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星を追う者たち  作者: 矢口
第七章 愛に生まれ、殺戮に育つのは『世界』
106/222

105:切り通しの闘い(Aパート)

少しずつ、少しずつ戦場が動き始めます。

挿絵(By みてみん)



 シエネ城壁の北端は僅かに西側に曲がり、崖によって作られた自然の防壁と繋がっている。

 この崖はかなりの急勾配であり、下のライン河川まで百二十メートル以上の高さがある上に、更にシナンガル側に向けては岩盤による壁を作っている。

 山脈との間に僅かに出来た切り通しの隘路(あいろ)が、山裾に沿って北に八十キロメートル以上は続いているのだ。


『山岳民救出作戦』において巧達が使ったのはこの狭い道筋である。

 川向こうからは決して行動が読めず、北までの八十キロを全く警戒無しで進めた。

 日頃は所々に検問がありフェリシア兵が詰めているが、最も狭い地点で四メートル幅の狭隘(きょうあい)が百メートル以上にわたって直線で続くため、シナンガルが如何(いか)に大軍を持ってしても同数で魔法力の強いフェリシア兵を相手にするしかない地点が(いく)つも存在するのだ。

 此処(ここ)からシナンガル兵がシエネに攻め込む事に成功した事はない。


 先のシエネ攻防戦では南北を完全に塞いで守備隊は袋の鼠状態で有ったが、山頂部からは結界に守られた通路が続いており、補給も気にせずにひと月を乗り切ったのである。


『自然の要害』


 少々意味合いは違うがデフォート城塞に準ずる程の難攻不落の通路である。


 国防軍も此処には変則一個中隊六十八名を配置して、約一千名のフェリシア軍と共に防衛に当たらせている。

 昔と違い南側はシエネ城塞へと続くため、北のみを見据えれば良い()の街道は少々風通しが悪い事を除けば前線とは言っても、日頃の緊張感は差程でもない。


 何せ、最も北に位置する幅十メートルに満たない切り通しには塹壕が掘られ、重機関銃が据え付けられている。

 更にその先から四十メートル程進むと道は急に北に向かって下り斜面になっており、此処に数名の見張りが付けば一キロ以上は見渡せる為、何ら問題は無いのだ。


 とは言っても気を遣う場所であるのも事実である。

 その為、後方の数カ所には補給拠点もあり、トラックでシエネとの往復が成されて物資に不備を起こさないようにしているのは勿論のこと、一週間此処に詰めればシエネに戻り一週間の休暇が与えられる。

 そして、ひと月勤務すれば更に一週間は地球に戻れる様に手配されているのだ。


 ストレスの軽減こそが防衛の基本である、という旅団上層部の配慮から来るものであった。

 唯、実戦が始まれば、そのような配備計画が計画通りに行くかどうかは心配である。

 一応に実戦部隊の歩兵は約三千五百名存在し、その人員を考えればローテーション計画に何ら問題は無い様に思われる。


 しかし、此処にもF-3D撃墜の情報が流れてくると、兵士達の緊張はいやが応にも高まった。

 下瀬を初めとして、ヴェレーネ、池間、バルテン、アイアロス、アルボスらの指揮官達は、戦況を兵士に隠すなどの情報操作を良しとしなかった。

 これは先の大戦で巧の国の海軍が自軍の敗北を味方にすら隠し続けたため、次々と制空権(航空優勢)や制海権(海上優勢)を奪われ、補給もままならないままに陸軍に迄も大きな犠牲を生み出した事からの反省が前提に有る。


 当時の兵士達は戦闘で、と言うより飢えと病で死ぬ者の方が多かった。

 国力の差からいずれ負ける闘いだったにせよ、情報が正確であれば少なくともまともな作戦や防衛体制の正確な構築も出来たであろうし、何より馬鹿げた補給線の分断という愚を犯さずに済んだ筈である。

