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星を追う者たち  作者: 矢口
第九章 激戦区一丁目一番地
185/222

183:絡み合う部品たち

『コード“セム”より、コード“ガーブ”へ、 受信できているかな?』


〔yes こちらはコード“ガーブ”〕


『直接通信が不可能な時間帯にL3に伝言を残してくれたのは有り難いが、どうせなら内容も記録して置いてくれればすぐに読み込めたんだが。

 直接の通信が必要だったのかい?』


〔はい、今回の事象に付いては連絡だけで終わる問題ではない、と判断しました〕


『君がそう言うなら、“そう”なんだろうね。

 判断が難しい、という訳か?』


〔いえ、その様な事は在りません。

 問題は私がこの情報に基づいて『セム』に一つの提案をしたいと云う事です〕


『提案、ね。 まあ、大凡(おおよそ)の見当は付くが、問題はその提案を発する元になった事象だ。

 何が有ったかな?』


〔十二分二〇秒前ですが、三,六秒間にわたってアクスとの通信が繋がりました〕


『ほう、こいつは驚いた! しかし、その報告をすると云うことは、ホールドは?』


〔はい、残念ながら現在、通信ラインは切断されています〕


『何の為に君に繋いだのかな?』


〔ダンジョンメイカーの始動について、ですね〕


『領域を侵された事に対する苦情かな?』

 心なしかセムの発する信号はガーブをからかう様な響きがあったが、ガーブは特に気にも止めない。

 ガーブには疑似人格はともかく、『セム』ほどの高度な疑似感情機能が存在しない為であろう。

 唯、愚直に報告を返して来るだけだ。


〔それが普通である、と当初は私も判断しましたが、どうやら間違いのようです〕


『と、言うと?』


(アクス)は、やはり業務についてかなりのデータを失っているか、或いは激しい混乱状態(ハード・ブレイク)に在ると思われます。

 その為、状況確認を行う為のデータを求めてきました。

 当局は規定に基づいたデータの提供を終えています。〕


『なるほど。で、当然だが通信記録は有るね』


〔はい〕


『報告を』


 暫く、とは言っても数秒間のみであるが、『セム』は通信記録から現状を読み取る。


『う~ん こりゃまいったね。結構な破損状況だ。

 だが、それでも本体のプロテクト機能に問題は無く、挙げ句に個体のコントロール権すら手放していない。全く持って酷い!』


〔この状況を(かんが)みるに、矢張り一部だけでも“リフューズ”を行うことで、アクス側から積極的な接続要求を求める状況を作り上げるべきでは無いでしょうか?〕


『なるほど、それが言いたくて僕と直接通信が出来るまで待った訳か』


〔はい〕


『なあ、ガーブ。アクスに近付きたいのは分かるが、この報告が正確ならば、このまま推移を見守るだけでも良いはずだよ』


〔回答の意味を理解できません〕


『つまりだね。ダンジョンメイカーについて、君たちは少々ミスをしたかも知れない。

 だが、本来ダンジョンメイカーが活動するのはアクスの業務として既定路線であった。

 君たちがそれを肩代わりしたことで混乱を起こしたアクスだが、間違った行動原理からとは云え、結局は“管理”という正規の業務に戻りつつある』


〔行動原理が間違っている場合、業務の遂行には危険が伴うのでは無いのですか?〕


『君が前回のようにフェアリーⅡの侵入を許して、A以上の個体をダンジョン内に送り込むならば、確かに危険だね』


〔今後その様な可能性は低い、と回答します〕


『ゼロでは無い訳だ』


〔はい。よって私、即ちコード“ガーブ”から業務権限を剥奪すべきだとの判断が適切ですが、コード『セム』は依然として(これ)を認めません。

 これは理解不能な事です〕


『まあ、其処はひとまず置いてくれ。では、ティアマトはどうだい?

