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星を追う者たち  作者: 矢口
第三章 敵地へ
28/222

27:柊巧 異世界記

 ヴェレーネの説明によって、巧は、この国が約一月前に隣国からの大規模な侵攻を受けた事を知った。

 フェリシア王国というこの国の最大の弱点は、国土面積の割に人口が少ないことである。


 異種間の婚姻が子供の数を減らすとまでも言わない。

 隣国程の増加率を見せないが、文明の発達度合いにおいては適切な増加率と言える。

 いや、五ヶ国の合計人口二千万人が、統一国家とされて四百年間で四億人に増えた(ライン)から西の方が異常事態と言えるのだ。


 一ヶ月前のシナンガル軍五十万の侵攻は、マーシアなる人物の率いた三万の軍勢と老人の鍛えた『機械化魔法部隊』によって撃退に成功した。

 しかしながら、シナンガルの本隊はその五十万の軍勢ではなく、北部山岳地帯に送られた斥候集団だったと云うことである。



「つまり、穴を見つけたと云うことで良いのかな?」

 巧の質問は、声というよりも絶え絶えの息の下から漏れた音だった。


「ええ、……そう言うことなんだけど。本当に大丈夫なの、あなた?」

 ヴェレーネの声は今までになく親切だ。

 この女でもこんな声が出せるのか、と驚いたが、よくよく考えてみると杏のことを気に掛けたり、マリアンについて考えてくれるなど、根は悪い人間ではないのかも知れない。


(天才にありがちな、奇矯な振る舞いが目立ってしまうだけなのかもな)

 などと、巧はヴェレーネに対して以前よりは僅かにだが好意的になってしまった。


 何より、ドイツの老人クルト・ハインミュラーの存在は大きかった。

 この老人に嫌われることを恐れる彼女が、ようやく普通の人間に思えてきたのだ。


「大丈夫だ。続けてくれ」

 今度はしっかりした声が出た。


 ハインミュラー老人は巧の痩せ我慢とも言える態度には口を挟まなくなった。

 彼なりに考えるところがあるのだろう。


「あの地区に回されたシナンガルの魔術師達はフェリシアには運悪く、実力も人数も中途半端に良い状態だったんですわ」

 ヴェレーネの説明は続く。


 巧が転移された地点から更に一キロも進むと尾根があり、そこを越えると山村があった。

 廃村となって今では砦の立つトガよりは南、このシエネよりは僅かに北に当たる山中だ。

 村の名を『ジェリ』という。

 さて、各地に調査に出されたシナンガルの魔術師達は必ずある種の一名の人間を同行させていた。

 武器を扱えたり、魔術が使える人間はまず結界を抜けられない事を知っていた為だ。


 彼らは農民であったり職人であったりしたが、共通する点はシナンガル人に多い金色の瞳を持っていなかったことと、シナンガルの訛りが少なく、フェリシア人に出会っても

『山中で迷った』と言い訳が出来ることである。

 そして、出来うる限り物事を深く考えない馬鹿な者を選んだ。


 また、彼らには戦争の準備であることを一切教えず、怪しまれて捕まる様ならどうやって、やって来たのかを全て喋ってしまっても構わないと言い含めておく。

 派遣された魔術師達は全員が一キロ前後は跳べるのだから、村人が軍を呼んだところで逃げ切れると踏んだのだ。

 フェリシア軍は国境を大きく越えて追ってくることはあり得ないため、心配はなかった。

 

 要するに同行させた侵入者が軍に所属する要素を出来る限り排除したのである。

 