 戦場で全てを見通す事が出来る者など居ない。

 わずか数キロ先の前線で何が起きているかさえ、(いく)ら通信技術が発達しても分からない時には分からない。

 事実、当時の連合軍、即ち米軍ですら多くの失敗をしている。

 戦争とは勝つための条件も必要だが、ミスを少なくする事も重要だという良い教訓をあの戦争では米軍ですら受けているのだ。

 また、当時の巧達の国の兵士達は皆、優秀であり勇敢であったと同時代の敵国の兵士に対して、その有り様を褒める記録は幾らでも見つかる。


 一例を挙げるなら沖縄、嘉数台地に於ける戦闘は米軍参謀本部をして『歩兵防衛戦闘の極み』とまで言わしめ、現在でも各国の陸軍では必ず学ぶべき戦術となっているのだ。


 先の大戦の意味は兎も角、そのように健闘した名も無き英霊に感謝を捧げる者も多いと信じる。


 だが旧軍上層部は本末転倒も(はなは)だしく。

 例え国が滅んだとしても自分の出世を気にして、キャリアに汚点が付く事を恐れて失敗をひた隠しに隠し続けたのだ。

 酷い例になると、敗戦の前日に年金の額を気にして自分の昇進を要求した者までいたという。


 国が滅べば出世も糞もない、と云う事にすら頭が回らぬ程の腐ったエリート意識であった。


 司令部は戦争の勝ち負け以前に同じ国民に対する裏切りを行った。

 其れが先の大戦における軍部上層組織であったと言えるであろう。

 海軍はその上、戦争の原因若しくは敗因の全てを陸軍に押しつけ、一人の戦争犯罪人も起訴されることなく逃げ切った。

 戦後八十年近く『陸軍は完全悪』、『海軍は開明的』という伝説が国内を支配した。

 また、ジャーナリズムも事実を口にすれば、戦争を煽った自分たちの罪が露わになる事を恐れて口を(つぐ)んだ。


 戦後、その反省に立ち巧達の国からそのような風潮が消えたであろうか?

 其れは分からない。

 悲しいが未だに続いているのかも知れない。


 だが、兎も角此処(ここ)はフェリシアである。

 フェリシア人からの信頼を失えば全ては終わる。

 下瀬も池間も其の程度は弁えていたし、何より過去の亡霊たり得ない現在の官僚主義に嫌気が差している事も共通している。

 この地で『義』を通す事ぐらいは自由にさせて貰いたいと思っているのだ。


 下瀬の場合、その感情が(いささ)か暴走しているのでは無いのか、と池間は危ぶんではいるが、上がそうだと下も自然とそうなるのか、情報に関しては『無用な悲観論』に陥らぬ限りは何処の部隊に於いても口を閉ざす事を禁じる事は無かった。

 だが一部の上官によっては、事実からの心配事を口にする兵士を殴り飛ばす者までも現れていた。


 実際、そのような者は自身が恐怖心の虜になっているだけであり、部下を殴る事で虚勢を張っていたに過ぎないのであろう。

 国防軍ではそのような体罰は禁止されているのが建前であったが、中世の感覚の残るフェリシアと同じで、軍に於いてそのような事はあくまで『建前』である。


 


 四月七日、零時十一分 


 現在もひとりの兵士が殴りつけられた処である。



「じゃあ、じゃあ何か? お前は此処(ここ)の中世人達がアームド()スカウト()を開発したとでも言うつもりか?」

 フェリシア人に対する侮蔑(ぶべつ)の言葉と共に殴り飛ばされたのは斥候(せっこう)に出ていた分隊長である。

 (斥候=偵察)


「いえ、少尉殿! 約八メートル程の巨人のような『何か』が数体此方(こちら)へ向かっている。

 そう報告致しただけであります」

 殴られた軍曹は背筋を伸ばすと、再度口を開いたが、再び殴られた。

 今度も拳である。


「そ、そんなものがこの世界に有って(たま)るか! 馬鹿野郎! 

