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サペリアーズ-空想科学怪奇冒険譚-  作者: 才 希
第3章「魔ノ山」(シーズン壱)
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第7話「不条理ナ世界ノ住人達」(2)

 智子が先を歩く中、後方を歩いている高山が彼女に聞こえないよう小声で千里に話しかけてきた。


「なぁ早先見、お前どう思う今回の一件・・・彼女が見たのは本当にUFOなのか?俺はUFOなんて信じてないけどよ、木原景子もこの山でUFOなんて見たとか言っていた話だし・・・」

「・・・・・・・・・」


 千里は歩きながら黙った。高山は優しいが真面目で堅物な所がある。自身の超能力を信じて貰えたのも結構時間がかかった記憶がある。


「僕も昔ここでUFOを見て不思議な体験をしました」


 なんてすんなり言って信じてもらえるだろうか・・・と思ったのだ。千里はあえて高山には


「さぁ?わかりません・・・・とにかく大石さんが行方不明になったって場所行きましょう」


と答えた。高山は「そうか」と一言それに返し歩き続けた。


 しばらくして、その大石春美が最後に目撃された場所に一向は辿り着いた。そこはハイキングコースの道中のベンチが置いてある休憩スポットだった。街の景色が一望出来る場所だった。


「さぁ早先見、やってくれ」

「わかりました」


 高山に促され、千里は意識を集中させた。ここで一体なにが起きたのか自身の超能力で調べる為である。あたりを見回し、周りをウロウロと歩く千里。それを不思議な顔で智子は見ていた。


「あの・・・あの人なにやっているんですか?」

「いや、気にしなくて良いですよ。あれが奴なりのやり方なので」

「?」


 涼の返答に智子は首を傾げた。千里はこの場所の過去の光景を見ることに集中していた。しかし、見えるのは現世に未練がありこの場所に成仏出来ず漂っている幽霊・・・いわゆる地縛霊といった存在しか彼の目には入っていなかった。何が原因か分からないが、この真野山で死んでしまった人間なのだろうか・・・・サムライの格好した幽霊や、スーツ姿の女に幽霊が見えていた。


(さすがオカルトスポットと言った所か・・・ごめんな。今はあんた達に付き合っている暇はないんだ)


 千里は亡者達に謝罪しながら、「過去を見る」という作業を没頭した。しかし、いくら経っても大石春美の姿は見えなかった。


「高山さん・・・ごめんなさい。ここでは見えないみたいです。別の場所を探してもいいですか?」

「そうか・・・わかった」


 千里がそういうので高山は一言返事をし、探すポイントの変更をする事をした。


 それから数時間・・・千里は能力を最大限にしながら、真野山を歩き続けた。それに光太、涼、高山と千里の存在を怪訝な顔で見続ける辻智子も付き合っていた。あるポイントに留まり、「過去見て」それがダメなら探すポイントの変更を繰り返し・・・・。しかし、大石春美の姿はやはり彼には見えなかった。自身の能力を持ってしても彼女の存在を見つける事が出来なかった。千里は焦っていた。


(行方不明になってしまった女子高生が・・・鈴ちゃんのように遺体で見つかったらどうしよう・・・・)


 彼の中でそんな思いが生まれてきた。結局自分は小学生の頃に何も出来ずに無力のまま終わるというのか・・・・と。

 涼がそんな親友の千里を心配そうに見つめていた。光太と高山も同様だった。その時、空から水滴が何個か降ってきた事に光太は気がついた。


「雨だ・・・・」


 全員が天を見上げた。朝は晴れていたはずなのに、いつの間にか真野山の上空を分厚い灰色の雲が覆っていた。雨が激しく降って来る。高山はそれを見て舌打ちした。


「ちっ・・・今日は晴れているって話だったのに天気屋の嘘つきめ!みんな、一旦捜索本部テントに戻るぞ!」


とその場の全員に指示した。千里はその言葉を聞いて反論した。


「みんなは戻ってくれよ。僕はこのまま探し続ける」

「はぁ?お前なぁ。雨の中の山は危ないんだぞ!我がまま言うな!」

「で、でも・・・」


 高山にそう言われても千里は捜索を続けたかった。もう彼はこの山で人が死に、誰かが悲しむ姿が見たくなかった。そんな千里に涼が激しいビンタを浴びせた。痛そうなビンタを見て全員が固まる。


「痛いじゃないか!涼」

「お前、いい加減にしろ!焦ったって仕方がないだろ!気持ちは痛いほどわかるけどよ!」

「・・・・・・」


 涼は焦る千里に対し、自分は「お前を信じる。お前なら絶対、行方不明の大石春美を見つけられる」と伝えた。

 「信じる」それはかつて鈴ちゃんが自分に言った台詞だった。それを聞いて、ここは一旦高山の指示に従って捜索本部のテントに戻る事を承諾した。

 テントへ行くために山道を全員が歩き続ける道中、ふとメンバーの後方を歩いていた千里が自分達の上空に何かいるかと気配を気がついた。天を見る為に首を空へと向ける。ちょうど横にいた光太もおもわず同様に千里と同じ動きを取った。空を見て二人は固まってしまった。前方を歩いている、高山、涼、辻智子はその存在に気づいていないようだ。3人は先を歩き続けている。

 上空の方に見たことな物体が浮かんでいた。銀色の謎の物体だった。しかし、千里はそれと近い物を依然見た覚えがあった。昔、鈴ちゃんと共にこの真野山に来て見た物と同じ物のように彼には思えた。


「せ、千里さん、あれは!?」

「わ、わからない!」


 驚いている二人をその銀色の物体から発せられた激しい青白い光が包んだ。そして、二人はその場から姿を消した。消えるかごとく。

 前方を歩いていた異変に気がついた涼が背後を振り向いて、千里と光太がいなくなった事に気がついた。


「ゆ、勇兄!千里と天野がいない!」

「はぁ!?なんだと・・・!?」

「ほんとだ・・・・!」


 高山と智子も絶句した。二人はどこへ消えたというのか・・・・。


「早先見!天野君!どこへ行ったんだ!?畜生!ミイラ取りがミイラとかやめろよ!!」


 高山のそんな叫びが雨の中の真野山に響いた。


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