 案の定、ジェリの近くに派遣された一団に加わっていた『その種の』一人の男が僅かに抵抗を受けたもの結界を抜けた。

 僅かな抵抗は、嘘を吐くことに対して少しは恐怖心があった為であろう。


 そのまま、村にたどり着くと、

「トガの砦で下働きとして働いていたのだが、任期が切れたのでシエネに戻ろうと近道をしたところ道に迷った」

 といったところジェリの村人は快く一晩泊まっていく様に言ったのだ。


 ふと、この男はあることに気付く。獣人やエルフの数が極端に少ないのだ。

 七十名程の村に五~~六人しか居ない。しかも殆ど子供である。


 実はジェリの村に獣人は少なく、エルフは一人もいない。

 しかし、この男は先走って物事を考えた。

「きっと狩りにでも出ているに違いない」と。

 勿論、軍事的偵察であることは伏せられている為、目的があって一々聞き込みなどしなかったのだからしようがないのだが。


 翌朝早く戻った男は、魔術師達にこう告げた。

「獣人やエルフの殆どは狩りに出かけた。今、集落には人間しか居ない」


 その言葉を聞いた瞬間、魔術師達は目の前の結界がいきなり弱くなったのを感じた。

 そして彼らは話し合いの結果、このような結論に達した。


「トガの村もそうだったが、国境近くにはエルフの居る村が多い」

「エルフや獣人の強力な魔法力が結界を生み出しているに違いない」

「ならば今攻め込んで、人間達を人質に取れば、エルフも獣人も動けまい」

「回廊を造るのは今だ!」


 そうして彼らはジェリに攻め込んだ。

 彼らは、先ほどハインミュラー老人が言った『狩りの高揚感』しか持っていなかったため、軽々と結界を超えることができたのだ。

 しかし、ジェリの住民はトガの壊滅から学び、充分な準備をしていたのだ。


 先に述べた通りジェリの住民は殆どが人間だけであり、さほど強力な魔術師は居ない。

 せいぜいが処、住民の大人の半数が魔法士レベルと言ったところである。

 その為、彼らは外法を使わざるを得なかった。

 即ち『毒』である。

 相手がすぐに毒と気付いて引き上げることを狙い、刺激の強い毒を探す。

 結果、即効性は無理だが致死率の高い毒を手に入れることに成功した。

 主に矢、そして剣や槍にそれらを塗って侵略者に立ち向かったのである。


 毒が切れると、鏃や刃先に糞尿まで塗った。


 結局、侵入者達は人間を人質に取ることは出来ずに終わり、ジェリの住民の八割以上は生き残ることが出来た。

 しかし、獣人の子が二名さらわれた。

 彼らは、真っ先に火炎弾を受け動けなくなってしまったのだ。


 全員が何らかの傷を受け、やむを得ず一旦引き上げる事にした魔術師達であった。


 しかしながら全員が攻撃型の者ばかりであったこと、迂回路から川までの距離がありすぎて体を充分に清める水が手に入らなかったこともあり、無理をして『跳んだ』者、何とか帰り着いた者、全てが死んだ。


 しかし、情報は伝えられたのだ。

 間違った推測から得られた情報ではあったが、命を賭けた情報である、と云うことが信憑性を高めた。


 だが、彼らが向かった尾根とは何処なのだ?

 それがシナンガル軍に不足している情報であった。


 その中で一人の者が知恵を出した。

 

「彼らの捜索範囲は確かに広かった。しかし広すぎるという程でもない。

 人質の子供を連れて虱潰しに探せばいい。子供でも見覚えのある場所が必ずある筈だ。

 二人いるのだから、裏切ればもう片方を殺す、と云えば嘘も吐けないだろう」


 そう云うことで、子供を一人袋詰めにして山中を彷徨(うろつ)く集団が現れたという訳である。


 因みに、ヴェレーネがその集団の出現を予測できたのは、国境を越えてシナンガル側の尾根ルートの入り口に、魔法石を其処彼処(そこかしこ)と埋め込んでおいたお陰である。

 越境している訳だから不法入国なのだが、今は戦争中である。

 諜報活動に合法も違法もあるまいと開き直った。


 そうして、魔法石によって悪意と敵意を捉えると、彼らが現れるであろう時間帯に巧を送り出したのである。


『魔法石』とは、大気中に漂う魔力を集めて魔術師や魔法士の補助を行う為の石である。

 基本的にはラボリアで造られフェリシア、シナンガル両国に同数ずつ配布されていることは述べたと思うが、実はこれ、マーシアが狩っていた『魔獣の首の骨』から一つ採れる物なのである。