 有るにしてもどうせ、こけおどしの人形だろうが!」

 小隊長である少尉は怒鳴り声を高くして、自分が怒りで震えているかのように見せかけているが、其れは恐怖心から来るものだという事は周りの兵士の誰しもが気付いていた。


 二小隊による変則編成の一個中隊六十八名、現在、もう一個の小隊三十二名と中隊本部四名は後方で休息中である。

 しかし、直ぐ側にはフェリシア人の部隊も輜重・救護と合わせて二百名は居り、決して危うい地点ではない。

 第二小隊長である此の少尉は、初期にはこの世界に選抜された事を特殊な選抜だと喜んでいた。

 TVやネットなどマスコミにもてはやされ気分良く出発し、移送されてからは美貌の者の多いシエネの娼館を好んでいた。

 挙げ句、敵は五百年前の装備で、主力は弓と槍と来ては笑うしかない。

 彼の思い通りになる素晴らしい場所だ、と思っていた。


 魔法など信じられもしなかった上に、魔獣と聞いても所詮は獣だという認識しかなかった。

 先の連隊に於ける被害は、危機管理の出来ていない彼の耳には入って居らず、聞いていたとしても果たして信じたかどうか怪しい。

 確認を取らなかった上層部も真逆(まさか)、士官ともあろう者がこの程度の情報に目を通していないはずはないと思っていたのだ。


 処が戦車中隊の被害に始まりF-3Dが落ちたと聞くと、彼は(にわか)に自分の中に恐怖心が渦巻いている事に気付いた。

 アメリカへの監視団に尉官が選出されると聞いた時、あの軍事大国の内戦の危険性から逃れる良い方法は無いか。

 その上で自分のキャリアに傷を付けずに済む方法は無いか、其れだけで頭がいっぱいになってフェリシア行きを喜んでいただけであった。


 だが、此処も安全ではない。

 “今夜、此処からでも戦闘は始まる可能性は有る”と司令部からの警戒命令が出ているのだ。

 シエネ正面に比べればその危険性は少ないが、(から)め手ならば此処は最北部のトガ、南部のゴースと並んで厳重警戒区域に入ってもおかしくはない。

 その苛立ちが彼に拳を振るわせていた。


 駆けつけた副官が同階級である事を盾に彼を止めて無用な制裁がようやく終わると、彼は指示も出さずに小隊長としての責任を投げ出して最も奥の天幕に引き上げた。


 副官である別の少尉は、軍曹に詫びる。

「すまん。あれは気が小さいだけなんだ」

「この小隊に配属されてからは、慣れました」

 そう言って軍曹は少し笑う。 


 殴られる瞬間にきつく歯を食いしばったらしく、口から流れる血は少なかったが、その分の反動で(ほほ)()れ始めており、片眼は既に見えにくくなっている様だ。


「あいつは、そろそろ懲罰対象になるだろう。もう暫く、証拠集めをするまで待ってくれ」

 少尉の言葉に軍曹は特に返事をしなかったが、側にいた分隊員が声を上げた。

 二人の少尉より四つ五つは年かさであろう。

 少尉達が若すぎると云う事も有るのだが、今回選ばれた伍長以上の兵士は年長者が多かった。

「お願いします。我々だってそれなりに危険を冒して敵地に潜入してきたんです。

 それが“これ”では、あんまりです」


 先の小隊長少尉、山金について池間やヴェレーネを責めるのは難しい。

 彼を選抜したのは国防軍の別のコネであったからだ。

 だが、一般兵にとってそのような内情は知った事ではない。

 このような上官を放置する上層部は旧軍の官僚主義と同じ目で見られる事になるだろう。

 この小隊長の行動は、上記の二人に対する評価にも繋がっていく事になる。

 そのような事実が積もり積もって、軍は敗北の時を迎えるのだ。

 人事というのは、実は兵站以上に戦争を左右する要因なのであろう。



 同じ事を肌で感じて副官少尉は頷く。

 ”彼の言う通りだ。 

 殴られる事を恐れて危機に対する報告を怠る兵士が出ないとも限らない”

 そう思う。

「伍長。分かった、約束しよう。城之内軍曹は分隊と共に休憩に入ってくれ。

 それと治療も受けるように。ご苦労様でした」


 少尉の言葉に先程の伍長が再び口を開く。

「フェリシアの救護兵に依頼して構いませんかね?」

 少尉は少し考えたが、伍長の意図(いと)を理解した。

 内出血のような怪我の場合は、地球の医療より代謝を高めるフェリシア式の魔法治療の方の効果が高いのだ。


「許可する。あちらに失礼の無いように、頼む」

 伍長は少尉の言葉に喜んだが余計とも言える一言を付け加えた。

「小隊長以上に彼らに無礼な言葉を掛けている人間は、此処には居ませんよ」


 その言葉に周りがどっと笑う。


 笑い声というのは様々な種類のものがあるが、今の笑いは(そろ)って侮蔑(ぶべつ)の笑いであった。

「聞かなかった事にする」

 少尉はそう言うに留めるしかない。


 そうして監視のために坂道に向かったが、一人の兵士が追いかけてくる。

「相田少尉! 報告です!」

 城之内軍曹から、報告を完全に済ませておくように言われた。

 そう言って話し始める。


 彼の話の大筋は隊長に殴られた城之内軍曹が話した事と同じであったが、その細部には聞くべきものが有った。



     ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 暗視センサーの画面を見た時、相田は自分の目が信じられなかった。

