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星を追う者たち  作者: 矢口
第七章 愛に生まれ、殺戮に育つのは『世界』
124/222

123:2人いる!(中編)

 マーシアが“鉄兵士”を一刀両断にした秘密は、いつかの炭素変換によるものだけでは無い。

 如何(いか)なタングステン・カーバイト鋼であろうと鉄の塊にぶつける以上はハティウルフの細やかな毛皮を裂く様にはいかない。

 物質は固くなればなるほど(ねば)りが失せて(もろ)くなると云う不条理な弱点も(あわ)せ持つからだ。


 あの時のハルベルトの輝きは、物体の振動による光の乱反射から起きたものであった。

 高質化した刃先を一秒間に数万の回数で振動させたのである。

 ひとつ間違えると、粘性の弱いハルベルトそのものが破壊されてしまう危険な行為だが、マリアンはその点、余裕を持った振動数を選んだ。

 結果として、刃先は超高速で回転するチェーンソーのような働きをした訳である。

 あれでは、どの様な金属でも一溜まりもあるまい。

 ランセの複合装甲ですら耐えられるかどうか怪しい武装をマリアンはマーシアに与えてしまったのだが、彼としては差程の悪気はなく『包丁の切れ味を上げる』程度の感覚しかない。


 後程、巧に知られた時に『共振現象』の恐ろしさを嫌と言う程叩き込まれることになるが、今はマーシアの役に立てただけ“良し”としていた。




 さて、其れは兎も角、まずは鉄兵士を一体は片付けたものの、城壁上の緊張(きんちょう)が薄れる事もない。

 あの鉄兵士が再び、しかも複数同時に撃ち込まれてこないとは限らないからだ。


「とにかく、マーシアがあれを相手できることは判ったわ。 

 各陣地に連絡して置くから、あいつが現れたら対応して頂戴。

 但し、マリアン君! 与える力は“最低限のもの”にしてくれないと困るわよ!」

 ヴェレーネの言葉に頭を掻いて視線を逸らすマーシアの姿に、ロークはさっぱり意味が分からない。

『ヴェレーネ様は何故、マーシア様に“マリアン”と呼びかけるのだろうか?

 何よりも、マーシア様の()の変わり様は何なのだというのだ?』


 様々に考えを巡らすロークであったが、その思考は流れてきた『声』によって、一旦は取り置かれることになった。

 六十体近い鉄巨人達の中央、その一体の掌の上に腰が抜けた様に座り込み、助けを求める子供の声が聞こえるのだ。


 しかも、その救助者にヴェレーネ・アルメット若しくはマーシア・グラディウスを指名していた。

 フェリシア側に少女の名を知る者は無いが、彼女の名を“ワン・スーラ”と言う。



      ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 鉄巨人達の動きは殆ど止まっている。

 理由は巨人達の動きを統括(とうかつ)し、その目となる魔力を底上げする人物、ルナール・バフェットが“不覚”の状態に在ったからだ。


 彼は地下の一室で完全に気絶し、部下達に気付けの治療を受けていた。


 何故此の様になったのか、時間を少しだけ巻き戻す。

 事はロークが“鉄兵士”と最初の一合を合わせたのとほぼ同じ頃。

 地下要塞に()いてルナールは魔術師左翼部隊、つまりシエネから見て右翼に当たる二十体の巨人に主な力を注ぎ込んでいた。

 また、ロークが相手をしている鉄兵士はルナールが直接にイメージ操作しているものであり、剣技だけを考えたならば『ルナールVSローク』の構図でもあったのだ。

 

 獣戦士と刃を合わせ“良い剣士”だとルナールは驚く、先の切り通しで頭脳を競った後には直ぐさま剣技を競う相手が現れたのだ。

 表情に喜びを隠しきれない。


 他の四十体の鉄巨人については、別の部屋にいる魔術師達に伝令管を使ってシエネ城壁中央まで広がる様に指示を出す。

 彼方(そちら)は今、示威行為だけだ。ルナールの力は差程必要ない。

 獣戦士と鉄兵士との闘いはルナール優勢で進んでいる。

 指揮官としての職務は充分に全うしている以上、ルナール個人としては此方(こちら)を優先的に楽しませて貰う事にした。


 有り難いことに『軍師』の言葉通り『鳥使い達』の『鳥』処か、(つぶて)までもほぼ無効化できており、相手の武器も魔法とハンドキャノンや弱い火箭(かせん)程度である。

 此ならば、シエネの城壁に迫る事は可能であろう。


 元から『軍師』があの様に魔獣を従える力を持つとは思わず、スクロースと鉄巨人、鉄兵士の波状攻撃だけでも切り通しの崖下を補給路とすれば、戦力としては充分であった。

 如何に『鳥』が強力な武装を持つと云えど、切り通しの崖下を破壊する事は出来ないからだ。

 

