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サペリアーズ-空想科学怪奇冒険譚-  作者: 才 希
第3章「魔ノ山」(シーズン壱)
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第7話「不条理ナ世界ノ住人達」(4)

「研究に協力!?」

「そうだよ」


 千里の声に頷くライ。


「私はね・・・実はある特殊能力保持者・・・超能力者を探しているんだよ。その為に君をここに呼んだのだ」

「超能力者だって?待てよ。僕は確かに妙な能力があるけど、光太にはないだろ?」


 千里はそう言って側にいる光太を見た。光太も「そうだそうだ」というように千里の言葉に同意する形で頷いた。ライも頷いて口を開く。


「その通り。確かに今現在の天野光太君はそんな能力はない。千里君のように既に起きた物事の過去を見るいわゆるサイコメトリー的な能力や、幽霊を見る霊視的能力などはね。でも、それは今「現在はない」という意味合いだ」

「どういう意味だ?」

「今はなくても、そのうち目覚めるかもしれないという事だ。人間の脳は実は少ししか使われてなくて、その大部分は何の為に存在するか分かっていない。脳の大部分が眠っているような状態だ。でもな、千里君。君の場合はその眠っている脳の大部分が覚醒しているような状態の人間なのだろう」

「なんかどっかのドラマで聞いたことあるような台詞だな・・・」


 千里のツッコミをライは無視して話を続ける。


「私はどちらかっていうと、千里君のように既に特殊能力に目覚めてしまっている人間よりは、これからそういった能力に目覚めるであろう可能性を持った人間に興味があるのだ。そこで大人しく眠っている大石春美もね。その一人だ」


 ライはそう言って棺を指さした。千里と光太は棺の彼女大石春美を見た。この子も特殊能力に目覚めるかもしれない人間の一人・・・・ライ曰くそういう事らしい。


「つまり、その為にこんなおかしなUFOみたいなもんで彼女を誘拐したのか?」

「ああ、そうだよ。彼女がここに来たので、眠っている能力があるかどうか確認の為に誘拐をした。真野山というのは君らも周知の通り、オカルトスポットで有名だが、実はここは日本の聖域的な霊山の一つなのだよ。特殊能力者、または特殊能力に目覚める可能性を持った人間は自分でも知らないうちに、潜在意識的にこの真野山に足を運んでしまうのという事も少なくない。そういう霊山のパワーに呼応しているのだろうと私は考えている。簡単にいうとゴキブリホイホイだな」


 ゴキブリホイホイ・・・自分らはゴキブリ扱いかと千里と光太はライを睨んだ。


「その大石春美だけじゃない。木原景子もそうだ。君らも彼女の事は知っているだろ?」

「「!!??」」


 木原景子・・・その名を聞いて二人は驚く。2月にこの真野山でUFOに目撃したのか、UFOに誘拐されたのか定かではないが、超常現象的な事を経験してその後、赤ん坊を受胎。4月にF大学の殺人未遂事件をやらかし、血を噴き出して謎の昏睡状態のまま死亡した女だ。


「彼女は良い素質を持っていたが、私の探している存在じゃなかった。だがまだ可能性は0じゃないと思い、あるデバイスを彼女の体内に埋め込んで返した。胎児型デバイスだ。」

「た、胎児型!?」

「そうだよ。彼女は男との間に子供が欲しいと願っていたからね。私なりのプレゼントだよ。それを使って私はしばらく彼女を監視するようにした。でもどうやらデバイスを埋め込んだせいで、体に負荷がかかり、体から血を噴き出してしまった。そして昏睡状態になった挙句、最終的には死んでしまったがな」

「なんだと・・・あの人が死んだのはあんたのせいだってか」

「まぁそのとおりだな。結果的にはそうだな」


 無表情でライは返事をする。さっきから彼の言っている事は理解の範疇を超えた話だった。千里と光太からして見ては頭のおかしな話にしか思えなかった。いや、100人中100人が・・・ではなく世界中の人間が聞けば頭のイカれた話にしか思えない内容だった。


「あ、あんた頭、おかしいぞ!」

「そうだ!狂っている!」

「おかしいか・・・?狂っているか?そのどちらもよく言われるから慣れているよ」


 二人の抗議の言葉にまたも平然とライは返した。尚も彼は話を続ける。


「という訳だ。まずはそちらの天野光太君の事を調べたい。君自身もまだ気づいていない能力があるかどうかな」

「何がという訳だ!馬鹿!」


 光太は怒りの声を出した。そんな狂者が自分を調べると言っているのだ。何されるか分かったもんじゃない。怒る光太を尻目にライは次に千里の方を見た。


「天野君を調べ終わったら、次は千里君の方を調べるとしよう。まぁ君は既に能力に目覚めているから、あくまでついでだな。あれ?でも君に関しては既に一応12年前に調べ終わっているんだったかな?」


 そう言いながらライは千里を見たまま首を傾げた。「12年前」という単語を聞いて、千里は驚きの声を出した。


「12年前・・・・!?もしかして鈴ちゃんもあんたが・・・・!?」

「・・・・・すずちゃん?ああ!そんな少女もいたね。あの子もいい素質があった、良い研究対象だったなぁ~」


 ライは鈴ちゃんの事を「良い思い出だったな」という様な顔をした。千里はそれを見て頭に血が上った。怒りがこみ上げてきた。こいつのせいで鈴ちゃんがあんな目にあったのだ。千里はおもわず、無言でライに勢いよく近づいた。彼を殴るためだ。

 ライは千里が自分を殴ると気がいついたのか、それを避けるような動きをして手拍子をした。


「アディブ!カモーン!」


 ライがそう言うと、いきなり天井から人が降ってきて千里の目の前に立ちはだかった。女の修道服のシスターの格好をした美女だった。


「な、なんだ・・・あん・・・うぐ!」

「なんだ・・・あんたは!?」そう千里が言い終わる前に彼のみぞおちに鋭い拳が入った。シスターの格好をした美女、アディブと呼ばれる人物が千里の腹を殴ったのだ。千里が床に倒れる。


「うがぁ!」

「千里さん!」


 倒れた千里に光太が駆け寄る。アディブは無言で光太に近づき、彼を捕まえた。光太は


「離せ!」


と叫んだが、ものすごい力で光太の腕を捕まえ引きずるように彼をどこかに連れて行こうとする。


「離せ!離せ!離せ!」


 光太は叫び続けるがアディブは聞く耳持たんというような感じで彼を離さない。腹を殴なれ、苦しい千里は朦朧とする意識の中、


「こ、光太!」


となんかとか声を出す。そして彼の中を屈辱的な思いが支配する。


(ち、畜生・・・・頭おかしな奴に誘拐されて、鈴ちゃんの敵かもしれない男も殴れず、光太までモルモットにされるとか・・・僕は超能力者と言ってもなんて無力なんだ・・・・)


 千里は心の中で自分の無力さを嘆いた。その時だ、どこからともなく声が聞こえてきた。


「おい!化物女!天野君を離せ!」


 全員が声の方向を見た。そこにはどこから、この場に入ってきたのか。全身黒づくめの男、藤原が拳銃を持って立っていた。彼の拳銃の銃口はアディブの方を捉えていた。


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