人を食べると言われている/明の時代に書かれている「偃曝与談」には形は兔のようで両耳は長く、その尿をあびると血肉は腐れただれるといい、虎や獅子もこれを恐れるとある
三皇五帝=天皇・地皇・泰皇…… 前漢・司馬遷「史記」秦始皇本紀において皇帝という称号を定める文脈でこの三皇が挙げられており、泰皇の「皇」と「帝」号を組み合わせて皇帝としたと伝えられており、注釈である唐の司馬貞「史記索隠」では泰皇=人皇としたり、天皇・地皇・人皇を三皇としてその前に泰皇がいたとしたりする/司馬貞が補った「史記」の三皇本紀〈補三皇本紀または補史記という〉では三皇を伏羲、女媧、神農とするが、天皇・地皇・人皇という説も並記している
女媧=姿は蛇身人首であると描写される文献が残されており、漢の時代の画像などをはじめそのように描かれている/伏羲と共に現在の人類を生みだした存在であると語る神話伝説も中国大陸には口承などのかたちで残されていて、大昔に天下に大洪水が起きるが瓢箪などで造られた舟によって兄妹が生き残り人類の初めになったというもので、この兄妹として伏羲・女媧があてられるが、このような伝説は苗族やチワン族などにも残されている
哪吒太子=道教で崇められている少年神、もしくは中国仏教もしくはヒンドゥー教の民話・説話の登場人物である
托塔天王〈毘沙門天〉の三男である事から哪吒太子、あるいは哪吒三太子とも呼ばれ、信仰対象としては太子爺、太子元帥、羅車太子、中壇元帥などとも呼ばれ、いくつもの尊称がある
蓮の花や葉の形の衣服を身に着け、乾坤圏〈円環状の投擲武器〉や混天綾〈魔力を秘めた布〉、火尖鎗〈火を放つ槍〉などの武器を持ち、風火二輪〈二個の車輪の形をした乗り物で火と風を放ちながら空を飛ぶ〉に乗って戦う姿は「封神演義」「西遊記」などの民間説話や小説などでなじみ深く、道教寺院でもこのような姿で表される
オプティマス8R=1970年代にプリムスから液体燃料ストーブ事業を受け継いだオプティマスは、スヴェア123の構造をベースにストーブと一体化した金属ケースに折り畳んで内蔵可能な構造としたオプティマス8Rやオプティマス111を開発し、スヴェア123共々広く人気を集めた
ダージリン=主に西ベンガル州のダージリン県およびカリンポン県で栽培・生産される、2004年からは「ダージリン・ティー」は地理的表示に登録され、ダージリンまたはカリンポンの特定地域で生産された茶以外は名乗ることができなくなっている/茶葉は紅茶に加工されることがほとんどであるが、茶園によっては緑茶や白茶、烏龍茶などに適した茶葉の生産を手掛けるようにもなった
茶葉は、先端の葉2枚と新芽〈一芯二葉〉が摘まれ、3月から11月までが収穫期であり、4つの時期に区切られる/ファーストフラッシュ〈春摘み〉と呼ばれる最初の旬は、茶樹が冬の休眠を終えて育つ最初の数枚の茶葉から成り、できあがる紅茶は軽くフローラルな香りとわずかな収斂味があり白茶に仕立てるのにも向いている
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