「川幅はどれぐらいだった?」

 側にいる兵士に尋ねる

「おおよそ、いえ失礼しました。 

 あの地点ですと四十二メートルから一メートルの誤差は有りません」

 そうはっきり答える。

「最深部の深さは分かるかな?」

「三,二メートルですね」

 またもや明確な答えだ。


「では、あれらはおおよそ体高八メートル前後という事になるな」

「ASの約二倍ですか」

「体積で云えば八倍だな」

「! ……、」


 暗視カメラに白く写ったそれは、まさしく『巨人』としか言いようが無かった。

 数は全部で十八体。

 切りが良い数なら、もう少し居てもおかしくあるまい。

 そう考えた相田はカメラをパン(左右に振る)させる。

 居た!

 画面の端、岩陰になるが最後尾に二体。

 つまり、現時点での総数は二十体と確認できた。


 それらの内、八体は既に河を渡り終えている。


 城之内分隊の報告に嘘偽りは全く無かったのだ。


 報告してきた伍長は、こうも言っていた。

「巨人は半数程が各自何らかの筒を持っていました。

 軍曹からの言葉ですが、F-3Dの件を考えるならば『火薬』を使った兵器が有ったとしてもおかしくないのではないのでしょうか?」と。


 全く持って相田もそう思う。

 あの阿呆が部下を殴って憂さ晴らしをするだけで、グダグダとしてくれたお陰でこれ程に敵を近づけてくれた。


 これは軍法会議ものだ。


 だが、その『阿呆』が今は指揮官である。

 直ぐに指示を仰ぐ必要がある。

 此処(ここ)には重機関銃の他には六十一ミリ迫撃砲、其れに各分隊に一人ずつのランチャー兵しか居ない。

 シナンガルの竜を相手にする事も考えているが焼夷弾で充分だと言う考えである。

 山頂にレーダーとレーザーが有る以上、此処には高射砲部隊を持ち込む意味もないが、また人員も足りないのだ。


 要は此処にある兵器の殆どは基本的に面拡散で対人被害を与える事を目的とした兵器だ。

 兵器は、其れがあれば誰でも何でも扱える訳ではない以上、これはやむを得ない。

 また、軽く速射性の高い兵器の方がシナンガルの人海戦術には有効であるという対戦構想からの武装配備であった。


 だがあの様なASモドキにどれ程効果があるのだろうか。

 いや、足止めにすら難しいだろうと相田は思う。


 しかも、六十一ミリという軽迫撃砲は文字通り歩兵による運搬を容易にすることを優先して軽く作られ、その殆どは射程五キロを切る兵器で有る。

 迫撃砲弾に対戦車用も無いではないが、それらは八十ミリクラスから上の物に使用される全くの別物だ。


 せめて装甲車を相手に出来る歩兵野砲パンツァー・ファウストのひとつでもあればと思ったが、あの様な“真逆(まさか)”の代物である。

 今更ぼやいてもどうしようもない。

 AS中隊への連絡も必要だ。


 ありがたい事に、やけに動きは鈍い。

 奴らの渡河が終わるのに未だ暫く時間が掛かりそうだ。急がねば。


 

     ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 河から三キロ程北東に離れた地点。

 森の中で、数名の男達が集まって焚き火をしている。


 十名程であろうか。そこから少し離れた地点にまた焚き火が見える。

 其処にも同じように十名程の男達。


 焚き火の数は全部で四十を超える。

 円形にその集団は集まって居り、小さな丘を越えた森の中であるため、フェリシア側からもシナンガル本陣側からも、此処は全く見えない。


 だが、彼らは焚き火の側に水晶球(スパエラ)を持ち込んでいる。

 一人、もしくは二人の男が水晶球を覗き込むと、其処には薄闇の中に河が見える。

 ライン中流域で最も川幅が狭いと言われている地点だ。


 周りの男達は唯、目をつぶっているだけだが、中央の男、もしくは男達は体中に魔力の増幅を感じる。

 アルス程に容易くは魔力の受け渡しは出来もしないが、背にひとりひとりが触れると力が膨れあがる様だ。

 水晶石に写る光景の移動速度が滑らかになるのが分かる。

 八~九名の魔術師達はそれぞれに休みながら、中央で『巨人』を操る魔術師に力を分け与えていく。

 現在、水晶球(スパエラ)には様々な風景が写っているが、はっきりと動きを見せているのは十だけだ。

 残りは、魔力切れの場合の交代用であろうか?