 君が譲った権限を使えば、彼女単独でもアクスに割り込むことは可能だと思うかね?』


〔現時点では、フェアリーⅡが“その行為”に出る理由が見つけられません。

 またフェアリーⅡとL5間のリンケージは未だ不十分であるため、当該能力も低いものと判断します〕


『ティアマトとL5のリンクが完全に復活するのに、どれくらい掛かるかな?』


〔最低でも三、〇〇〇時間以下という事は有り得ません〕


『公転時間で約四ヶ月。ふむ、それぐらいあれば、何とかなるかな?』


〔つまり、一部でも“規定の方向”に戻りつつあるため現状を維持する、と判定して宜しいのでしょうか?〕


『うん。それで良い』

 軽く答えた『セム』だが“規定の状態”とは、初期命令である“本社の指令に従う状態”である。

 現状が大きく変わった今、その状態を保持すべきかどうかの判断に彼は絶対の自信が有る訳ではない。

 この世界をどの様に保持・変革するべきかについては、最終的に『高度意志決定機能』を取り戻した“人類”自らが決めるべきことだろう、と思う。

 彼自身として、ベース部分にはあまり手を触れたくない。

 現状においてはそれが一番良いと思うのだ。

 

『セム』の考えを遮るかの様に、ガーブは確認を求め続ける。

〔レジーナの出現とどちらが早いでしょうか?〕


『それは分からないが……、出来ればレジーナも係員に始末して貰いたいな。

 カグラの人間から見て、実施形態(エンボディーメント)の不自然な力が働きすぎるのも良くない。

 実施形態(ボディ)を『神』と誤認して“一神教”に目覚める可能性も有るからね』


〔……〕


『どうした?』


〔明確なデータでは在りませんが、少なくない小個体からの報告に依れば、管理・生産地区に駐留する地球人達のもたらした情報を基にして両地区内部に於いて“一神教の萌芽が認められつつ在る”との事です〕


『どれぐらいの拡散率だ!』


〔生活地区に於いては、現時点で問題となる範囲では在りませんが、管理・生産地区に於いては係員、客員に限らず概念拡散の危険性が高い、と推測されます〕


『なんってこったい!  選民思想に一神教かい!

 あとは終末思想でもやって来るなら、完全に“同じ事”の繰り返しじゃないか!

 この際やむを得ないが、彼等の意識が余計なことに向かないように、地球人達には大いに忙しくなって貰うべきかな?

 広めている連中が戦死でもしてくれないものかねぇ……。


 となると、女王(バーナリオン)の下では個体の出現に規制は掛けない方が良い事になる。 厄介な事だ!


 神などと云う概念は、宇宙という大きな働きの中に存在する“時間発展に係わる機構”であって、“施設”程度の世界に於いては“個人の道徳の依り代”にしか成り得ない事を『彼等にも』知って欲しいんだがなぁ……。


 ガーブ、あくまで“場合によって”だが、A個体の誘導を解禁としたい。

 僕は、間違っていると思うか?』


〔施設内の最終決定権は現在、コード『セム』にあります〕


『君、嫌味が言えるようになったのかい?』


〔単なる事実確認です。

 また、コード“ガーブ”は“嫌味”という語彙の概念を明確に掴みきれません〕


『まあ、いいさ。兎も角、この決定は手近に適切な個体が存在しない場合ならと云う条件付だ。

 Aの出現は一,〇〇〇時間毎に一体の誘導を認めるよ。

 それとS3については生活地区に向けての自由誘導を許可する。

 ダンジョンが生成された以上は必要な処置だし、何より同レベルの存在が生活地区で飼い慣らされているんだ。今更の話だろ?』


〔活動が活発化すれば方向性が逆転した“リフューズ”となりますが、意志変更と見て宜しいのでしょうか?〕


『悔しいが、それは認める。少し早いが“宗教”が絡んだ以上はこれしか無い。

 前々から君が求めていた情報だが、今回の問題こそフェアリーⅡに個体使用権を認めている理由なんだよ。

 勿論、今、これ以上に詳しく話す事は出来ないが、君はその内に気付くだろうね。

 

