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俺の交代に合わせて安部も選手交代して小柄な女子が俺にマンツーマンにつく。その女子は速かった、オフェンスもそうだがディフェンスの時でも俺に張り付き振り切ろうと左右に振ってもついてきた。何より驚いたのがフェイトとを混ざても全てに反応した上で抜かせないようにしてくる器用さ。


男でもこんな速い奴見たことがないと驚いていると安部が審判でありながら小さくガッツポーズするのが見えてピンときた。まさか俺への対策選手を用意してたのかと思い一瞬嬉しかったが厄介だなと切り替え考えるがいい案が浮かばない。


「よぉーしそのままだよぉ」


女子のキャプテンらしい選手が声を上げると男子は止まる。攻め手がないのだ、無理矢理にでも突っ込めばプッシングの反則になりかねない。こんなに厳しいマンツーマンは初めてで男子が時間と体力だけを削られていく。


俺はというと唯一の取り柄走りを上手く使えずイライラしていた。どうしても抜くには左右で避けるしかない、正面突破は反則の危険があると頭を混乱させて動きまで雑になっていく。


「嬉しかったんだ」


自然とそんな言葉が出てあまりにも馬鹿げた博打に出た。男子がボールをパスを回して攻めあぐねる中俺は自陣のゴールに走った。逆走に女子も男子も驚いた。当然マークしてた女子も一緒に下がってきたが俺は後ろ脚に力を溜めた。


女子が俺に前に来る前に短距離走のように飛び出した。仕掛けたのは女子との純粋なかけっこだった。前を妨害させなきゃ走れる。ほんの少しの距離さえあれば千切れるはずと突っ走る。自陣のゴールから敵陣のゴールまで約28メートル。


その半分の14メートルでマークの女子を置き去りにすると決めていた。相手の女子のかけっこの速さは知らないが迷わずやると決めた。


「すっげぇ嬉しかったんだよ!」


小学6年間俺は馬鹿だとかアホだとか言われ続けていた。教師にも同級生にも親にも、いつしか何も感じずそれが当たり前になった。しかし大介は俺を馬鹿じゃないと言ってくれた。別に褒められた言葉じゃないが飛び上がりそうなくらい嬉しくて俺は駆けた。


コートの半分を全力で過ぎた瞬間もうマークしてた女子は視界から消えて誰がボールを持っているか確認する事を忘れてる自分に気づいたが、次の瞬間ワンバンウドしたボールが俺の片手に磁石でもついてるんじゃないかと思うくらい吸い付いてきた。


ヨコがノールックで出したパスだった、そのバスケセンスには頭が下がった。フリースローラインを走り抜け更に加速して飛ぶと女子達の驚きの顔が見えた。必死だった、頭では何も考えず2年バスケをしてきた体に全てを任せレイアップシュートを放つ。


「ぐぇ」


勢いをつけすぎてゴール下にある緑色のクッションに激突して反動で地面に叩きつけられた間抜けな姿を晒すと肘と膝から血が出て時計が止められてしまう。俺が治療を受けてる間は安部が女子のスタメンを集めて相談してる、ヨコと大介と山崎が何やら話をつけて大介だけがきた。


「ヤスオこーゆのはどうだ」


得点は入ったらしく女子ボールから始まり男子はゾーンディフェンスに切り替える。しかし俺だけが相手チームのエースをマンツーマンというボックスワンという形になる。


「上からのパスはしょうがない、でもゴール下に切り込まれないようにしてくれ」


女子チームにもヨコ級のエースがいるという事はその女子の動きを鈍くすれば多少は流れが変わるはずという大介の作戦、よくもまぁ小学生でこんな事思いつくなと思う。身長差はあったがとにかく前に出させないために前に出た。


パスは通るが攻めの中心だったエースをスリーポイントラインより外に押し出す事で女子の攻めが止まる。マークしてる俺には常に動き続け体力消費は激しかったが意地で動き続けた、我慢の糸が切れて女子が苦し紛れのスリーポイントを打つとリバウンド勝負になる


「なっ」


驚きの声を漏らしたのは男子選手全てだった。リバウンドにいったヨコが女子2人に挟まれて動けずにいる。リバウンドでヨコが負けてる姿が見た事がないから信頼が厚かったがまさか飛ばせない作戦にくるとはと思う。真水と山崎がフォローにいったが遅れて取られ速攻を食らい1ゴール女子に与える結果となる。


「こりゃまいった」


山崎が戻りながら言った。リバウンドを全てヨコに任せたのが裏目に出る。真水も山崎もリバウンドに慣れてはいるが相手女子のサイドからくるリバウンドでのポジション取りや高さがヨコ並である。ゾーンディフェンスをしてる以上どうしてもスリーポイントへに警戒が薄くなってしまう。


「どうしたぁ相手は女子だぞ!」


矢部の同じ事を繰り返される熱き咆哮を聞き流してヨコと大介が相談する横で山崎と話してた。


「ヤスオどうするよぉ女子強すぎだろ」


「そうだなぁ~やべぇなぁ」


「お前はいつも同じ答えだな」


2クォーター終了時点で8点差ぐらいだったと思う。いつも指示を出す大介に代わりヨコがくると俺と山崎に力強く言う。


「真っ正面からいこう。マンツーマンに戻して張り付いてくれ、女子だって苦しいはずだ」


試合の半分が終わりヨコと大介を腹を決めたらしい、俺のような昆虫を使わず小細工抜きの力勝負にでると言い出した。俺はお払い箱かと思い隅っこに戻ろとするとヨコの大きな手で肩を捕まれた。


「ヤスオお前はディフェンスでもオフェンスでも走り回ってくれ、隙あればどんどんゴールを狙え」


適当組もギャラリーもいつしか皆真剣な顔になりこちらを見ていてこんな事を言われたら俺も腹を決めなきゃいけないと思った。この頃だろうな俺がもっとも必要されてた時期は、今振り返るとそうだよなぁ~……皆元気でやってるかなぁ。







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