表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星を追う者たち  作者: 矢口
第八章 俳優交代
176/222

175:こうして街は廻ってく

 二十三才になったばかりのヴォークトは、今日は久々に大切な御客様を迎え、その料理の腕を振るう事を楽しみにしていた。


 だが、今は“その喜びも何処へやら”であり、あの雰囲気に跳び込んでにこやかに挨拶する勇気が出ない。

 本来なら、いくら感謝してもしきれぬ恩人であり、この様な態度は良くないと分かっては居るのだが、どうにも(テーブル)に近づける状況では無いのだ。


 店を閉めて貸し切りにしても良かったが、今は『早まらなくて良かった』と思う。

 あのテーブルの異様な雰囲気は、活気のある他の客達が居なければ決して耐えられるものでは無いと断言できる。


 また実際は全ての客が彼女の異変に気付いているが、それも見ぬふりをしているようだ。

 店内の笑い声にも、やけに大げさなものが多い。


 しかし、彼女ともあろう者がこの空気に気付かぬほどに子供のような振る舞いを続けるなど、先月までなら誰に話しても信じてはもらえなかっただろう。


 いや、今、それを目の前にしても実際信じられないのだ。



       ◇   ◇   ◇   ◇   ◇  



 ヴォークトに人生の大きな転機が訪れたのは丁度一年前の今頃のことであった。

 あれは七月も末頃であっただろうから、正しくは一年は経っていないだろうか。


 一年前、六十年ぶりのシナンガルの侵攻に街は大きく揺れた。

 現在に繋がるシエネ戦線の緒戦(しょせん)であり、今回もシナンガル軍との睨み合いが起きた事で、その時の闘いは『第一次シエネ攻防戦』と呼ばれている。

 先月までの闘いが『第二次攻防戦』であり、シナンガルが軍を引かぬ今、三度目の衝突は誰にも予想されていた。


 兎も角、その第一次攻防戦を前後とする頃の話である。

 当時、ヴォークトは屋台を立ち上げて半年ほどの貧しい菓子売りであった。


 彼は余り背が高い方とは言えない。

 また、それ以外の見た目も、ややシナンガル人的な風貌であり、金や栗色の髪、ブラウンやグリーンの瞳を持つフェリシア人から見ると、他者から警戒されがちである。


 勿論、少し話をすれば彼の誠実かつ真面目な人柄は誰にも受け入れられるものであり、何より、丁寧な技術に支えられた仕事ぶりは同業者から高く評価されている。

 とは云え、やはり見た目が重要な客商売に於いて、彼の容貌は始めから大きく足を引っ張る事となる。


 当時から菓子作りに自信はあった。

 それどころか、菓子はあくまで足がかりであり、田舎から出て来た彼は5年後には小さくとも、しっかりとした食堂を開く事を夢見た。

 そうしてアップルタルトの屋台を引き始めたのだが、生憎と販売場所にも恵まれず、商売は困難を極める。


 その様な中、六月に始まった攻防戦は次第にかなりの危機感を増し、表通りの路上販売権も幾つか売りに出された。

 ヴォークトは投げ売り同然とは云え、それなりに高額な表通りの路上販売権を手に入れ、一か八かの賭に出る。


 そして、まずは最初の賭に勝つ。


 シエネ陥落も有り得ると言われた圧倒的不利は覆され、西部防衛隊は奇跡的勝利を収めたのだ。

 シナンガル軍は撃退され、彼は再び屋台を引き始める。


 だが、運もそこまでだった。

 

 店などと云う物は最悪、半年は赤字。一年でトントン。

 一年を過ぎてようやく黒字に転じるものだと、知っては居た。

 それなりに覚悟して始めた商売だ。


 だが、幾ら頑張っても品は全く売れなかったのだ。

 いや、攻防戦以降は益々酷くなり、(つい)には寄りつく者さえない。


 問題はやはり彼の外見であった。

 光彩(こうさい)こそ金色でないとは云え、黒目黒髪のシナンガル人にあまりにも似かより過ぎていたのだ。

 戦場でシナンガル人に相まみえた兵士のみならず、父や息子を失った遺族達までもが無意識に彼を避けた。


 赤字予定期間の半年も終えようとしていたが売り上げに全く改善の気配は見えず、客足は益々遠のくばかり。

 六十年前の亡命シナンガル人の子孫と間違えられる事も屡々(しばしば)で、東部からやって来た応援兵には嫌がらせまで受ける始末だ。

 