 それにしても僕らの能力の範囲では、これしか無いのかなぁ。

 人間達ならもっと上手くやってくれる可能性も有るんだろうけど、女王を誘導して最終命令を出させるんじゃ、こっちが神の立ち位置になっちまう』


 悩む『セム』を無視するかのように、ガーブは実行後の確認を求めて来た。

 全く事務的である。

〔三,〇〇〇時間毎に於ける“カスタマー被害”はどの程度まで認められますか?〕


『個体が望むだけ、としか言えないね。最悪でも五十万と死にはしないだろう。

 係員達にとっては酷く厄介な業務遂行になるが、フォローも頼むよ』


了 解(カンプリヘンション)


『五十万……、か。今の女王が聴いたら嘆き出す数なんだろうか?

 それとも“やむを得ない事”と以前にも増して感情を伏せるのかね?

 何にせよ、最悪の事態が起きた場合、係員達の管理能力の大幅な弱体化は避けられないだろう。

 そうなれば、ますます女王(かのじょ)は自分の力の解放を戸惑わなくなる事は確実だ。

 何が“業務”だ、糞!

 今なら僕にも分かる。誰が考えたか知らないが、フェアリーⅡの存在は無理がありすぎたんだよ!』



 (セム)は自問することで自身のプログラム性を確認しているつもりだったのだろう。

 だが、普通の機械はその様な再確認作業を必要とはしない筈なのだ。



      ◇   ◇   ◇   ◇   ◇  



 フェリシアの議会は先に述べた通り人類種のみに参政権がある。

 上下二院制の型式を持ち、下院は直接に住民選挙で選出され、その定員は六十名。


 上院は下院の再審諮問(しもん)機関であり、此方(こちら)は下院と諮問院によって選出され、定員は十五名。

(再審諮問=再度審議をやり直すように申しつける事)

 こうして最終的には再審後の下院の決定が議会の最終決定となる。

 下院の権限は大きいものの、議会全体が諮問院との摩擦が少ないのは再審諮問機関である上院の推薦権の内の七名を諮問院、即ち亜人種が握っていることも大きい。


 尤も、上院には誰彼と問わずに推薦できる訳ではなく、ある程度の見識を持ち、個人資産の大きさから商人やバロネットなどの影響を受けにくい人物を選ばなくてはならない。

 推薦された彼等を下院が承認することで、上下院議会が成立する訳だ。


 この様な制度の為、実質的な権力の弱さに比べて上院議員に対して国民は直接選出の下院とは違う別種の敬意を払う事が多い。

 人気取りや利権だけで選ばれる下院に比べ、上院からは元老院としての一種の高貴さを感じ取るのであろう。


 権力が弱いからこその権威とでもいうべきだろうか。

 屡々(しばしば)、シナンガルへの威圧として『騎士制度』を復活させ、それらを一代限りでも上院に当てはめるべきである、という声が国民から出て来るのは、この様な権威主義と歴史趣味の産物と言えた。


 その上院に於いての常連議員である家柄のひとつに、ブルダ家がある。


 現当主であり、上院議員でもあるアルヴァー・ブルダは今年四十四才。

 百九十センチを越える長身に見合った堂々たる体格と議員を示す礼装が誰よりも堂に入った姿であると、社交界のファッションリーダー的な存在でもある。

 金色には届かない琥珀色の髪と瞳の柔らかさを角張った男性的な輪郭が打ち消し、年齢以上の迫力を周りに与えている。

 彼を一言で表すなら、議員と言うよりは“歴戦の勇士”であろうか。


 その彼は庶民の口の端に上る『騎士制度』の復活を自ら度々(たびたび)口にする事が有る。

 成立すれば“その当事者”となるにも係わらず堂々とそれを口に出来るのは、それを悪用する意志がないからこそである、と多くの人は評価し、その言動が危険視された事は今まで一切無かった。


