第6話「其ノ名ハ、「L.O.C.K.」」(2)
「でさぁ・・・あんたの組織は何をするとこ何だよ?そのL.O.C.K.とかいう組織は?」
「ああ一応、秘密組織なのだが、君は先生のお孫さんだし、そちらの天野君はそのお友達だ。まぁ君らなら話しても大丈夫かな。その事に関しても説明しよう」
藤原は千里と光太に自分の組織の詳細を語りだした。藤原が所属する「L.O.C.K.」は。超常現象事件保護委員会とも呼ばれ、その名の通り、超常現象事件の調査・解明、UMAやオーパーツ、超能力者の保護・研究・調査・監視などを目的とした秘密組織である。また、超常現象が起きた事件の現場で発見された未知の物体や証拠などの回収を目的としている・・・との事だった。
「オカルト事件や超能力者の保護、研究、調査、監視だと!?」
「ああ簡単に言えばそういう組織だ。まぁ君らからしては変な組織と思うだろう。怪しんだりそういうリアクションを取られても仕方がないが」
千里の怪訝な声に藤原は同意した。横で黙って聞いていた光太も(胡散臭すぎだろ・・・)と白い目で藤原を見つめていた。
「我々の組織はある事件の調査過程において、先生・・・つまり、君のおじいさんである早先見乖里氏の存在を知り、接触した。組織の強い協力者になってもらう為だ。そりゃあ、最初はあの人も、我々の組織の説明を聞いて、今の君達と同じような白い目で見られていた。だが、我々が根気よく説得をして、決して怪しい組織ではないと理解していただき、氏と協力関係になったのだ」
「いや、あんたどう見ても怪しいよ!僕のじいちゃんを洗脳かなんかしたんじゃないよな!?」
「そんな事は絶対にしてない!心に誓うよ!」
千里の言葉に藤原は「自分の言っている事に嘘偽りは決してない!」と言い切った。だが、千里は尚も信用できないというような顔をしていた。
「だいたい、超能力者の研究とかが目的というなら、僕の能力とかどれぐららい知っているんだ?」
千里の問いに藤原は口を開いた。
「・・・・君の能力はいわゆる血筋って奴だろ?先祖代々受け継がれてきた」
「そうだよ」
「早先見家、その名の由来はその名の通り、「早く先の出来事・物事が見れる」事から来ている。君や先生の先祖は「過去」だけではなく「未来」の出来事も見えた。それにより「早先見」という姓名が与えられた。そして、早先見家の人間は朝廷・幕府といった時の権力者達からも重宝されていた・・・・どうだ合っているか?」
「!!」
藤原の話を聞き、千里は驚いた顔した。それは千里が昔、祖父から聞かされた話、そっくりそのままだった。驚く千里を見つめたまま藤原は続けた。
「しかし、長い年月の経過により他の一族の血が入り、早先見家の不思議な力も段々と薄れていったんだ。さらに産業革命以降の科学文明の台頭により、近年では早先見家の人間の「予知・予言」は軽視された。一部の人間からは「こんなのもは何かのトリック、又はインキチ」と呼ばれるようになってしまった。ひどい話だ。」
「へぇ・・・よく調べてるじゃん。その通りだ。回りの人間が信じてくれないと本来の・・・真の超能力は発揮できない・・・そうじいちゃんも言っていた」
千里は感心してしまった。そして祖父が生前言っていた言葉も思い出した。
「そして科学技術を使った「予報・予測」の方が信頼されるようになった。信仰、信頼される事もなくなった事により早先見家は没落の一途を辿った。例の明治時代にあった「千里眼事件」にも君の先祖は関わっているんだろ?」
「!?これは驚いたな・・・そんな事まで知っているんだな」
「あのー千里眼事件ってなんですか?」
千里と藤原にこれまでずっと黙っていた光太が質問した。それに千里が答えた。
「ああ、千里眼事件ってのはね・・・小説・映画で「リング」ってあっただろ?あれに山村貞子って超能力者出てくるじゃん。その人のモデルになった事件があったんだよ」
1910年(明治43年)の福来友吉博士による超能力者がいると証明する実験、俗に言う「千里眼事件」があった。福来博士により何人かの超能力者がピックアップされ、マスコミの目の前で大体的な超能力の証明実験が行われるとされた。しかし、この実験は失敗に終わった。
「え?失敗しちゃったんですか?」
「ああ、なんでもマスコミ連中がその人達の事をまったく信用してなかったからだ。その人達もそんな回りから信用されてない状況・・・インキチやペテン師扱いされてしまっていては本来の能力が発揮できなかったんだろう・・・ってじいちゃんから聞いたわ。その後、その実験に関わった人達は酷いバッシングを受けたんだってさ」
「ああ、まったく胸糞悪い話だ」
と、藤原も頷いた。これには千里の曽祖父で、乖里の祖父の早先見玄里にも福来博士により、「実験に参加して欲しい」との連絡があったが、玄里はこの時、「どうせその実験は失敗する」と判断して断った。「実験を見に来たマスコミ連中が被験者の失敗しか望んでいない状態では能力が低下して本来の力が発揮できない」と考えたからである。それも千里は祖父、乖里から以前聞いていた話だった。