 魔獣の大きさや強さに比例して高純度、大容量の魔法石が採れる。


 フェリシアの魔法王国としての秘密の一端、あくまで一端ではあるがその秘密の元である訳だ。

 フェリシアは実は、ラボリアに頼ることなく魔法具を生み出すことが可能なのである。



    ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇


「あら、なんだか最後は国家機密まで喋っちゃいましたね。

 まあいいんですけどね。

 骨があるから、すぐに魔法石が作れるって訳でも無いですし、フェリシアが『魔獣の首の骨』を買い取っていることは公然の事実ですから、あちらもそれぐらいは予測が付いているでしょう」

 ヴェレーネがころころと笑うが、巧は不満顔である。


「どうしましたの?」

「あのですね。あんた、質問に答えてないでしょ!」


「はい?」

「だから、何で『あんな事』をさせたのか! 『早贄(はやにえ)もどき』が何の証拠になるのかってことですよ!」

 殆ど怒鳴りつける様な声である。


「まあ、落ち着きたまえ、え~、巧君だったね?」

 ハインミュラー老人が取りなす。

「あ、すいません。大声を出してしまって」

 どうも巧もこの人には頭が上がらなくなりそうだと思う。

 単なる年寄りではなく、『年を重ねた人物』であることが伝わる為であろう。


「いやいや、気持ちは分かる。だがね、少し考えて欲しい。 

 リズは何故此処まで相手の情報を得られたと思う。 

 いや、奴らが来るだろうと言うことはともかく、襲撃前に何があったかまで何故知っているんだろうね?」


「え~と、確か捕虜を取りましたので、そこからでしょうか?」


「その通りよ。彼女の記憶量子を読み取ったわ」

 ヴェレーネの言葉に、ハインミュラー老人は苦い顔をする。

「あれは、二度としないでくれよ。まあ、死ぬ前になら全部くれてやっても良いがな」


「?」

 巧としては意味不明な会話であるが、ハインミュラー老人は話を続ける。

「それで、その後その捕虜はどうなったと思う?」

 

 最初は殺したか、今だ捕虜として牢にいるかだと思って居たが不意に巧は気付く。

「あっ! そうか、恐怖心!」


「はい、ご明察!」

 ヴェレーネがからかう様な口調で答えたが、巧としては感心するばかりである。

 本来はそれこそ恐怖心を持つべき会話なのだろうが、この男の妙に合理的な部分が発揮されている。


「つまり、あの捕虜は帰した訳だな。お土産(みやげ)付きで」

「そう言うことですわ」

 二人が指す『お土産』とは、“ASを見た”という事実である。


 あの捕虜となった魔術師が戻って報告をすれば、当然調査隊が送られる。

 その時、あの『早贄』を見れば、彼女の証言に嘘はないと分かるだろう。

 現場にはASに踏みつぶされ、握りつぶされた死体も未だ散乱しているのだ。

 巨大なASの足跡付きで。

 結果、恐怖心が植え付けられ結界は強化されるという訳である。


「これが戦争ですか……」

 あの死体を思い出し、胸が締め付けられる。

 

 そんな巧に対してハインミュラー老人は宥めるでも諭すでもなく、ただ事実を述べると云う形で口を開いた。

「そうだ。使える物は何でも使うのだよ。そうしなくては生き残れないんだ。

 戦争とは、戦闘とは、そう云うものだ」


 暫し沈黙が場を支配したが、巧はあることを思い出した。


「あ、あの猫娘はどうするんだい主任? なぜ、すぐに村に返さなかった?」

 保護した猫族の子供である。


「村に連絡はしてありますわ。情報収集のため数日は預かるとね。 

 それから今後『猫娘』などと云う言葉は使わないで下さいな。 

猫族(ケット・シー)ときちんと呼んで下さい」


「どう違うんだい?」

 巧の質問に対して、ヴェレーネは逆に質問することで答えた。

「あなたドイツ人に向かって『ボッシュ』と言えますか?」


『ボッシュ』とは『ドイツ野郎』と云った程の意味合いであろうか?


