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追放系お嬢様  作者: インスタント脳味噌汁大好き


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第54話 女神ですわ

リディア達はダンジョンの最奥に辿り着き、そこに封印されていた女神の封印を解く。直後、中から天使のような絶世の美女が現れたが、その背中にあるのは純白の羽ではなく白銀の触手だった。


「コロス!」


ガルロンの魔剣により、思考をシンプルにされたエイブラハムが一早く反応し、魔剣に変化させていた右腕をとてつもない速度で伸ばし串刺しにしようとする。しかし女神を包むように現れた半透明なシールドにより防がれ、直後に女神からの触手がエイブラハムの腹部を貫通した。


また、それと同時に小部屋内にいた12人全員が女神の触手による攻撃を受けていた。冒険者集団は全員、腹部が貫通したり弾き飛ばされたりしたため、ダメージを受けなかったのは防具を仕込んでいたガルロンと、触手を躱したメイ。そして腹部が触手で貫通しながらも満面の笑みであるリディアの3人だけだった。


「メルト!?大丈夫ですの!?」

「ぐ、大丈夫だ」


メルトは触手の攻撃を防ぐものの、力負けして弾き飛ばされ、後方の壁にめり込んだが深刻なダメージではなかった。リディアが作戦の要であるメルトの無事を確認すると、女神の正面に立つ。なお、腹部には触手が突き刺さっており血が流れ出ている。


女神はリディアに対して、容赦のない攻撃を続けた。女神からすれば、リディア以外の有象無象は一瞬でケリが付くと判断したからだ。炎や氷、雷や鉄の球を生み出してはリディアにぶつけるが、リディアは全てを耐えてみせた。


そして女神は、リディアの記憶を断片的に覗く。そこに映っていたのは、他人から見れば完璧に成功した転生者の姿だった。


直後、地響きのような悲鳴を挙げた女神はリディアへの攻撃をより苛烈にしていく。女神は転生者集団が自身を殺しに来たことを把握し、転生者達への怒りを再燃させた。その苛烈な攻撃を受ける度にリディアの身体から血が流れ、あるいは骨を折られるが、それでもなおリディアは立っていた。


女神はここで、致命的なミスを犯す。転生者達が思い通りにならない呪い、それを集約してリディアに集めた。ダンジョンの最下層、自身を殺しに来た存在達。その中心メンバーがまさか本気で『負けたい』と願っているとは、初見の女神では見抜けなかった。


記憶は覗けても、その時の思考までは読み取れない。結果、リディアを『負けさせる』ために打った女神の一手が、この世界の人々の今後の運命を決めた。女神からの光線を全身に浴びながら女神に一歩ずつ近づくリディアは、拳に魔法陣をセットする。


メルトがリディアの動きに合わせ、女神が不穏な動きを見せたメルトに対しても光線を撃つが、メイの持つデプハスションがこれまた光線を放ち、女神の攻撃にすら打ち勝つ。ガルロンの1つ目の切り札は、残念ながら女神本体にダメージを与えることはなかったが、女神の攻撃を呑み込み、その上で女神が纏っていた半透明なシールドを溶かす。


その上、2つ目の切り札は女神の意表を突いた。まったくの攻撃動作をしていないにも関わらず、ガルロンの腹部から極限にまで細くした矢が飛ぶ。かつてリディアが素手でへし折った細い矢を、更に細くし、視認できないレベルまで研ぎ澄ませた奥の手。


その矢の先端が女神の目に触れ、かすり傷も負わなかった女神だが、強烈な精神汚染により一瞬だけ意識がリディアから逸れた。その隙を見逃さずリディアは魔法陣を拳で叩きつけ、強制転移を行わせる。それと同時に、女神がこの世界に帰って来られないように、この世界の座標を思い出せないようにする。


この世界から強制転移をさせられることを把握した女神は、転生者集団が「思い通りにならない呪い」を解呪したいのだとも認識する。それは実際に、女神がこの世界から追い出されただけで解呪されてしまうような状態だった。


だからこそ女神は、リディアだけでもこの「思い通りにならない呪い」が続くように呪いを重ね掛けした。残念なことに女神は転生者という存在を恨んでおり、なおかつこの場にいる転生者で、一番成功していたのはリディアだった。


最後の最後で特大の呪いを受けたリディアは意識を失う悦びに浸りつつ目を閉じるが、リディアにとって残念なことに女神の追放は失敗することなく、またリディアも死ぬことはなかった。


女神がいなくなったことを確認したガルロンは、気絶しているリディアや他の冒険者達、満身創痍なメイやメルトが無事であることを確認するとサイコロを5個取り出す。「1個でも1以外が出たら祝宴を開く」と言って放り投げたそのサイコロ達は、1が2つと4が2つ、5が1つという結果だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! ……素晴らしい戦いだっ!! >リディアの記憶を断片的に覗く。そこに映っていたのは、他人から見れば完璧に成功した転生者の姿だった。 >直後、地響きのような悲…
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