『ここまでだな。今週には店を畳もう』

 項垂(うなだ)れ、そう思いながらも、だからこそ最後まで仕事に手を抜きたくなかった。

 誰か一人でも良い、この味を認めさせてから田舎に帰ろう。

 その意地だけで店を出す。


 その日の午後も売り上げは無かった。

 諦めて店じまいをしようとしていた時、屋台に近付く者が居る。

 にこやかに挨拶をしかけて目の前の存在を確認すると、彼はそのまま固まった。


 戦 魔 王ザーストロン・ルシフェル、マーシア・グラディウス


 彼女のシナンガル人嫌いは世に知られたものである。

 また、自国人ですら気を損ねたなら七七に等分割されるという話は、彼も子供の頃から幾らも聞いて育った。


 勿論、大人になれば、その様な人物は実在しない、と思い込んでいたのも大多数の若者と同じでもある。

 だが、戦魔王は実在した。


 ひと月前の闘いに於けるシナンガル人の戦死者数、約十万。

 その半数を、唯一人で殺戮せしめたのは誰か!

 誰在ろう、目の前の十五にも満たぬ容貌を持つ少女だ。

 いや、実際は八十才を廻るという以上、ヴォークトの四倍の歳月を生きている事になる。


 息も出来ないヴォークトに、不思議そうな顔付きでマーシアはアップルタルトをひとつ注文する。


 店どころか、命を失う瀬戸際だ。

 彼は今までの人生で積み上げた全ての力を込めてアップルタルトを焼き上げた。

 出来合いのもので良い、と言っていた様に思えたのは彼女が立ち去って暫く経ってからであった。


 だが、それ以上にヴォークトの耳に残った言葉がある。

 彼女は去り際に確かにこう言った筈だ。

美味(うま)かった。また来る』と、


 あれはどういう意味だろうか?

 そのまま受け取って良い言葉なのか?

 それとも何処かで自分を殺す事を考えて足止めを狙っているのか?


