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サペリアーズ-空想科学怪奇冒険譚-  作者: 才 希
第3章「魔ノ山」(シーズン壱)
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第4話「嫌ナ汗」(6)

 ようやく千里が捜査協力を承諾した。光太はその千里の返事を聞いて安堵した。「ありがとう」と高山が言おうとする前に、千里は手のひらを彼の目の前に突き出した。高山は「?」とその突き出された手のひらの意味がわからなかった。

(もしかして、謝礼を要求している・・・?まさかな・・・)高山の記憶では、千里が捜査協力の報酬として謝礼などを要求したことは1回もなかったはずだった。そんな風に高山が考えた時に千里は


「高山さん、何しているんですか?まずは写真見せてくださいよ。その女子高生の写真!持っているんでしょ?あとその女子高生が不細工なら協力はやめます」


と言った。それを聞いて「ああ・・・」と納得しながら高山はスーツの内ポケットからその行方不明になった女子高生、大石春美の写真を取り出し、千里に手渡した。千里はその写真をじっと見つめた。


「ふーん・・・まぁ僕のタイプの顔じゃないけど、クラス5番目・・・いや6番目に可愛い子って感じかな・・・」


 そう千里が言うので、光太も興味を持って写真を覗き込んだ。(え?これでクラスで6番目?すげぇ美少女じゃん!)と心で唸った。そこにはショートカットの高校の制服であるブレザーを着た可愛らしい少女がバストアップで写っていた。


「うーん・・・・でもこの写真だけじゃ判別つかないな・・・」


 写真を見ながら千里がそう言った。早速、千里の持つ不思議な能力・・・超能力で何かを調べているのか。高山は千里に問いた。


「判別ってその写真だけじゃさすがにお前でも無理だろ?」

「そうですね・・・この子あるんですか?あれは?」

「その子にあれがあるとはどういう意味だよ?」


千里は「ハァー」と溜息をしながら「なんでわかんないですか」と言いたげな顔で高山を見た。そして


「この娘が巨乳かどうかって話ですよ!胸ですよ!胸!お乳!おっぱい!バスト!女性のシンボル!分かるか?怖顔マンさんよ!?」

「なっ・・・・・・・」


と怒濤の熱い叫びを吐き出した。高山は絶句してしまったが、出来る限り優しい声でそんなおっぱい星人に語りかけた。


「・・・・早先見君よ・・・それは何か君に関係あるのかい?」

「僕のモチベーションに大いに関わります!」


 千里は真顔でそう言った。そこまで言われては高山も沈黙してしまった。そんなの、その女子高生とはまだ会ったこともなく写真でしか見たことがないのだから分かるわけないと思いながらも高山は


「ある!(と思う)」


となんとか言い切った。そばにいた光太は(あれ?今小声で「と思う」ってあの人言わなかったか?)と思った。しかし、千里にはその小声の「と思う」の部分は聞こえてなかったようだ。


「わかりました!やりましょう!」


千里は笑顔で返した。なんとか捜査協力を取り付けた高山は安心したが同時に(なんかかなり疲れたぞ・・・)と疲弊してしまっていた。


「ありがとうよ。まぁ今日はもう夜だからな。捜索は明日だな。明日、お前の都合良い時間に向かえに来るから連絡くれよ。真野山で彼女を探してくれよ」


と高山が今日は一旦帰ろうと思った時だ。千里が思いがけない事を言い出した。


「真野山に直接行かなくても、今、ここで彼女を探しましょうか。」

「はぁ!?どうやって?」

「真野山の地図ありますか?それでなんとか探し出せるかも」


そんな千里の言葉を聞いて、高山と光太も驚いていた。まさか地図を見るだけで行方不明者を見つけ出せるとは思いもしなかった。高山は念の為に確認した。


「出来るのかよ!?そんな事!?すごいじゃねーか!」

「・・・・・いや・・・・出来るかも・・・って話ですよ」

「はぁ!?なんじゃそりゃあ!?」

「まぁとにかく、地図あるのなら今ここでやりましょうよ!」


 高山は納得がいかないと思いつつ、表に止めてあるパトカーに真野山の地図があると思い出し、それを取りに行くと二人に伝えて、一旦その場を後にした。


「千里さん、すごいじゃないですか。地図を見ただけで人探しなんて・・・」

「いや、まだ本当に出来るかわかんないけどね」


 光太にそう返しながら、千里は思い返した。自分の祖父にも千里同様に不思議な力があったという。さらに、聞いた話では祖父は、地図を見ただけで行方不明になった人間を探しだした事もあったと聞く。「祖父に出来たのだから自分にも出来るはずだ」と楽観的に考えた。さらに第一、千里は「正直、真野山に行きたくない」とも考えていたからだ。

 しかし、彼には何故自分が「真野山に行きたくない」と頑なになっているのかよく分かっていなかった。


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