表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サペリアーズ-空想科学怪奇冒険譚-  作者: 才 希
第3章「魔ノ山」(シーズン壱)
49/56

第7話「不条理ナ世界ノ住人達」(6)

「おい!化物女!天野君を離せ!」

 

 拳銃を謎の女に向けたままそう叫ぶ藤原


「あんたは確か・・・・藤原のおっさん!?なんで!?」


 床でうずくまる千里が藤原を見て驚く。藤原がそれに答える。


「遅くなってすまかったな。ここを探し出すのに苦労した。そして、ライ久しぶりだな!」


 千里と光太はライと藤原を交互に見た。(おい、このおっさんと金髪はどういう関係なんだ!?)二人は同じことを思った。藤原に名呼ばれたライは、無表情で藤原を見ていた。


「久しぶりだな藤原。よくここがわかったな。何年ぶりだ?9.11テロの時か?最後に会ったのは?それとも彼女を私の研究所から盗んだ時か?」

「盗んだんじゃない!あれは助けだしたんだ!」


 (彼女とか何の話だ?)腹を抑えながら千里は二人のやり取りを見つめていた。


「ライ、やっぱり、お前がこの件の黒幕か。」

「ああそうだよ。それが何か?君は何しに来たんだ?」


 ライが藤原の問いに対して頷いた。続けて、藤原が答える。


「千里君達を助けるために決まっているだろ!彼らを開放しろ。そしてこのUFOもどきを明け渡し、お前も投降しろ!」

「要求が多すぎるだろ。」


 ライは「やれやれ」と言いながら、謎の女アディブの方を見た。アディブはそれを見てライの指示を察したのか光太を手離した。光太は急いでアディブから出来るかぎり距離を取る。それを見て藤原が驚く。


「お前にしてはやけにあっさり、天野君を手放すのだな」


 それを聞いてライは何が可笑しいのか少し笑いながら藤原を見た。


「そんな訳ないだろ。彼を手放すように指示したのは君をやっつけるのに邪魔だったからだ。」

「な・・・・!」


 藤原が驚く暇もないまま、アディブが高速で藤原に近づく。それはまるで弾丸のような早さだった。急に藤原の目の前に立ち、彼の腹を殴った。藤原の腹に衝撃が走ったが彼はなんとかそれに耐え、目の前の女に拳銃を向け発砲したが。彼女はその場から音もなく姿を消した。次の瞬間には藤原より離れた場所に立っていた。


「あの女、人間じゃない!?」


 そう驚きの声を出した藤原以外の千里と光太も同様な事を思った。それに答えるかごとくライが答える。


「こいつは私が作った簡単に言うと人造人間って奴だよ。見ての通り弾丸のような早さで動く凄いだろ?」


 弾丸のような早さで動く人造人間だと・・・UFOに続いてターミネーターが出てきたのかと千里達は思った。

 アディブがまたも藤原を殴る為に近づく。藤原がそれに応対する形で銃を彼女に向けるが、アディブの方の動きが早いのでまた腹を殴られた。なんとかそれも藤原が耐える。そして気がつけば、またもその場から離れた場所にアディブ立っていた。一瞬、瞬間移動でもしているのかと藤原が考えた。


(瞬間移動・・・いや違うな・・・ヒットアンドウェイって奴か!?)


 ヒットアンドウェイは主にボクシングの戦法の一つだった。フットワークを駆使して、接近して打ってすぐ離れる、という一連の動作だ。アディブはその動きをやっているのだ。それも物凄い目にも見えない早さで。

 そう推測していると近づいてきたアディブに藤原はまた殴られた。そして彼女がまた離れていった。

 なんとかアディブに銃を向けたが、しかし無駄だった。アディブがまた姿を消した。アディブは高速の動きで回っている為、銃口が彼女を捉える事をできない。そんな事をしているうちにまたも殴られる藤原。今度は顔面だった。「うっ・・・」と痛みに耐える藤原。そして、アディブは弾丸のよう早さで彼から離れていった。

 アディブは何回もヒットアンドウェイ戦法を駆使して、藤原を殴り続けた。藤原はそんなパンチの応酬に耐えていた。アディブのパンチは激痛という程でもなかったが、それでも何回も殴られるのは限度があると藤原は考えた。


(やはり、あれをもらってきて正解だったかもしれない)


 殴られながら藤原はなんとかスーツのうちポケットからある物を取り出した。それを床にうずくまる千里の方に向かって投げた。それが彼の側の床に転がる。千里もそれに気づく。それは液体の入った小さな手のひらサイズの試験管のような蓋付きカプセルだった。


「こ、これは!?」

「千里君、それを飲むんだ!それは壱発屋の特性の薬だ!君の能力を一時的にパワーアップさせる。脳をさらに活性化させて、この高速で回る女の動きを予知して当ててくれ!」

「な・・・・!」


 藤原は千里にアディブなる女の動きを読めと言っているのだ。確かに彼の先祖には予知能力もあったが子孫の千里には、そんな能力は遺伝されていない。しかし、この薬を飲めば予知能力も備わるというのか。ライがそれを聞いて抗議をする。


「オイオイ、ドーピングかい?あまり感心しないな・・・・」

「うるさいぞ!さぁ早く飲むんだ!」


 アディブに殴られるのに耐えながらそうライを睨む、そして千里に指示する藤原。千里は躊躇してしまった。薬を飲んであの女の動きを読むだとそんな事、本当に出来るのだろうかと。困惑している千里に殴られ続けている藤原が再度叫ぶ。


「早くしろ!私を信じろ!私も君を信じる!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