 いや、あの時、彼女は実に幸せそうな顔をしてタルトを頬張っていた。

 年相応の少女のように……。


 ところが、翌日になり約束通りにやって来た彼女の表情は暗かった。

 心配になり尋ねる。

「あの、あまり上手に焼けてませんかね?」


 冷たい一言をも覚悟しての問いかけであった。

 だがマーシアは少しだけ戸惑って、それから本当に申し訳なさそうな顔になって言葉を返してきたのだ。

「ご免なさい。ちょっと心配事があって。

 でも、一生懸命作ってくれたものを食べる時にこんな顔しちゃいけないよね」

 そう言って寂しそうに笑う。


「いえ、お客さんが店に気を使っちゃいけませんよ!」

 マーシア・グラディウスとは悪鬼のような存在では無かったのか、とヴォークトは驚きつつも、彼らしい誠実さで本心からそう答える。

 すると、マーシアもホッとした表情で、短く言葉を返して来た。


 それから会話は自然に進んだ。


「そうかな?」

「そうですとも」

「でも、やっぱり悪いよ」

「じゃあ、落ち着いてから食べられるように好きなだけ持って行って下さい」


 ヴォークトのその言葉を聞いてマーシアこそ驚く。

 実はこの時、表に出ていたのはマリアンであった。

 つまり、この反応は当然なもので有ったのだ。

「売り物なのに、悪いよ! じゃあ、あとふたつ貰うから」

 そう言ってマーシア=マリアンは財布を出すのだが、ヴォークトはそれを断った。


「どうして?」

 首を傾げるマーシアに、ヴォークトは商売が上手く行っていない為、今日で店を畳むと答える。

「こんなに美味しいのに買う人が居ないの!?」

 マーシアが本当にビックリしたという表情であることから、言葉に世辞はない事が分かり、ヴォークトは嬉しくもあったが複雑な気分にもなる。

「いや、言いたかぁ無いんですが、多分、原因は私の顔でしょうね」

「顔?」

 彼女が再び首を傾げるとヴォークトは、

「自分の顔はシナンガル人を連想させるだろうから」と答える。


 マーシアは納得したが、マリアンが納得しようはずもない。

 明日からシナンガル領に出向き、『殺人』という行為を挟んで兄と向き合わなくてはならない。

 挙げ句、帰って来たら気に入った菓子まで消えていたなど、嫌な事ばかりではないか。


 マリアンの気持ちを()んだのだろう。

 マーシアは財布から金貨を二枚取り出すと、ヴォークトに握らせた。


「これは!?」

 ヴォークトが驚くのも当然だ。

 銀貨十二枚で金貨一枚の価値があり、銀貨六~七枚あれば成人男性一人のひと月分の稼ぎにはなるのだ。

「謂われのない金は頂けませんよ!」

 ヴォークトは少し腹を立てた。

 自分は物乞いではないし、その様なつもりで話をした訳では無いのだ。


「いや、すまん。そう云うつもりではない」

 マーシアが表に出てきた事で言葉に纏う雰囲気が変わり、彼はやや気後れしたが、続く言葉を聞いて更に驚く。


「まず、私はこれからひと月ほど街を留守にする。

 帰ってくるまで、今の定宿にしているホテルのティータイムにタルトを毎日十個は届けて欲しい。

 そこに卸して、売り上げを試させて欲しいんだ。

 小売りの儲けはホテルと私で折半だ。其れで良いな?」

「それでも、頂きすぎですね」

 ヴォークトの言うことは(もっと)もだ、とマーシアは後を続ける。


「残りは、街の孤児院に安い菓子を作って差し入れてくれ。

 但し、子供達が味の良いものに慣れ過ぎると経営者が困る。

 そっちは度が過ぎないように値段も最低のレベルで良い。

 経営者と相談して決めても良いが、子供を出汁(だし)にするような施設には私が礼に覗うと伝えておいてくれ」

 そう言って、マーシアは悪戯っぽく笑った。


 驚くばかりのヴォークトに、マーシアは最後にこう語った。

「いずれ、その子達なりホテルの連中なりが常客になるだろうさ。

 この屋台に潰れて貰っちゃ困るんだ」



 こうしてヴォークトの屋台は生きながらえ、ホテルや孤児院の斡旋もあって次第に評判が高まっていく。

 それどころか、その後一年を待たずして、ヴォークトは借り物ながら店を構えるまでになったのだ。



 この一年でシエネの市民人口は僅かながら減った。

 正面に向き合うシナンガルとの闘いを恐れてのものだ。


 だが、兵士が増えたことで全体の人口は微増と言って良い。

 そして、その兵士の中にヴォークトによく似た体格と風貌の者達が増え始めた。

『鳥使い』と呼ばれる自由人集団(バロネット・チーム)


 規模は通常の自由人チームなど及びも付かない数であり、総数は四千とも五千とも言われる。

 何より『鳥使い』の名が示す通り、単に人数だけではなく恐るべき魔法、いや兵器を操ることでシエネ防衛、引いてはフェリシア防衛の主役にまで躍り出た。


 彼等の活躍がヴォークトの外見を今度は有利な方向へと導くことになる。

 しかも、その『鳥使い』達のトップグループにはあのマーシア・グラディウスの兄が居ると云うのだ。

 

 マーシアが立ち寄る屋台はすぐに評判となり、鳥使い達が列をなす。

 そうなれば、先のホテルや孤児院関係者も他へ話を持ち込みやすくなり、更に商売は上手く回り始めた。


 その様な折、ヴォークトは妙な売り子を雇うことになる。

 エルフである。

 エルフといえば人種的に稀少である上に、体力、知力、魔力、共に群を抜いた存在だ。


 さりとて、高位な職にのみ就く訳ではなく、マーシアや彼女の両親の様に自由人(バロネット)になる者も少なくは無い。

 また、長い寿命に飽きて時に犯罪に身をやつす者も居ないではないが、それこそ希少な存在で有り、何より犯罪と言っても、彼等は自分の力を試すためにその様な行為に出るのだ。

