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サペリアーズ-空想科学怪奇冒険譚-  作者: 才 希
第3章「魔ノ山」(シーズン壱)
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第7話「不条理ナ世界ノ住人達」(7)

「早くしろ!私を信じろ!私も君を信じる!」


 信じる・・・またも千里はその言葉を言われた。そう自分に言ってくれた少女は死んだ。そして、今それを言ってくれた男・・・・藤原が謎の女に殴られ続けている。最悪、彼が死んでしまうかもしれない。それだけは避けたかった。もう目の前で誰かが死ぬのは嫌だった。なんとかカプセルを手にして、蓋を開けて薬を一気飲みした。

 薬の飲んだ千里の体全体が熱くなったそして、頭痛が発生した。「ぐあぁ!」と叫びながら彼はまたも床にのたうち回る。

 しかし、彼には見えた。先ほどまでは肉眼で捉えることができない女の姿が確かに見えた。さっきまで高速で動き回り、藤原を殴り続けるアディブがどのように動き回るか。千里にはそれが手を取るように感じられた。これが「未来が見える」ということなのか。千里の頭にアディブが天に向かって飛んでいる光景が見えた。そして藤原に向かって千里は叫んだ。


「おっさん!天井だ!そのまま真上の天井向かって撃て!」


 藤原が頷き、千里の言われた通り、真上に天井に向かって銃を向けて発砲をした。

 藤原の手に持つ拳銃から発砲された弾丸が彼の頭上にいたアディブの胸に直撃した。これまでずっと無表情だったアディブもさすがにこれには驚いたのか、目を見開いた。彼女の胸から濃い赤い液体が流れる。そしてアディブはその場にそのまま落下した。床に落ちたアディブはピクリとも動かない。

 アディブをなんとか倒すことに成功したのだ。藤原は殴られ続けて蓄積された身体のダメージと、化物女を倒したという安堵からその場で膝を付いた。そして、彼もまたアディブの横で倒れた。

それを見た、千里と光太は「おっさん!?」と藤原に駆け寄る。駆け寄ってきた彼らに藤原が声をかける。


「なんとか化物女を倒したぞ。やったぞ千里君。君のおかけだ。あと悪いが、私のスーツのうちポケットに壱発屋の薬がある。治療用の飲み薬だ。それを取ってくれ」


 千里は藤原に指示された通り、それを彼の黒スーツのうちポケットを取り出し、藤原に手渡した。藤原はなんとか薬を飲んだ。ダメージが和らいだのか彼は立ち上がった。そして今度はライに銃を向けた。ライはお手製の人造人間が藤原にやられたというのに驚く事も、悲しむ事も、起こる事もせず無表情でアディブを遠くから見つめていた。


「ライ!お前制作の人造人間は倒したぞ」

「ああ、そのようだな・・・・」

「観念しろ!もう真野山も我々の組織が包囲している!」

「え!?そうなの!?」


 驚く千里を尻目に藤原がライに詰め寄ろうとした、その時だ。どこからともなく、別の人影がライの横に現れた。その人物を見て藤原、千里、光太は「ゲェ!?」と唸った。なんとその場にアディブが現れたのだ。藤原達はその場にいたアディブと、床に倒れているアディブを見比べる。アディブはもう1人いるという事か。ライは驚愕して固まっている3人に向かって説明する。


「ああ、こいつはメカニック担当のアディブだ。その床に倒れているガラクタは戦闘用だ。安心しろ。」

「メカニック担当だ!?」


 藤原の声に頷くライ。彼の横にいるアディブが何かをライに向かって耳打ちをする。ライはそれを聞いて眉を潜めて「そうか・・・」と呟いた。ライは藤原達に対して口を開く。


「私からすれば、悲報だが、君達からすれば朗報だ。実はここにUFOを不時着させた理由は機体にトラブルがあったせいだ。このメカニック担当ではもうアジトに帰らなければ修理なんて無理だそうだ。天野君や早先見君を調べるなんて暇はない」

「今回は帰るだと!?」

「ああ、すまないな。ご都合主義的展開で。その大石春美もお返しするとしよう。どうやら彼女は私の探している特殊能力者ではなかった。ああ、安心しろ。木原景子みたいに妙なデバイスも入れてない」

「自分勝手すぎるぞ!」

「昔からそうだろ?」


 ライは藤原に詫び入れる様子もなく、今度は千里と光太を見た。


「すまんなぁ。君達をゆっくり調べたかったんだけど・・・・」

「ふざけんな!お前のせいで・・・鈴ちゃんが・・・・」


 千里が怒りの声を出すが、ライはまたも無表情で返す。


「科学、研究には常に犠牲が付きものだよ。私の研究だってそうだ。神の声を聞く真のサペリアーを探す研究にもね」

「神の声を聞く・・真の・・・サペリアー?」

「諸君、また合おう!」


 ライがその場で手を上げると物凄い閃光と突風が千里らを襲った。一体室内のどこからそんなものが発生しているというのか。そして、千里らは吹っ飛ばされて気を失った。


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