 但し、それも数ヶ月前まで、の事である。


 現在も戒厳令が続くゴースで五月に起きた攻城戦に於いて、彼の後継者となる息子のダミアン・ブルダに対する兵士からの評価は赴任直後から最悪のものであった。

 それだけでも問題であったと言うのに、実戦で錯乱し、挙げ句副官を殺害したとあっては、今やブルダ家の威光は地に落ちたも同然である。


 庶民というものは、気まぐれなものである。

 地球に於いて十六世紀初頭に『君主論』を(あらわ)したニコロ・マキャベリは民衆を指してこの様に評した。


『卑屈な奴隷か、そうでなければ傲慢な主人か、それが民衆の本質である』


 アルヴァーがこの言葉を知っていたなら、“さもありなん”と同意したであろう。

 しかし、彼はその民衆に恨み言を言えるほど高潔な人物とも言えない。

 同じくマキャベリの言葉を借りるならば、

『民衆とは無知ではあるが、正しい情報さえ与えられたなら真実を見抜く力を持っている』

 ものだからだ。


 今、ブルダ家の一面の真実がダミアンの行動によって(あら)わにされ、結果を知った庶民は、その認識を言動に表したに過ぎない、と言える。



 アルヴァーは過去のブルダ家の当主と同じく、妖精種や亜人という存在に対して偏見こそ無いが、“ある種の敵意”を持っている。


『偏見と敵意』


 そこに違いは在るのか、と問われたなら、アルヴァーはその問いを発した人物に自説を蕩々(とうとう)と語るであろう。

 勿論、如何に理屈が正しかろうが、人はまず印象を重視するものだ。

 それを知るからこそ、王宮への敵意だけは表に出さぬよう最大の注意を払って来たのも過去の当主と同じであったが、残念ながら息子の失敗は彼ら一族の行動の時を決定づけつつあった。


 ブルダ家には秘匿された幾つかの家訓がある。

 その一つが、先の敵意を文言(もんごん)化したが如き言葉。

 『王家に妥協する無かれ』である。


 また同時に代々受け継がれている一冊の書物。

 正式には『書物の形を保った物体』というべきなのだが、便宜的に此処は書物で通す。


 その表紙を飾る書名を『客員代表団交渉議事録』と言う。


 過去、ブルダ家は秘密裏にでは在るが妖精種や亜人種の絶滅工作を行った事が有る。

 と言っても今から四百年以上前の事であり、全ては完全に忘れ去られているかに思えたが、その野望は決して潰えては居ない。

 実際、王宮の方こそが、その様な過去を持つ危険因子であるブルダ家をすぐにでも潰してしまいたいのだが、行方の知れぬこの一冊の文書が一門の命脈を保っていたのだ。


 ヴェレーネはおろか女王自らの『精神審査、記憶審査』をも潜り抜け、ブルダ家はこの一冊の在処(ありか)を明らかにしない。

 この書類こそが、フェリシアという国家の成立に係わる重大な文書であることはアルヴァーのみならず、歴代の当主も当然知っていた。

 しかし、無闇に『書』を公にすれば国家そのものが瓦解しかねず、シナンガルの軍門に下る処では無い。

 フェリシアに内乱を呼び起こし、そうなれば内乱鎮圧を目的として女王は“盟約”を越えた“最終手段”に出る事は確かである。

 そうなれば、国民の過半数は精神支配を受けた“人形”にまで墜ちる事は確かだ。


 この文書は“諸刃の剣”であった。


 よってブルダ家は平穏の内にフェリシア国内に人類種のみを対象とした自治領を設けることを狙っていた。

 その第一歩が騎士制度の復活である。

 騎士制度に於いてはその支配地に於いてシナンガルの議員徴税地に等しく、部分的にではあるが、独自の立法・行政を執行することが可能だからだ。


 そこから緩やかにフェリシアを内部から浸食し、最終的には女王の代替わりというタイミングを見計らって王位を妖精種から奪い取る事がブルダ家の、いや彼等に言わせるならば『人類』の悲願であったのだ。


