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サペリアーズ-空想科学怪奇冒険譚-  作者: 才 希
第3章「魔ノ山」(シーズン壱)
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第4話「嫌ナ汗」(7)

 早先見家の居間のテーブルに高山が持ってきた真野山の地図が広げられていた。千里はそれをただじっと見つめ続けていた。高山は千里に促した。


「さぁ、やれるって言うならやってくれよ」


 千里は「はいはい」と言いながら、その地図の上を両手で触れ始めた。そして目をつぶった。千里は自身の超能力を最大限にしながら、行方不明になっている少女を探した。


(おい、どこだよ・・・どこにいるんだよ・・・・)


 千里は心の中でそう念じながら、探し続けた・・・・すると誰かのぼんやりとしたシルエットが頭の中でイメージとして見えてきた。


(お・・・やっぱ、やれば出来るじゃないか・・・まぁじいちゃんが出来たんだから、僕にも出来るよね・・・)


 そう千里が思った時だ。彼は何かがおかしいことに気がついた。そのシルエットの人物は写真で見た大石春美とは違う人物と気がついた。それどころか女子高生とも違うようだった。女性であることは間違いなかったが、女子高生にしては明らかに背が低い・・・そうまるでその影は小さな少女だった・・・まだ小学生低学年ぐらいの・・・。


「うっ・・・・!」


 千里は唸った。それを見て高山と光太は「どうしたんだ?」と顔を見合わせた。千里は凄い汗を流していた。どんどん顔も苦しそうに歪んでいた。


(おい・・・誰だよ・・・・君は・・・・今日の講義中に見た夢の中の女の子か?今は勘弁してくれよ・・・・)


 今日、日中に居眠りしながら見た夢の内容を思い出した。何故、今あの夢の続きを見なければいけないのか・・・・。朦朧としながらも、千里はなんとか女の子の顔を確かめたかった。

 なんとか頭の中で確認しようとした、しかし、その少女はどんどん千里から離れて行った。その光景を見て千里は何故かその少女と二度と会えないのではないかという恐怖に襲われた。


(おい、そんな勝手に逃げんなよ。待てよ!おい!おい!行かないでよ!)


 千里は必死でそう叫んだが、少女の姿は消滅した。まるでこの世界から消えたかのごとく。そこで千里の意識は現実世界に戻った。


「はぁーはぁーはぁー・・・・」


 千里は凄い息切れを起こしていた。まるで全速力で走った後のような状態だった。体中も汗まみれになっていた。汗により、触っていた地図までびっしょりと濡れていた。


(また、この嫌な汗だ・・・・なんなんだよ・・・・)


 千里は呆然としていた。高山がようやく彼に声をかけた。


「おい大丈夫かよ。体の調子悪いのか?」

「いや・・・・すいません・・・どうやら、そのようですね・・・・」


 千里が申し訳なさそうに言った。そんな元気のない千里の姿を見て高山と光太は目を丸くした。高山はしょんぼりとしている彼を元気づけるつもりで、こう冗談交じりで言った。


「おいおい、もし体調悪いなら、涼の奴を連れてきて殴ってもらおうか?もしかして元気になるかもしれんぞ」


 高山としては本当に千里に元気になって欲しくて冗談として言ったつもりだった。しかし、今の彼には冗談が通じなかったようだ。千里は機嫌悪く叫んだ。


「違う!そういう問題じゃないんだよ!高山警部補!」

「「え!?」」


 思わず高山と光太は同時に声を出してしまった。いつも千里はふざけて高山の階級を間違えるくせに、今回は間違えず呼んだのだ。そんな彼を見て、今は異常事態になのだという事にようやく気がついた。


(こりゃあ、只事じゃない!)


「早先見、無理させて悪かったな・・・・もう今日は休んでくれ・・・。明日の捜索に参加云々はお前が出来たらで構いやしない。すまん。じゃあな!」


 そう言って高山はバツの悪そうな顔して、逃げる形で屋敷を後にしようと居間から出て、玄関に向かった。光太も今は千里と二人っきりになるのは気まずいと思ったのか、高山を見送る為に玄関へ向かった。


「あの・・・高山さん、なんかすいません・・・・」


 なぜか光太が申し訳なさそうに謝った。まるで千里の代わりに謝罪するように。


「天野君、何故君が謝るんだよ?」

「いや・・・・なんとなく・・・・」

「君が謝る必要はないよ。悪いのはこっちだよ。なぁ、早先見の奴は今日、体調が悪かったのか?」


 高山の問いに光太は今日1日の千里を思い返した。体調が悪いという事はなかったはずだ・・・朝も元気に全裸で寝ていて、起きて大学へ行ったし、晩飯もおかわりしていたし。千里の体調の問題ではなく、思い当たるとしたら、やはり真野山が関連することだろう。


「体調が悪いという訳ではなかったはずです。元気でしたよ。なんて言いますか・・・千里さん、真野山をなんか怖がっていると思うんです」

「真野山を?なんで?」

「なんとなくそんな風に思えるんです。なんか真野山の話になると怖がって震えている感じというか、逃げ出すというか・・・・」


 高山に千里が真野山を怖がっている云々の話を言えば、理由が分かるかもと光太は考えた。しかし、高山にも思い当たる節がないようだ。


「うーん、よくわからんなぁ。まぁ今日は悪かったな。じゃあな」


 そう言って、高山は屋敷を出て行った。高山を見送った、光太は居間に戻った。千里は俯いて床をじっと見ていた。

「あの・・・千里さん」

「ごめん、今日はもう寝る」


 声を掛けようとした光太を避けるようにそう言って、自分がいつも寝ているソファーがある部屋に千里は向かった。

 光太も仕方がなく、そんな千里の後ろ姿を黙って見るしかなかった。


 その夜・・・・同じ屋敷の別々の部屋で寝ているはずの千里と光太は、二人してなかなか夢の世界へ旅立つことが出来ずにいた。暗闇の中でじっと部屋の天井を見つめていた。そんな状態で二人はまったく同じ事を考えていた。


「真野山に何があるんだ・・・・?」


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