 川辺の崖下は複雑な岩場に囲まれており、あの恐るべき火箭も其の場に潜んだ鉄巨人に直接の被害を与える事は難しいだろう。

 何より鉄巨人の半数、つまり巨砲を持たず火薬を濡らす事を恐れない一部はラインの川底から侵攻する事も可能だ。

 上空の気球の対応に追われる内に、川底や地上から鉄巨人、それに引き連れられた鉄兵士によって城塞を混乱に陥れ、敵の巨砲(二〇五、一五五ミリ榴弾砲)を後方に下がらせる。

 その上で最後は地上から、或いは地下要塞を通った“十万の騎兵と歩兵”でシエネ城壁を陥落(おと)す。

 これが、侵攻作戦の全貌(ぜんぼう)であった。


 まず先兵となる鉄兵士は、別段、砲撃でしか内部に送り込む事が出来ない訳では無い。

 鉄巨人に直接投げ込ませても良いのだ。

 鉄兵士らが城壁内部で暴れ回れば、フェリシア側は外部から侵攻する人間の兵士に対応するどころではない。

 これが、シナンガル軍がシエネを落とす事に絶対の自信を持っていた根拠である。


 但し問題点は、その巨人や兵士をどうやって操作するかだが、その答が現在ルナールが詰めている此の地下要塞なのだ。

 麻畑の真下は丸々が地下要塞となっており、シエネから僅か二キロ地点で鉄巨人と鉄兵士の遠隔操作を可能としていた。

 因みに、態々(わざわざ)麻を飢えたのは、『覗き窓』や地表の『石に埋め込んだ監視用水晶球』の設置を行っている事を隠すためである。


 予想外のロケット弾攻撃により、多くの覗き窓は(ふさ)がれ、レンズ替わりの水晶球も破壊されたが、窓は内部から掘り直す事が出来た上に、地上の水晶球も半数以上が生き残った。

 外部の視界も確保できており、要塞としての機能は充分に生きている。


 敵も一度攻撃した場所に“結局は何も無かった”となれば再度の攻撃もあるまい、と各将軍を始め、全ての大隊長達は胸をなで下ろしていた。

 そうして切り通しで巨人と鉄兵士の運用試験を行い、今やシエネ城壁に迫っているのである。


 マーシア・グラディウスを北におびき寄せ、人質で動きを止める作戦は失敗したようだが、それでも、あの女とて乱戦になればやはり城壁上で砲撃を放つ訳にも行くまい。

 これも、計算違いではあっても結果的には問題は無い事だ。


 何より、侵攻作戦前にワン・ピンを通して『軍師』から軍部にもたらされた一言。

『シエネの鳥使い達は必ず黙らせてみせる』

 という言葉がこの侵攻を決めさせたが、それは嘘偽(うそいつわ)りなく見事に(こう)(そう)している。

 いや、シエネ処か南部戦線にまで魔獣までも配置して見せているのだ。

 真逆(まさか)、あの様な大型の魔獣が味方に付くなど誰が想像したであろうか?

 

 この一事は、将軍や大隊長達が如何(いか)に議会からの指名とは云え、協力者として指定された正体不明の人物、『軍師』に対して信頼を(あつ)くするに充分な効果があった。