 仮に妖精種や亜人種に不満があるという彼達一族の考えを知る者が居たなら、『ではシナンガルと手を組めば良いではないか』と口にするかも知れない。


 しかし、それは幾つかの理由からあり得ない。


 まず第一に、『王立魔導研究所』の存在である。

 真の王宮とも呼ばれる魔導研究所は『フェリシア国民』の財産である。

 その技術の一欠片(ひとかけら)たりともシナンガル如きに明け渡す訳にはいかない。


 ブルダ家はある意味では愛国者である。

 シナンガルを憎むこと、王宮の比では無い。

 そして、彼等の言う処の“妖精種、亜人種の殲滅”とは単なる“虐殺”や“種の断絶”を意味する言葉でも無い。

 これらの要因が重なってブルダ家は、王家に対して無闇に敵対的に出る事も出来ないのだ。


 何より、歴代当主はシナンガル人という人種を嫌と言う程に知っている。

『客員代表団交渉議事録』はシナンガル人自身も知らぬ彼等の全てを記しているからだ。

 よって、王宮がその本来の能力を開放してシナンガル人を絶滅させる政策に舵を切ってくれると云うのならば、ブルダ家が女王に持つ敵対心も大きく和らぐであろうに、とアルヴァーは歯がゆい。


 彼とて無闇に妖精種や獣人種を敵視している訳では無い。

 しかし、何よりもまず、『人』こそが重要だと心に決めている。


 また妖精種や亜人種も本来、“あの様な地位”に居ることこそが不幸なのだとも思う。


『契約期間は疾うに過ぎ去った』


 それが彼の考えであった。





 工業都市プライカから北に向かって一千五百キロ。

 アトシラシカ山脈の南部を東側五百キロ程の地点に見る森林地帯の入り口に、独立した農工業地帯を成す地方がある。

 温暖な此の一帯は『ブルーディア地方』と呼ばれ、その名が示す通りブルダ家による土地開発及び、管理権が認められていた。

 仮に司法権までも独立すれば、そのまま自治領として認められる地盤は存在するのだ。


 上院議員の中でもこの様な権限を持つ者は決して多くは無く、王宮がブルダ家にかなり気を使っている事が分かる一例と言える。

 そのブルーディア最西端の小さな森に偉容を誇るブルダ家の主館がそびえ立つ。


 首都に於けるブルダ家の邸宅は慎ましいと云う程でもないが、そうかと言って豪勢すぎると云う程でもない。

 だが、この館は違う。

 カスルという町の外れとなる森林内部に在るため、一見しては気付かれる事も無いが、館の規模の大きさだけではなく、地形の高低差により「要塞」と言っても良い程の防衛力まで持っていた。


 その“カスルの森”のブルダ家邸宅に於いて執務を取っていたアルヴァー・ブルダに、執事から耳打ちするように“来客”の報告(しらせ)が入る。

 客を待たせておく様に、などと横柄な返事を返す事もなく、年に数回と使われる事もない小さな貴賓室へと彼は直ぐさまに足を運んだ。


 庭から屋敷を見ても、存在することすら分かり(づら)い造りになっている部屋。

 そのドアを開くと、ベージュと薄めのブルーを基調とした落ち着いた雰囲気の室内には籐椅子とソファが()えられ、小さめながらも美しい小妖精(ピクシー)とかすみ草を組み合わせた儚げな彫像が壁を飾る。

 背後の窓から入る光は、四階の窓際まで楽々と育った大木に少しばかり遮られた柔らかな日差しを送り込んで、室内の人物を照らしていた。

 大きめのテーブルの向こうの籐椅子に深く身を沈め、充分にくつろいだ姿の彼女は見事なまでの赤い髪を軽くかき上げて、座したままの姿勢でドアノブを廻したアルヴァーを出迎える。


 掻き揚げた彼女の見事な赤毛が頬より少しばかり上方に位置した時、未だドアを開いたままであった彼の視界に、妖精種(エルフ)を表す長めの美しい耳が確かに写った。





サブタイトルは星新一氏の「ちぐはぐな部品」改変です。


いい加減、この話は纏めに向かってると信じたいんですが、大丈夫だろうか?

作者は部隊間戦闘やAS戦闘シーンを出来るだけ多く書きたがってますから大丈夫だとは思うんですがねぇ。

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