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サペリアーズ-空想科学怪奇冒険譚-  作者: 才 希
第3章「魔ノ山」(シーズン壱)
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第7話「不条理ナ世界ノ住人達」(3)

 場所は変わって・・・・光太と千里が真野山で謎の光りに包まれて姿を消したほぼ同じ頃、砂時計里は学校が終わり、老舗壱発屋の母屋の一室にて、呑気にカレー煎餅を齧りながら、テレビを見ていた。


「ああ~ミッチーの神戸君ホント良いわね・・・・」


 うっとりするような声を出す計里。テレビにはドラマの「相棒」の再放送が映し出されていた。彼女は俳優の及川光博のファンだった。


『やれやれ・・・お前さんも好きだね~』


 この壱発屋に住み着いている化猫の九十九がテレパシーで計里にそう語りかける。九十九のテレパシーは本来、通常の人間には聞こえない。しかし、彼女も千里同様に九十九の声が聞こえる特殊な人間の一人だった。


「おじいちゃん猫は黙ってな!ああ、ミッチーかっこいいよ!ミッチー!」


 計里が画面の中の及川光博に画面にときめいていた時、壱発屋の店の方から


「頼もうー」


という男の声が聞こえてきた。計里は舌打ちをする。せっかくの及川光博堪能タイムを邪魔されて腹立たしかった。


「ああ、もうこんな時に誰よ!?」


 そう声を荒らげながら、店先の方へ彼女は向かう。そこには全身、真っ黒な男・・・黒スーツ、黒ネクタイ、黒サングラス、顔面が黒髭モジャモジャの男が立っていた。


「あんたは・・・・・・・!?」

「久しぶりだな。計里ちゃん。突然で悪いが薬をいくつか欲しい。あとあの御方をお借りしたい」


黒男・・・特務機関L.O.C.K.の藤原が計里に向かってそう言った。



「ここは・・・」

「どうなっているんだ!?さっきまで真野山にいたはずだ!?」


 千里と光太は気が付いたら、別の場所にいた。さっきまで自分達は真野山にいたはずである。謎の飛行物体を見た直後、光りに包まれ何故かこんな場所にいた。

 二人がいる場所、そこは教会だった。銅のキリストが十字架に貼り付けてあり、それが目の前にある。回りにはステンドグラスに描かれた天使が笑顔を二人に向けていた。本来なら、天使は良い物という存在だが、今は何故かそれが不気味な存在に感じられた。

千里には何故かここに以前にも見た覚えがあった。


(そうだ・・・・壱発屋で飲んだ薬のせいで見た光景そっくりだ)


 千里と光太の目の前には棺があった。千里と光太はそれに近づき覗き込む。棺の蓋はクリアになっており、中が見られる仕様になっていた。誰かがその棺の中に収められていた。


「千里さん、この子・・・・」

「ああ、間違いない。大石春美だ。僕達が探していた」


 棺の中の人物は行方不明になっていた女子高生、大石春美だった。春美は行方不明になっ時と同じように制服を着ている状態で棺に収められていた。何故彼女がこんな所にいるのか。何故棺の中にいるのか。彼女は棺の中でまるで死んだかのように眠っていた。


「死んでいるですかね?」

「まさか・・・そ、そんな・・・・」


 光太の問いに千里は悲しみの声を出す。結局、自分は何も出来なかったのかと千里は追い詰められそうになった。しかし、その考えをかき消す声がどこから聞こえてきた。


「安心したまえ、死んでないよ。彼女は眠っているだけだ。」


 二人は声の方向を見た。一人の男の姿が見えた。男は金髪で緑の瞳をした外国人で黒い修道着・・・いわゆる神父の姿をしていた。年格好は見た目から察するに千里達とほぼ変わらない青年の姿をしていた。


「あんたはなんだ?」

「私の名はライだ。」

「ライ?」


 千里の問いに「いかにも」と男は・・・ライは二人に向かって頷く。


「ここはどこなんだ?あんたはなにものなんだ?どうして僕らはここにいるんだ?」

「質問が多いな・・・まぁ無理もないな。ここは君らが真野山と呼ぶ山だよ」


 「ここは真野山」ライは確かにそう言った。しかし、おかしい真野山に教会なんてなかったはずだ。そんなもの存在する話は聞いたことがない。千里は再びライに問う。


「真野山に教会なんてなかったはずだ」

「ああ、そうだな。ここは正確には真野山に不時着しているはある飛行物体の中と言うのが正しいだろう・・・」

「飛行物体?」

「君らが俗に言う未確認飛行物体・・・UFOという奴さ」


 ここはUFOの中・・・そんな馬鹿な。何故UFOの中が教会なのだ?千里と光太は混乱した。ライが出鱈目、嘘八百を言っているだけじゃないのか。


「信じられないかもしれないけど。本当さ。」

「じゃああんたは宇宙人なのか?僕らと同じ人間のように見えるけど」

「私は一応人間さ。早先見千里君・・・UFO=宇宙人の乗り物なんていうのは映画の見すぎだぞ。確かに1947年に外宇宙にあるどっかの星からやってきた宇宙船がアメリカのロズウェルとかいう田舎町に落ちた。その残骸を米軍が拾って研究しようとした。異星のテクノロジーを入手する為だ。しかし、軍に回収された残骸をさらに私が盗んだのだ。そしてそれを私なりのアレンジを加えて再生させた。見た目はUFOなのだけど、中身が教会っていう風に改造をね。なんで教会かと言うと、実は私は孤児でね・・・教会で育てられた。教会という場所が落ち着くのさ。あとちなみにこんな神父様みたいな格好しているが私の本職は研究職だ。そこらへんも理解して欲しい」

「???」


 ライが言っている事が千里も光太も理解できなかった。「アメリカのロズウェルに落ちたUFO」なんて話はテレビで何回か聞いたことあったが、そんなの眉唾物の話と思っていた。さらにその残骸を回収して自身で改造しただと、頭のおかしな話だと思えた。

 しかし、千里はもう1つ気になった事があった。何故かライは自分の名前を知っているのかということだ。


「意味がわからない事を・・・あとあんた、なんで僕の名前を知っている?」

「君だけじゃない、そちら君の同居人の事も知っているそっちは天野光太君だろ?」


 ライは千里の事だけではなく光太の事も知っていた。千里も光太も顔を見合わせて驚いていた。そして驚く千里達に向かってライはこう言った。


「君たちを私の改造UFOの中に呼んだのは他でもない。私の研究に協力して欲しいからだ。」


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