 勿論、逆に更に”不審を高める者”も僅かに存在したが、その様な存在は当然に声を潜めて監視を続けているのみであろう。


『軍師』を最も知っているつもりであったルナールとて、シムルに対しての返書に描かれた『魔獣を配下に置く様に』、との一文が、あれ程のものとは思わなかったのだ。

 その評価が是にせよ非にせよ、他の将軍や大隊長の驚きは推して知るべし、である。


 ルナールとしては、ふと、(かつ)て南部の廃墟で見た『竜』に匹敵するものでは無いか、と恐れもするが『軍師』が操る以上“こちらに害は無い”と信じるしかない。



 鉄兵士を通じてルナールとロークの撃剣は既に十合には及んでいる。

 (かわ)された数を考えればそれ以上だ。此奴(こいつ)は『やる!』

 実際に戦場で剣を交えた場合、勝ち目は在るかな、とも考えながら更に一撃を繰り出す。

 またもや上手くいなされる。





 それにしても、幾ら『軍師』からの命令とは云え、此の蒸し風呂の様な地下要塞にスーラを連れてくるのでは無かった、とルナールは後悔する。

 一応に、風魔法を使ってあちらこちらで換気を行っているのだが、やはり()れだけでは全ての部屋を平温に保つのは難しい。


「スーラお嬢様、お暑うは御座いませんか? 

 今からでも後方にお戻りになられてはいかがですか?」


 今、ルナールが二十名程の魔術師達と共に待機して居る部屋は、シエネ城壁右翼、即ち地下要塞中央部より僅かに北に位置する。

 送風管から氷結魔法が送り込まれた室内は他の部屋に比べると充分に涼しいと言えるだろう。

 それでも大人にすら、そう長時間耐えられるものでは無く、ルナールはまめに魔術師の交代配備計画を行っている。

 ただし、最も長くこの場に居なくてはならないのは責任者のルナールであり、其れに付いてきたスーラも同じ時間は此処に居る事になるのであろう。

 後二時間も子供の体に耐えられる場所だとは思えず、『軍師』の命に逆らうとは知りつつも、スーラに声を掛けた。

 が、その時、彼女の目付きがはっきりと変わったのをルナールは見た。


『軍師』が現れたのだ。


 同時に彼は、鉄兵士が後方からの敵を魔法石に捉えている事を知る。

 包囲の敵魔術師の影になりよく分からぬが、ルナールの勘が正面の剣士より新手を優先させた。

 振り返りその敵を迎え撃つも、跳び上がった相手は逆光の中に消え去り、その姿は全く見えない。

 直後、信じられぬ事に鉄兵士は両断されたと分かる反応があり、魔法石との通信は途絶えた。

 マーシアの超振動ハルベルトは本体を両断するのみ成らず、その共振現象によって全ての魔法石を打ち砕いていたのだ。


 驚きの余り、つい『軍師』に目を向けたルナールであるが、其処には不気味に口の()を持ち上げた表情のスーラが居るだけだ。

 背筋が凍る。


 兎も角、今の敵について問い掛けようとして自然に『軍師』と視線が合う。

 だが、その瞬間に彼の意識は遠のいた。



      ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇



「た~す~け~て、く~ださぁ~い! ほにょ?で~す! 

 つかまっちゃったんで~~す!」


 何度目になるであろうか、スーラは必死で敵陣に向けて声を張り上げる。

 自分の内部にいる『何者か』の命じる通りの言葉を発しているのだが、果たして『妖精さん』は自分をルナールの側にきちんと帰してくれるのだろうか?

 やや心配になってきた時、内部から声が聞こえる。


【だ~いじょうぶよ。ちゃんとお仕事してくれたら、すぐルナールの側に返してあげるからね】

「ホントかなぁ?」

【ホント! ホント! あと、“ほにょ”じゃなくて“ほりょ”ね】

「でも、てきに“たすけて下さい”って、変だよね? 

 つかまったらどおするの?」

【捕まらないわよぉ~】

「どおして?」

【周り、見てご覧なさいな】

「おお~、そういえば“てつ”のお人形さんが、いっぱいですねぇ!」

【そうじゃないわよ。 あんな、廃鉄の再利用品に期待して……。

 子供に言っても分かんないかぁ……】

『軍師』はそう言って笑う。


 この鉄巨人や鉄兵士達は過去百二十年の間にワン家を始めとした議会に()って無闇に採掘された鉄鉱石の残滓(ざんし)である。

 製鉄しても物に成らず、酸化鉄として朽ち果てる寸前であったもの、或いは其れによって鉄鉱石や鉱山ごと放置されたものから新たに鉄を取りだし、各手足、或いは胴体や頭の部分に質は兎も角、量だけは大量に揃えた魔法石を埋め込んで動かしている。


