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47.かつての栄光

「フーッ……! お前と話してると頭がおかしくなる。そいつをお前の目の前で殺してやれば、少しは大人しくなるだろう。黙ってそこで見ていろ!」


「おあいにく様。ここからは3対1よ。完膚なきまでにボッコボコに――」


「ハァッ……ハァッ……! ルイ!!」


 レティアとルイが互いに挑発し合っていると、


「ガストとレイラの2人が……殺された!!」


 息も絶え絶えにレオが走ってきた。


 ――ガストとレイラが殺された!?


 レオからもたらされた事実に、俺は衝撃を受けた。

 いくら追放されたとはいえ、つい少し前までは一緒のパーティーメンバーだったやつらだ。しかも、今の俺と同じBランク冒険者だ。2人とも俺が在籍時にはまったく歯が立たないほどの実力じゃだったはずだ。


 ――そんなやつらが2人も……。


「おい、ルイ! 聞いてるのか!?」


「はぁ……なぜ死んだんですか?」


 ルイは興味なさそうにレオに問いかけた。


「レッサードラゴンだ! レッサードラゴンが急に現れて2人を食い殺したんだ!!」


 レオはその時のことを思い出したのか、恐怖に顔を引き攣らせ、わなわなと震えた。


「レッサードラゴン? たしかにそれは危険ですが、あなた達もBランク、倒せない相手ではないんじゃないですか?」


「後ろから不意打ちされたんだ! それでガストが……!」


「はぁ、そもそもなんで戦闘中に不意打ちされるんですか。集中力が足りないんじゃないですか?」


「ぐっ、それは……! 少し別のことに集中していただけだ! ルイ、お前こそ苦戦してるようじゃないか」


「別に……苦戦なんてしてませんよ。まぁ、予想とは少し違っただけで特に問題なんてないですね」


 ルイは強がりなのか、レオには先ほどまでの怒りに任せた態度とはうってかわって冷静に話していた。


「まぁ、いい。どの道『勇猛な獅子』は俺以外いなくなってしまったからな。ルイ、まずはお前の目的を手伝ってあげよう。その後に俺に協力してくれよ」


「……わかりました。じゃあ、まずは――あのクズを殺しましょうか」


「あぁ、無能を殺そうか」


 2人はなんでもないように言った。


「……なんでレオまで俺を殺そうとするんだ?」


「は? あぁ、そういえば言ってなかったな。俺は一時的に『勇猛な獅子』と行動を共にしてるんだよ。お互いの目的を達成するためにな」


「目的……」


「ルイはお前を殺すことが目的だそうだ。ハハッ、《剣聖》の弟に命を狙われるとはお前も相当運がないな。『勇猛な獅子』はAランクパーティーを目指していたんだがな……こればりは嘆いてばかりいてもしょうがない。俺がAランクに到達することが彼らの弔いになるだろう」


「ほんと、ロクでもない理由ね。あんたたち、そっくりだわ。卑怯で性格が悪いところとかね! ほんと気持ち悪い」


 レティアは彼らの目的が酷いものだとわかると、強く嫌悪したのだった。


「……ルイ、君の婚約者は少し礼儀がなってないようだね。彼女にも躾が必要なんじゃないか?」


「彼女に手を出すことは許しませんよ。――俺以外はね」


「そうか。では、無能を始末してから君が躾けたまえ」


 レオはそう言って2本の剣を抜いた。

 《双剣士》――ぎりぎり『特殊スキル』ではないものの、Bランク冒険者のマクシムが持っていた《剣豪》よりもさらに上位であり、非常に強力なスキルだ。

 このスキルのおかげでレオは、これまでの相手に無敗を貫いてきたのだ。


「行くぞ、無能ッ!」


 レオは俺に向かって一直線に走り、


「――【エアハンマー】!」


「――ぶべぁ!?!」


「はぁ、油断しすぎね。3対2なのを忘れてるのかしら?」


 スキルを使ったのは俺ではなくレティアで、勝手にタイマンと勘違いしたレオを《風魔法》で思いっきり顔を横殴りにしたのだ。


「ぐァ、歯が……っ!? クソッ、卑怯だぞ! 男同士の戦いに割り込むだなんて、これだから女はッ!」


 レオの前歯は折れ、血がだらだらと口から溢れ出ていた。


「あら、そんなの知らなかったわ。それに女だからなんなの? もっとその歯を折ってあげようかしら?」


「おのれぇ……ッ! おい、ルイ! 相手がヤル気になってるんだ! こっちが手を出さないなんてできないぞ!!」


「……まぁ、しかたないですね。多少痛い目に見せるくらいはいいですが、決して傷モノにはしないでくださいよ。あ、そっちの雌奴隷は別にどうなってもいいんで」


「ほう……」


 レオがメルに目を向けると、厭らしい笑みを浮かべ、舌なめずりした。


「奴隷にしてはなかなか()()()()を持っているじゃないか。それにたしか鬼人族だったな? フフ……よし、貴様を新しく『勇猛な獅子』に迎えいれてやろうではないか。しかも、俺の女としてな!」


 レオはいきなりわけのわからない宣言をした。


 ――こいつ、頭おかしいのか?


「……気持ち悪い」


 その傍若無人な言動に、メルは俺が見たことないほどの嫌悪感のこもった顔つきでレオを睨んだ。


「な!? この俺が気持ち悪いだと!?」


「そりゃ気持ち悪いでしょう……あんたたち2人とも、なんでそんなに女性に対して気持ち悪いの? 本当にアルゼを見習ってほしいわ」


「レティア様の仰る通りです。アルゼ様を見下す前に、まずはご自身を見直したほうがいいと思います」


 血を流し、歯は折れ、服はボロボロになり、2人の女性に嫌悪される彼らの姿は、かつての栄光ある面影は一切なくなっていた。

お読みいただきありがとうございます。


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