 少なくとも、その力を市井の雑多な些事(さじ)に使うものなどいない。


「なんで、菓子屋の売り子なんかに?」

 当然の質問にそのエルフ、『リトキア』と名乗った彼女は、こう答えた。

「あたし、食い意地が張ってるんです!」

 身体に見合ったすらりと伸びた腕を大きく振るい、胸を張った堂々たる物言いに思わずたじろぐヴォークトである。


 リトキアの言い分はこうだ。


 自分は美味いモノに目がない。この屋台のアップルパイは極上である。

 しかも、聞く処に因ると、店主はいずれ本格的なレストラン経営まで考えているという。

 ならば側に居て味を盗むのが筋ではないか!


 思わず目が点になったヴォークトであったが、辛うじて言葉を返す。

「いやね、リトキアさん。味を褒めて貰ったのは大変光栄ですが、後は色々と言ってる事がおかしい。大体、私は『レストラン』などと大仰なモノは目指してません。

 精々、食堂が持てれば良いぐらいでして」


 一息に言い切って、“これでお引き取り願えるだろう”と考えたヴォークトは、甘い考えを叩きのめされる事となる。

 まず、リトキアは自分がヴォークトに目を付けた理由を話した。


「先週、カメラートの厨房に入ったでしょ?」

 ホテル・カメラートはマーシアの定宿である。

「ええ、コックの一人が怪我をしましたので応援を頼まれまして」

「あの時、私も偶々(たまたま)客として、あの場にいたの」

「それは、どうも……」

「あの時出した『鳥の串焼き』、あれは良かったわ。あなたのオリジナルだそうね」

「ありがとう御座います。ですから、私に出来るのはあの程度でして」


 それを聞いてリトキアの目付きが変わる。

 愛嬌のある丸い目ながら、睨み付けられている様だ。

「だめね!」

「は?」

「そう云う逃げの根性じゃ、余程の運がなければ店を構えられても、すぐさま潰しかねないわ! せっかくの腕が泣くわよ!」


 これは効いた。

『運!』

 (まさ)しく、自分の現在は、その“運”の上に成り立っているものでは無いか。

 しかも、リトキアの容貌がその言葉を後押しする。


 彼女の髪は少し癖があり、あちこちが軽くカールしている。

 しかし、問題はその色だ。


 銀髪。

 否が応でも恩人であるマーシアに重なる。

 その上、マーシアがやや切れ長の鋭い瑠璃(るり)色の瞳であるのに対して、リトキアはやや丸みがあるが、非常に似かよった碧空(そら)色の瞳なのだ。


 この容貌で強く押されて断れるヴォークトでは無い。

 結局、ヴォークトの側に居着いてしまった彼女は売り子に収まり、エルフが菓子を売る珍しい屋台として、益々店は繁盛していったのである。


 二人はよく働いた。

 リトキアには商才もあったが、何より客を呼び寄せる愛嬌があった。

 資金が貯まるにつれ、ヴォークトとの間柄も近付く。 


 そうして、あっという間に店を持つ事になって丁度ひと月目。

 久々にマーシアはヴォークトの前に姿を現したのだ。

 ぶっきらぼうにだが開店を祝い、テーブルをひとつ求める。

 既に人気店として名高い『ヴォークト&リトキア』ではあったが、ヴォークトは無理にでも(テーブル)を空けさせた。


 そこまでは良かったのだが、問題は彼女の連れだ。

 一人はフェリシア人ならば、見紛う事なき人物である。


 ヴェレーネ・アルメット殿下。

 護衛など不要な彼女とは云え、この様な市井の食堂に訪れるなどあって良いものだろうか?