 ルナールはこの廃品利用によって、ワン家や有力議員の鉱山開発に大義名分を与えた事で、議員連からの覚えは更に高まったと言える。

 過去に『軍師』が話した“議員に恩を売る”とはこの事であった。


 鉄巨人の動力となる魔法石の供給元はフェリシアのバロネットからのものを予定していたが、彼等が中部や北部で手に入れたスラッグやトードの首の骨から得られる魔法石はあまりにも質が悪かった。

 この首の骨の流通が王宮の目を逃れたのは、スラッグやトードという存在が余り大きなものでは無く、『魔獣』として認識されていなかった為だ。

 王宮にとって『魔獣』とは南部に現れる危険生物のことを指すのであって、中部や北部で聞かれていた存在も怪しい単なる大型の生き物の事ではなかった。


 三月中頃にトガで、その直後に中部でこの二種類の魔獣が大量発生しなければ、其れを魔獣と認定していたかも怪しく、事実、現在も『加工が済み次第民間に安値で卸す』事を魔導研究所に指示する始末である。

 新しい燃料源として目を付けた様であり、未だ其の程度の存在としての認識だ。


 結局、その様な生物から得られた『屑魔石(くずませき)』は、スクロース爆弾の導火線以上の能力は持ちようもない。

 鉄巨人や鉄兵士の動力となる魔法石は、ルナール軍によって南部で大小千体を超える程に狩られ、『軍師』の情報によってルーイン・シェオジェによって開発が進められたものであった。


 因みに動力としての原理だが、魔法石の持つ通信の応用で『引きつけ合い』と『反発』の特色を生かして操作されている。

 魔法石が持つ情報の引きつけと発信というふたつの力が人間で言う処の『筋肉の収縮と延長』の役割を果たしている。

 其れが分厚い鉄の中に数十と埋め込まれているのだ。

 如何にM2機関銃と云えども破壊し切れ無いのも当然で有り、先程から火炎弾や風圧弾に押されて後退し膝を附く事が有るにせよ破損する機体などひとつもないとなれば、スーラが自分を守る存在が『鉄巨人』であると思い込んでも仕方在るまい。


 だが其れは違う。

 鉄巨人がスーラを守るのではない、スーラが鉄巨人を守るのだ。

 逆ではない。


 スーラを守るもの、それは彼女の周りに張られた青白いエネルギーの膜である。

 唯の人間であるハインミュラーにすら、映像越しに認識できる強力な魔力。

 それは(かつ)てビストラント上空の空戦時に、マーシアが見せた力にも等しい対抗力場であった。


 その力がスーラの周りを包んでいる限り、彼女を傷つけるものなど存在しない。

 また、スーラという少女が居る事でマーシアは例の『砲撃』を放つ事は決して出来なくなった。

 いや、1年前のマーシアならばスーラの中に巣喰う異様な『何か』を察知した結果でも、“許せ”の一言でスーラもろとも六十体の鉄巨人を消滅させていたであろう。

 だが、今のマーシアこそ(かつ)てのマーシアではない。


(マーシア! あの子どうしたの? 助けてあげられないの?)


 そう、この存在で有る。

 マーシアが如何に砲撃を打ちたくとも、マリアンはダークエネルギーの量子固定化を決して認めない。

 つまり……、砲撃は封印されたのだ。


“マリアン。言いたくはないが、余り敵に情を移すな”

(だって、あんな小さな子だよ! 助けないなんて酷いじゃない!?)

 マリアンは完全にスーラを救う気になっている。

 スーラの『助けて下さい!』という言葉をそのまま素直に(とら)えているのだ。


 それこそ言いたくはなかったが、マーシアはマリアンに事実の認識をさせる事にした。


“なあ、マリアン。私が幾つだと思う?”

(え~っと、確か十五歳くらいかな……。あれ? 六十年前に闘ったって?)

“そうだ! 私はもう七五歳を過ぎた”

(……マジッスか?)

“とは言え、エルフは三百年は生きると言うから、人間にそのまま当てはめる訳にはいかないがな”

(なるほど、人間に直すと二十歳ぐらいなんだね。 

 でもそれがどうしたの?)

“私の外見(がいけん)だよ”

(あ~、やっぱり十五歳ぐらいに見えるよねぇ、それがどうしたの?)