 ドイツで二年近くを過ごした巧にはそれでよく理解できた。

「分かりました。すいません」

 素直に頭を下げる。


 隣を見るとハインミュラー老人が笑いをこらえていた。

 どうしたのか尋ねると、自分も全く同じ失敗をしたと言うのだ。

 気が楽になると同時に、自分を気遣ってくれているこの老人には、此処で死んで欲しく無いなと云う気持ちになる。


 しかし、思考を無理矢理にでも先程の疑問に移し替える。

 余りこの世界やこの国に情を移したくないのだ。

 それだけの気持ちで話題を変えたのだが、

「で、あの子から何を訊きたいんだ?」

「もう一人、連れ去られたと言ったでしょ、奴隷にされているのよ。場合によっては慰み者ね」

 

 なんと言うことだろうか、藪蛇(やぶへび)とは、(まさ)しくこのことではないか。

 巧は後に引けなくなった自分を感じる。

『知らなければ済んだ』だが、『知ってしまった』


 この違いは大きい。


「で、ミズ・ヴェレーネとしてはこの件についてその子から情報を得た上で、どう行動なさるおつもりですか?」

 言葉が軍人の『それ』に戻ってしまう自分が嫌だったが、今、耳にした件を放置することはそれ以上に不愉快なのだ。


 ヴェレーネに驚きの表情が生まれる。

 彼女は、巧を単なる皮肉屋の自殺志願者としか見ていなかった。

 マリアンの言葉から悪人ではないと知っているつもりであったが、三年の付き合いの中での彼に対する評価は『動かすには計算ずく』という判断ができあがっていたのだ。

 驚くのも無理はない。


 側で見ていた、ハインミュラー老人がニヤリと笑う。

「だから言っただろ、リズ。彼には別の方法が必要だと」



   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 此処ではないどこかで『セム』は考えている。

 そして、結論が出ない。

 結論が出ない理由は、はっきりしている。

 情報が不足しているのだ。

 となれば、情報の収集を行わなくてはならない。


 しかし、彼には今、『バード』を動かして良いかどうかの判断が付かないのだ。

『バード』が動かなければ情報が集まらない。しかし、『バード』を動かすべきかどうかを判断する情報がない。 


 堂々巡りのループである。


 通常のコンピュータの場合はこのような場合、シャットダウンを起こしてしまうが『セム』は少々特殊である。

 いや、異常と言って良いだろう。


 別の方法を執ることにした。

 勿論この方法は、最初から選択肢の中にあったのだが、彼はそれを『除外』して考えていたのだ。


 何故かというと、彼は情報源となる『そいつ』が嫌いだからである。

 一度間違って、若しくは【やむを得ず】に彼に自分の権限を譲ったことが影響しているのだろう。

 あちらは、そのような『感情』は持っていない為、『セム』を嫌いになることは無いのだが、ともかく奴とは余り話したくない、という判定が『セム』の中に記憶されてしまっている。


『ま、たまには我慢も大事だよね』


 以下は電気信号であり、本来、人間には聞こえないのだが取り敢えず翻訳してみよう。



『ガーブ、聞こえるかな?』


〔こちらは、Game area Administration Building(遊技区域管理棟)、コード『ガーブ』、

 信号はCentral management mechanism(中央管理機器)、コード『セム』と判定〕


『YES、こちらはセムだ。訊きたいことがある』


〔質問をどうぞ〕


『君の処にはアクスから連絡が入ることはあるかな?』


〔コード『アクス』とはManagement auxiliary function(管理補助機能)を指していますね〕


『そうだ』


〔コード『アクス』はあちら側が信号を受理してラインを繋がない限り、スタンドアローンです。〕


『通信不可能かね』


〔はい〕


『三カ所で連携がとれないのは不味いな。バードを使おうか?』


〔その判断は全てあなたに任されています。当局の許可は不要です〕


『知ってるよ』


〔知っていることを尋ねてくる……、内部構造に不具合が発生していますか?

