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第二十七話 魔動車を

「あ、旦那様」

「「「お館様」」」

「「「「ただ今戻りました」」」」


「お腹空きましたよね。すぐに食事の用意をしてもらいますので少しお待ち下さい」

「四人とも暑かっただろう。休んでいいから」


 馬車を買おうと決めたのはこの時だった。買い物に行ったコレッタたちが市場から大きな荷物を抱えて帰ってきたのを見たからだ。


 辻馬車を使っても構わないと言ってあるのに、彼女たちは恐れ多いとなかなか利用しないのである。


 しかしそこで俺はふと考えた。馬車もいいがこの世界で手に入る物は乗り心地があまりよくない。貴族の物でもそう変わらないとモナの父親から聞いていた。


 ならばいっそのこと魔力で動く車、魔動車を造ってしまえばいいのではないだろうか。そうすれば馬を飼う必要はないし御者もいらない。


 運転も車内で出来るので、暑さや寒さに加えて雨風も気にする必要はなくなるだろう。操作方法を簡素化して皆に教えれば市場に通うのも楽になるはずだ。


 荷台には魔法のバッグをいくつか載せて、大量の買い物でも一度で済ませられるようにする。この際だから皆に一つずつ魔法のバッグをプレゼントすることにしよう。この程度のこと、何故もっと早く思いつかなかったのか。


 そうとなればまずは魔動車の製造だ。イメージは乗用車というより小型の軽ワンボックスカーにした。大きいことはいいことだが、コレッタたちはそれほど身長が高くないので、ボンネットがあったり車高が高かったりすると運転しにくいと思われたからである。


 そうだ、どうせなら浮かせて走行させよう。地上から二十センチも浮けばどんな悪路や水上でも走れる上に、揺れを軽減させるためのサスペンションも不要になる。まあ万が一浮遊出来ないような状態に陥った時のために付けてはおくけどな。当然接地しての走行も可能だ。


 ちなみにもっと高く飛べないかと考えたのだが、高度を自由に制御するのが難しかったため断念するしかなかったのである。


 ハンドルは地球の多くの自動車のような円形ではなく、飛行機の操縦桿タイプにした。奥に押すと前進、手前に引くとブレーキがかかる仕様である。足で操作するアクセルとブレーキでは、この世界の人にはハードルが高いと考えたからだ。


 前進とバックはダッシュボードに取り付けたシフトレバーの操作で切り替える仕組みにした。オートマによくあるT字型のアレと言えば分かりやすいのではないだろうか。


 さらに重くならないように魔石から魔力を供給してパワーステアリングも実現。もちろんエアコン木箱と暖房用木箱の二つを搭載し、快適さも追求する。


 速度はいくらでも出せるが、基本は最高時速十キロとしておいた。道が舗装されているわけではないし、馬車の速度は人が歩く速さと変わらないので、日本のように時速四十キロだの六十キロだので走ると危険なのだ。


 バックはさらに低速の時速五キロに設定。速度のリミッターは簡単に変更可能で、万が一魔物に追われた時などのために前後進とも時速百キロまで増速出来るようにした。バックで時速百キロは返って危ないだろうが念のためである。


 窓ガラスには防汚と自動洗浄機能を付け、雨天時のためのワイパーも装備。車体を不壊の魔法で強化し、攻撃に対してはリフレクション、反射させる仕様にした。つまり物理でも魔法でも攻撃したら自分に跳ね返ってくるということだ。


 また万一の時も乗員はエアバッグで守られる。エアバッグは開いた後は自動で縮み、割れない限り何度でも衝撃を吸収してくれる優れ物だ。このように色々な機能を盛り込んだので、駆動用の魔石はラウドスネークの物が四個必要となってしまった。


 イメージが固まったところで魔法で製造、完成だ。まずは興味津々で俺の作業を眺めていたコレッタたちを乗せて敷地内で試運転。センターコンソールがないので座席は三人がけシートが二列の六人乗りである。


「旦那様、これは何ですか?」

「魔動車。馬のない馬車って言えばいいかな」

「まどうしゃ……?」

「まあ乗りなよ」


 四人が乗ったところで俺は操縦桿を前に倒して車をスタートさせる。するといっきに車内で歓声が上がった。ちなみにちゃんとドアを閉めないと動かない安全設計だ。シートベルトもあるが、今はまだ締めなくてもいいだろう。


「は、走ってます! 旦那様、走ってます!」

「凄い凄い!」

「馬がいないのにどうして?」

「たのしー」


 数回敷地を回ったところでエルンストたちと交代。彼らもきゃぴきゃぴこそしていなかったが、コレッタたちと似たような反応を見せてくれた。満足だ。


 ところが試運転を終えたところでエルンストが気になることを言い出した。


「若様、まずは魔動車の完成おめでとうございます」

「ありがとう」


「ただ、これはあまりにも画期的と言いますか、市場に行くと目立ちすぎる気がします。加えて国王陛下に目を付けられそうと言いますか……」

「あー、それはありそうだな」


「さらにこれが普及しますと、モナ嬢のお父上が職を失いかねないと思います」

「売値を金貨千枚とかにしたらどうかな。その値段でも買うというのはあの王様くらいじゃないか?」


「それをコレッタたちが市場に行くのに使わせるのは余計に危険ではないかと」

「うーん、確かに狙われる可能性はあるか」


 ドアや荷台のハッチの開閉を認証性にしても、車外にいる時に襲われたらどうしようもない。いい考えだと思ったんだが、やはり馬車を買うしかないか。いや待てよ。まだ手はある。


「とりあえずもう一台、少し大きめの魔動車を造ることにするよ」


 そうして出来たのがラウドスネークの魔石十個で駆動するマイクロバスサイズの魔動車だった。仕様は定員を十五名にしたのと、最高時速を百五十キロに上げた以外は最初の軽ワゴンタイプの物と変わらない。定員が一般的なマイクロバスより少ないのは、王様用の特別シートと王族用のシートを設置したためだ。


 なお、王様専用シートは前方に向かって左側の最前列。運転席は右側だから眺望が遮られることはない。ほら、車に乗った時ってなるべく前を見たいじゃん。あの好奇心旺盛な王様なら尚更だと思うんだよね。


「これを王様に献上する」

「献上? 売るのではなくですか?」

「ああ。その代わり頼み事を聞いてもらうつもりだ」


 翌日、冒険者ギルド経由で王城に手紙を届けてもらう。再び王様を呼びつけるわけだ。軽く煽るだけの内容にしておいたが、あの王様なら一も二もなくやってくるに違いない。


 そして思った通り、五日後にまたもや大勢の護衛を引き連れて王家の馬車が到着するのだった。

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