 そして、もう二人。

 一人は、噂に上っていたマーシアの兄だと自分から名乗った。

 腰が低く、好感の持てる人物だ。

 名を『ヒーラギ』と名乗った。


 何故か雰囲気が自分に重なる。

 相手もそう思ったのか、目が合うと“互いに苦労しますね”とでも云う様な会釈を見せてくれた。

 ヴェレーネ殿下と共に卓を囲み、『鳥使い』のトップに立つ人物とは思えない程、物腰が柔らかい。

 だが周りの席にいる鳥使い達が、彼に敬意を払っていることも在り在りと(うかが)える。


 そして最後に、そのマーシアの兄、ヒーラギに背負われて入り口を通った少女が一人。

 十才ぐらいだろうか? 長い黒髪に赤いドレスがよく似合う。


 何故かヴェレーネ様をより幼くしたような雰囲気だ。

 もしや殿下の妹なのだろうか、と云う程によく似ていた。

 問題は、その少女が先程からマーシアと随分と睨み合っており、それを兄であるヒーラギが必死で宥めているのだ。


 ヴェレーネは彼等から距離を保った会話を心がけているようだが、その彼女ですら、何故かヒーラギの膝を占領する少女に時たま、複雑な視線を送る。

 少女はそれに気付くと直ぐさま目を逸らし、視線が向けられた事に気付かぬ振りをしてヒーラギを独占する優越感を周りに振りまいていた。


 そこでマーシアが怒りにまかせて大声を張り上げ、ヒーラギがそれを押しとどめる、と云う事の繰り返しなのだ。




「何なんだ、あれは?」

 小さくではあるが、思わず出た声にリトキアが反応した。


「相変わらず、鈍いわね」

「と言うと?」

「あれは、嫁候補と小姑の争いよ!」

「まさか! 相手は子供だぞ!」

「女は女よ! あの子だって後四~五年もすれば、結婚できるわ。それにね……」

「それに?」

「まあ、後にしましょう。注文、詰まっちゃうわよ。

 最初は“ポルカ風串焼き”ね。レンズ豆のスープは私が出すから、豚肉を出しといて!

 Mrタマリから頂いた“ショーユ”で、生姜のテロ焼きを作るわよ」

「“照り焼き”だよ。いい加減覚えてくれ!

 お前がその間違いをする度に、鳥使いの皆さんが妙に落ち着かなくなる。

 どうやら、あまり良い言葉じゃない様だぞ!」


 二人はそれぞれに仕事に取りかかっていく。


 その中でリトキアは、ヒーラギという人物に興味を持たざるを得ない。

 まず、自分とマーシア・グラディウスはほぼ同じ年齢だが、この六十年間で彼女に兄妹が居るなどという話は聞いた事もない。


 何より、見た目からして血の繋がりが有る等とは、とても納得できない。

 第一、彼はどう見ても『人類種』だ。

 マーシアより年が上であろう筈もないではないか。

 つまり、表向き『兄妹(きょうだい)』と言ってはいるが、何らかの理由があって()の様な関係に身を置いているに過ぎない、と云う事だ。


 また、あの膝の上の少女。


 亜人種とも言い難いのだが、そうかと云って人類種でもないことは確かだ。


 マーシアもヴェレーネ様も、身体の成長はあそこまでだろう。

 構成魔力を隠している可能性はあるが、通常、エルフは年齢が固定されると外見の成長はそこまでだ。

 だが、あの少女は違う。

 明日にでも二人を追い抜き、女性として完成した身体を持ってもおかしくない。

 成長する為の構成魔力に余裕がありすぎる。


 あの二人はそれに気付いているからこそ、ヒーラギの膝の上の少女に不快なものを感じているに違いない。

 だが二人を除いては、スプーンの使い方を教えているあのヒーラギを始め、他の誰にもそれが気付かれる事は無いだろう。

 自分とて彼女達と同種のエルフでなければ、見抜いたかどうかと思う。


 あのテーブルは今、女の闘いの場なのだ。

 それに気付いたなら、今後の展開が気になるのはリトキアに限らなかっただろう。


 笑いを堪えながら、彼女は次のテーブルへと注文を取りに向かった。





サブタイトルは石黒正数氏の「それでも町は廻っている」改変です。


現在、体調の不具合、その他諸事情により更新が大幅に遅れております。

出来得る限り早く治したいのですが、こればかりはどうしようも無いためご容赦下さい。


次回以降は、いよいよ逆侵攻、或いはバルコヌス半島動乱編へと入って行きます。

宜しくお願い致します。


追記

今回のゲスト出演は「焼いた鳥」様です。

快く参加を了承して下さった事に感謝します。 ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