 兎も角、その十の水晶球(スパエラ)には、それぞれの巨人に埋め込まれた魔法石を通して見た光景が浮かび上がっている。

 其れを可能にしているのは『たった一人の男』


 ルナール・バフェット


 彼は五キロ以上の距離を『言語』という複雑な概念を跳ばす事が出来るのだ。

 其れも、半日近く続けた所で問題は無い。

 魔法石に写った映像をどれだけの時間、或いはどれだけの数を映し出せるか、そしてどれだけ攻撃の時間に耐えられるのかも知っている。

 受け取るだけの情報など気楽な物だ。



 ルナールが心配する事があるなら、ひとつだけだ。

 この『巨人』を生み出す元となった、話に聞く巨人の出現である。

 このような『単なる巨人』と違い、戦闘能力の高い、人間に等しい物であったと聞いている。

 見た者の中での最後の生き残りも、育成要塞における事故で死んだ事が残念だ。

 自分なら、あの様な下らぬ報告書とは違う質問も考えていたのに、と考える。


 此処で失敗することは差程恐れない。

 この地に居る兵力が、あの“火箭かせん”の様な武器を持っていない事は前もって調べ上げている。

 奴らは人を相手にする為の“つぶて”用の武器しか持っていない筈だ。

 すぐさま『鳥』が飛んでくる事も考えられるが、それはそれで良い。

 今回は『何処まで巨人が使えるか』が知りたいだけだ。

 また、『鳥』がどれだけ早く国境越しの戦闘に対応できるか、このような地形でどの様な動きを見せるか、それも分かれば(なお)良い。


 ルナールにとってこの作戦は『情報をどれだけ集められるか』、其れが全てだと思っており、ベルナールもその点、最初は意味を理解していなかったが最後には納得してくれた。

 実に助かる。


 又何にせよ、あと二回、日が昇れば麻畑への焼き討ちが始まる。


 この巨人達は、北回りのルートで森まで部品ごとに運んで来た。

 

 また、地下要塞の北端には別の搬出口もある。

 焼き討ちされてからなら、完全体がそこから出撃する事になる。

 だが、今は地下への出入り口がある事を知られる危険は犯さないに限る。

 最終的には晒す事になるにしても、だ。


 この、隘路(あいろ)が落ちたとしよう。

 山頂から隘路に降りる道は殆ど無いと聞く。

 となれば、そこを同時に取る事でシエネ城塞を側面上方から攻撃する事も可能かも知れない。

 いや、その可能性こそが高く、フェリシアの尻尾に火が付きかねない戦闘である。

 この侵攻が失敗したとしても、隘路(あいろ)や山頂に振り分ける防衛兵はどれだけ増員される事になるであろうか。

 これにより更にフェリシアの疲労は溜まり、北の空白は大きく育って行くであろう。

 

 この一手が勝負なのではない。

 この一手から更なる数手を生み出す事がルナールの狙いなのだ。




 数ヶ月前にミスリルの製錬を命じられたエルフのダスラフとベットルが、ガンディアの工廠内で目にし、恐れた鉄の巨人達。

 それらは遂にフェリシアに辿り着いたのである。




サブタイトルは、ストップモーション・アニメーションの巨匠、映画監督レイ・ハリーハウゼンの「タイタンの闘い」(1981年)からです。

幻想SF作家レイ・ブラッドベリとは高校時代からの親友です。

考えて見ると「タイタンの闘い」は勿論の事ですが、「アルゴ号の冒険」、「シンドバット7回目の航海」などを鑑賞する事で、この方に神話とSFの融合を教えて頂いた気がします。

2013年5月7日永眠。


夜になって読み直すとリズムの悪いところが数カ所有りました。

少々手直しさせていただいた事をお詫びします。

なお、日付を除いて数字などは変更しておりません。

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