 マーシアの言葉に少しだけ考え込んだマリアンだが、どうやら答に辿(たど)り着いた様だ。

 思わず声も上がる。

(……、あっ!)

“判ったか?”

(うん! つまり、あの子は十歳くらいに見えるけど、ホントの年は分からない、ってことだね)

“正解だ。何より、捕虜が対抗力場など張れると思うか?”

(う~ん、でもねぇ……) 


 (しばら)く考えていたマリアンだが、結論が出た様だ。

 だが、送られてきた思考を読み取って流石のマーシアも慌てる。


“馬鹿な!”

 思わず叫ぶマーシアだがマリアンも一歩も引かない。

(殺しちゃった後で本当に人質だったら取り返しが付かないよ!)


 正論である。

 渋っていたマーシアも結局は折れた。

“結局、お前は私の『良心』の部分なんだな”

(違うよ。マーシアの優しさを僕は信用してるの!)


 マリアンの言葉に思わず笑みが出る。

 その優しげで慈愛に満ちた笑みに気付いた兵士の一人が、戦闘中にも関わらず思わず頬を染めた。


“処で助けるのは良いが、あそこまでどうやっていくかな?

 (そば)まで跳ぶにせよ、あの障壁(対抗力場)は厄介だぞ“


(障壁を張っている人物を先に捜そうか?)


“どうかな? お前の考えが正しいならば見つかるとも思えん”


(じゃあ、行ってから決めようよ)


“捕まる可能性も有るぞ”



 これだ……。

 これがマーシア・グラディウスの本当の恐ろしさである。

 彼女は公的には地上(カグラ)最強と云う事になっている。

 だが、彼女自身は常に『相手は自分より強い』と想定し、その上で勝つイメージを造りあげるのだ。

 この様な人物に誰が勝てるというのだ。


 その危険人物の中に馴染み、違う意味の危険な存在と成りつつあるマリアンも其の点の同調は早い。

 その上、彼は本当の強者が誰かを知る力までも(すで)に身に付けている。

(ヴェレーネさんが助けてくれるよ)

 そう、事も無げに言い切る。


“あいつに借りは作りたくないのだがなぁ”


(アルスさんとも仲良く慣れたんだから、大丈夫!)


“アルスは……、まあ、いい。 とにかくあの巨人の足下まで跳ぶぞ”


(あっ、まって。足下まで跳んだらね……)


“そんな事が出来るのか?!”


 何事かの提案に驚くマーシアにマリアンは悪戯っぽく笑う。

(アルスさんとはやり方が一寸(ちょっと)違うけどね)


“何にせよ、近寄れるなら結構な事だ”


 マーシアは城塞中央部のヴェレーネに念波を跳ばす。

『どうしたの?』

「マリアンのご要望だ。あの子供を助けに行く」

『ちょっと! 何、考えてるの? どう見ても罠でしょ!』

「罠でなければ後悔する。そうでないにせよ」


 一言句切って、マーシアは周りの兵の表情を確かめた。 

「問題を片付けなければ此方(こちら)の士気にも関わる、だろ?」


 そう、マーシアの言う通りなのである。

 大抵の兵士はスーラの存在をきちんと『罠』と捉えてはいるが、頭では理解していても子供が戦場にいるのでは感情が邪魔をする。 

 早い話、攻撃しにくくて(たま)らないのだ。


 ヴェレーネもその点は気付いていたのだが、自分からマーシアに相談し辛かっただけだ。

 となると、結局は許可を出す。

『わかったわ。失敗しないでよ。マリアン君の身を危険にさらす訳には行かないんですからね』

「それは私を心配しているのと同じだぞ」

『似て(こと)なるのよ!』


 怒鳴り付けられながら通信は切れた。

 だがマリアンの言う通り、いざという時にはヴェレーネの助力が得られる事は確かになった。

 一安心である。


“では、行くか!”

(うん!)


 次に瞬間、彼女(ふたり)の姿は壁上から(かす)む様に消えた。






えっとですねえ、頭痛が酷かったので少し気晴らしに「日本ふかし話 弐」に短編小説を入れてみました。

話のタイトルは「死んでくれ、プレ子!」です。

久々に頭使わずに書けたんで良かったです。 もし宜しければどうぞ。

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