第6話「其ノ名ハ、「L.O.C.K.」」(3)
「なるほど」
光太は説明を聞き終わって感心していた。千里も藤原の言葉に感心しきっていた。
「ほう・・・まぁあんたらの組織がそういう超能力者やオカルト事件の研究にご熱心ってのはわかったよ(でもなんか怪しさは抜けないけど)」
「わかってくれたか。我々は超能力者・怪事件に関するアンテナを常に貼り続けている。当然千里君、君の事もよく知っているよ。4月に君の大学で起きて、そちらの天野君が犯人じゃないかと疑われてしまった「木原景子」の件や、高山とかいう刑事と知り合うきっかけになる件でもある、君の高校時代に起きた例の「紅い通り魔事件」とかもね。あれも君の不思議な力で解決させたのだろ?」
(俺の事件の事も知っているのか!?でも紅い通り魔ってなんだ?)
と自身が大きく関わった事件を指摘され驚きながらも首を傾げる光太。
「あの事件を知っているのか!?」
千里も驚いていた。藤原の言うとおり「紅い通り魔事件」は確かにあの怖顔刑事の高山と自分が知り合うきっかけとなった忌まわしい事件だった。
「ああ。その通りだ。大変興味深い事件だった」
「あのー紅い通り魔ってなんですか?」
「その件は凄く長くなるから、また今度な」
(ええ気になる~!)
光太の問いに千里はそう答えながら考えた。
(なんでこいつあの事件の事を知っているんだ?あの事件は公にはされてないはずだ。高山さんから聞いたのか。それともこの屋敷に監視カメラか盗聴器でも・・・?)
頭の中の千里の考えをまたも藤原は読んだかごとく、少しな笑いながら答える。
「ふふふ・・・君は私が高山警部補から聞いたとか監視・盗聴の可能性を考えているようだが、そんなことはしてないよ。ここは私の尊敬する先生の家でもあるんだ。監視・盗聴は先生への裏切りに値する行為だ。我々組織は警察にいろいろとコネクションを持っている。それプラス、実を言うと我々には、工作員というべきか協力者がいるのだよ。」
「協力者だぁ?」
「ああ、その人物に逐一、君らの情報の報告をもらっている。残念ながら、その人物の名を今は明かすことができないが、可愛らしくて健気な人物だ」
「可愛らくして健気な人物だ」・・・そんな人物、自分達の回りにいるのか?と二人でお互いの顔を見合わせて考える千里と光太。
可愛らしいと聞いて、光太の頭に中には先ほども会っていた老舗薬局の「壱発屋」のドS美少女が浮かんだが彼は(でもあの娘は健気なのか?)と疑問を抱いた。イメージが違う気がした。
「まぁこの際、その協力者に関する話は置いておいてだな。私がここに来た目的は他でもない。真野山に関する話をする為だ」
真野山・・・千里の小学生の頃の友人である、音城鈴ちゃんが死んだ場所であり、木原景子がUFOを目撃した場所であり、現在女子高生が行方不明になっている場所だった。藤原から出たその名を聞いて千里と光太は身構えて姿勢を正した。
「あの山は君らも周知の通り、オカルトスポットで有名だ。我々の監視対象だった。」
夢で見た過去の藤原もそれを言っていたな・・・と千里は思い返していた。
「12年前、あの少女が行方不明になって後日無残な姿な発見されて、今年に入って「木原景子」がUFOを目撃、そして今度は女子高生が行方不明と来たもんだ。」
「あんたらの組織、あの山を監視してたいだろ?何かが真野山で起きている。それが何かは知らないけどさ。あんたらの職務怠慢じゃないか?それはあんたらの落ち度であるんじゃないの?そうじゃなきゃ鈴ちゃんは・・・・」
「鈴ちゃんは死なずに済んだ」そう言おうとして千里が口を噤んだ。自分は知らないうちに誰かに責任を押し付けようとしてないか?という事に気が付いてしまったのだ。彼女が死んでしまったのは自分が原因なのに。自己嫌悪を千里は感じていた。
「・・・・・・・」
そして、千里は黙った。藤原がそんな千里に声を掛ける。
「君は昔の君同様に、今も自分が悪いと思っているようだな。あの少女が死んだのは自分に非があると」
「そうだ・・・・」
「あれは我々に責任がある。君には非がない。こんな事を言うのは残酷な事かもしれないがあの少女の件は過ぎてしまった事だ。問題はこれからどうするかだ」
「これからどうするか・・・」これも祖父が過去に言った言葉そのままだった。まるで祖父の言葉を藤原が代弁するかごとく言っていた。千里が藤原に質問する。
「あんた、あの山で何が起きたか、そして何が起きているか知っているのか?」
「まぁ大体はな・・・・」
「教えてくれ。何があるんだ?あの山に?」
「・・・・・・・・今は答えられない」
「はぁ!?なんじゃそりゃあ」
藤原はあの山で起きた出来事について大体の察しがついていた。”あの男”が今回の件も12年前の一件に関わっているそう感じていた。自分の組織を裏切った”あの男”が。
ただ、今は、それはあくまで可能性の話なので千里達に話す事ではあるまいと思ったのだ。
「とにかく、君は明日、真野山に行く予定なんだろ?女子高生の探索に」
「そんな事まで知っているのか?」
「私は止めやしないが、注意しろ・・・あの山には・・・」
何かを藤原が言おうとした時、彼の携帯が鳴った。彼はスーツのポケットから取り出した携帯に出て一言、「わかったよ了解した」返事した。そして
「すまない、支部に戻らなければならなくなった。今日は帰るよ」
と二人に向かって言った。




