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第四十五話 終わり?

 悪徳商人のマウリシオ・ギンザーニが隣国サランヴラナ王国で処刑されたそうだ。理由までは知らされていないが大方の見当はつく。


 ヤツは暖房用木箱がシュロトヘイム王国の専売となったことを知り、隣国での販売を画策したのだろう。しかも高値で売るために王侯貴族に話を持ちかけたに違いない。


 だが、実際に持ち込んだ暖房用木箱は全く機能しなかったはずだ。何故ならアレには仕掛けがしてあったからである。シュロトヘイム王国の国境を越えて他国に渡った場合、一時間以内に王国に戻らなければ木箱の中の魔石が俺の許に瞬間移動で戻ってくるというものだ。


 現にマウリシオに売った暖房用木箱五百台分の魔石は俺のアイテムボックスの中にある。さすがに処刑されるとまでは思ってなかったが、俺の言うことを聞いていればこんなことにはならなかったのに。欲をかいて王侯貴族なんかに売り込もうとするからだよ。自業自得、身から出た錆は自身の命をも奪う結果をもたらしたというわけだ。


 ちなみにイートンの魔石が値上がりしたのも俺の仕業である。実は日程調整と称した五日間で、温泉町ユノトスと周辺にある生活ギルドの全てでイートン魔石の権利を買い占めておいたのだ。それをどうしても売ってほしいという客が現れた場合、売値は十倍の大銀貨三枚としたのである。


 ただしこれはマウリシオ限定の措置で、もちろんユノトス伯爵の了承も取り付けてあった。


 ただ、彼がいなくなったことで困ってしまった事実もある。それはギンザーニ商会が担っていたユノトス伯爵領への生活必需品の供給だ。高くてもなくてはならないこれらの品まで辺境の地は彼に頼らざるを得なかったのである。それがストップしてしまうと領民の生活が立ち行かなくなってしまう。


「というわけで、これまでギンザーニ商会から仕入れていた生活必需品のリストが欲しい」


 俺は温泉町ユノトスの生活ギルドを訪れた。伯爵の紹介とあって、通されたのは二つある応接室のうち豪華な方、主に貴族を相手にする際に使用する部屋である。それなりに装飾も華やかで、ソファはかなり座り心地がよかった。


 応対はギルドのユノトス支部長マルチェロ・カルレーイ四十八歳と、二十八歳のエルアナという仕入担当部長だ。


 エルアナは面長で顎が細く、口も小さくて片眼鏡をかけており、第一印象はやり手の女性という感じ。もちろん見た目通りとは限らないだろうが、三十前の若さで仕入担当部長の職に就いているということは、それなりの仕事を期待してもいいのではないだろうか。


「品目は多岐にわたりますが、塩が占める割合がほとんどですね」

「塩?」


「この領では岩塩も含めてほとんど塩が採れないんです。そこで他領などの外部から仕入れるしかないのですが、かなり足下を見られてましたね」

「物価が高いと言われる王都のおよそ百倍の卸値だったが、呑むしかなかったんだ」


 支部長が苦虫を噛みつぶしたような表情で呟く。その百倍にも及ぶ塩の価格は、ユノトス伯爵からの援助でなんとか領民の手に届く範囲に抑えられていたそうだ。


 他の商品にしてもまんまと騙された形でギンザーニ商会に専売権を与えてしまい、内情は火の車に近かったらしい。あの時期はずれのお披露目祭も、そんな中で領外から資金を集める苦肉の策だったそうだ。確かにジェリカのお披露目にしては、彼女が嫁いでからずい分経っていたしな。


「塩を仕入れれば他はどうにかなりそうか?」

「はい。マウリシオ氏が亡くなったことによりギンザーニ商会の専売権が解除されますので、今後それらの品は当ギルドの扱いに出来ます」


「ただ辺境の生活ギルドだからな。人手が足りん。出来ればレン・イチジョウ殿に商会を立ち上げてもらえると助かるのだが」

「商会か。面白そうだな」


 新たに人を雇うのもいいが、モナを番頭に据えてコレッタたちに手伝わせるというのもアリだろう。


 この話が出てから間もなく俺は王都に行き、正式にイチジョウ商会を立ち上げた。会頭はもちろん俺。番頭はモナとして相談役にエルフのエルンスト、コレッタたちは従業員だ。数年後には現在学校に通っているオリヤンとペールも戦力になってくれることだろう。


 そうして俺のイチジョウ家はシュロトヘイム王国で大きな躍進を遂げるのだった。


——あとがき——

本作はこれで完結と致します。

ネタ切れってわけでもないのですが、リアル多忙が激しくなりそうなので区切りをつけます。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

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