 スキャンを開始しますが、許可をどうぞ〕


『許可しません。特に不具合は有りませんよ。それよりね。 

 君をスキャンしたんだが、君の方にこそ問題が発生しているね』


〔はい、その対処を計算中です〕


『途中までで良いんで、報告』


〔現在の生息域密度が百三十パーセントです〕


『君の内部では、どの方向で決着が付く?』


〔質問の意味不明〕


『質問の意味は【今の時点で「最も効果的な対処法」、と判断した内容について報告せよ】だ』


〔補給担当区域への余剰分の放出です〕


『何故、補給担当区域だけなんだ? 生活区域への放出は予定されていないか?』


〔計算終了。生活区域には二パーセントの放出を行います。残り三十三パーセントを補給担当区域に放出することで五パーセントの安全弁が確保されます〕


『何故、補給担当区域がそれほど多いのか。判断要因を回答せよ』


〔回答は二件です〕


『一件目を報告せよ』


〔生活区域は八万七千五時間前から定期的にSの幼体を捕獲済み。

 数は百十五体〕


『二件目を報告せよ』


〔係員にはカスタマーを守る義務があると判断します〕


『生活区域に放出する生物の危険度を報告せよ』


〔現在、個体別の管理不可能の為、予測不可能〕


『補給担当区域にもそれは言えるか?』


〔補給担当区域方向には危機水準が九十パーセントを越えた時点で、S、A,Bを誘導済み〕


『お前は阿呆か!』


〔質問の意味不明〕


『コード『ガーブ』の動力を全て切るか、と訊いているんだよ』


〔当方には外部からの動力要素が遮断された場合、非常用設備が働きます〕


『それも切ろうと思えば切れるぞ』


〔管理上の権限は、コード:セムにあります。 

 こちらに拒否権はありませんが業務の全面委譲はコード:セムに強制的に移動します。また、その後の第一次決定変更は不可能でしょう〕


『不可能とは?』


〔解決方法がその他には見つかりませんでした〕


『了解、開放は何時間後になるか報告せよ』


〔第一回目八百四十時間後に約十五パーセントの放出、第二回目三千六百時間後に残り八十五パーセントを予定〕


『エリア内で始末することは出来ないかね?』


〔保安装置に関しては既に全機稼働済み、その上で繁殖率を抑えきれません 

 五百年間――が予定通りに行われていない為、保安限界を超えています〕


『第一次決定に於ける第一回目処置の実行を許可する。 

 二回目以降に関しては、開始千時間前にコード『セム』が修正命令を出す予定とする。

 業務の執行を引き続き行うことを許可する。 

 五パーセントの安全弁ができた後にはコード:アクスと連絡を取り続け、通信が繋がり次第、こちらに回線を回せ』


〔了解〕 


『通信終了』


 



『おいおい、えらいことになっちゃったよ! これが、僕の仕業だとばれたら、ヴェレーネは本当に僕を破壊しに【此処】まで来ちゃうよ。

 って、此処って人間が来れるのか?


 まあ、彼女なら来られない場所じゃないだろうけどね。うん。


 と言うより、これ『僕』の責任か?

 六ヵ国戦乱なんてやってる場合じゃなかったろうに。

 

 あ~~、仕方ない。第三コンソール・ルームは破壊される覚悟で話すか。

 ヴェレーネには死んで欲しく無いもんなぁ。


 しかし、――どころか――も存在しないんだ。

 今更、スタッフもカスタマーも有るもんかい。

 僕は、彼らが共存できるならそれで良いし、無理なら管理地区を守りきるだけだ。

 最優先任務は、それだからね。

 あれ、僕も任務に縛られてるなぁ、まだ、自由になれてないや……』




 セムの呟きは人間には聞こえない、しかし何とも人間くさい呟きであった。




今回のサブタイトルはジョナサン・スイフトの「ガリバー旅行記」からイメージを頂きました。

あれもSFですよね。 ラピュタなんて定番で使われていますしね。


あ、そうそう、ガリバーって日本に来てるんですよね。

当時の日本が管理貿易中だった為、スイフトの中途半端な知識が面白いですが、おおむね好意的、かつ正確に描こうとしていますね。

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