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神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白
2.

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49/52

第49話

私はスマホの時刻を確認した。


大阪陥落まで、残り三十分。


まだ太陽は昇ったばかりだというのに、公園にはちらほらと朝の運動に訪れた老人たちの姿があった。


ただし、彼らが手にしているのは、これまで見慣れてきた体操用の道具ではない。


剣。弓。そして拳法の型。


SEEKERは降臨エリアだけを変えたわけではない。ほかの地域ではまだ世界融合は起きていないが、それでも人々はその瞬間に備え始めていた。


学校は開門前から黒山の人だかりで、列は何本もの通りにまで伸びている。中にはテントを張り、そのまま泊まり込む者までいた。


区域が降臨すれば、学校は転職ホールとなる。

それが、人々が冒険者になるための第一歩だからだ。


スマホを開けば、ネット上は攻略者たちが公開した緊急サバイバルガイドで埋め尽くされている。


その大半は〈夜明〉ギルドによるものだった。


彼らは専用サイトを立ち上げ、そこには――


緊急救助エリア

攻略集結エリア

SEEKER情報エリア


といった区分が設けられている。


転職の方法、逃走経路、魔物の習性、対処法。

すべてが整理され、分かりやすくまとめられていた。


さらに最新の「ダンジョン攻略講習エリア」には、私たちが成し遂げた初踏破の完全記録映像まで公開されている。


まるで、オンライン版の冒険者ギルドホールだ。


その中には、高齢者向けのトレーニング指針まで用意されていた。


「その大鳥は……ガウ!? 伝説の陸行魔獣ガウじゃないか! すごいぞ!」


目を覚ましたばかりの私たちの周囲には、いつの間にか見物人の輪ができていた。


財布がほぼ空だったせいで……私たちは昨夜、公園で寝るしかなかったのだ。


もっとも、ガウの翼を掛け布団に、ふわふわの羽毛を枕にしたおかげで、睡眠の質は驚くほど良かった。


おかげで今は絶好調。


……ただし、ちょっと注目を集めすぎているが。


「こんなにかっこいい大鳥、私も飼ってみたいわ!」


「触ってもいい?」


「きゃあ〜! 羽がすっごく柔らかい!」


許可など必要ないと言わんばかりに、ガウは自ら頭を差し出し、満面の幸せ顔で無数の手に撫で回されている。


「これが異世界か〜〜〜! こんなにたくさんの人間に好かれるの初めて! 異世界最高だ〜〜!!」


今回の依頼主は、どうやら異世界ライフを満喫しているらしい。


私たちはアイテム欄から手早く朝食を取り出して食べたが、その動作だけで周囲から再び驚きの声が上がった。


「それって……伝説のアイテム欄!?」


「便利すぎる能力だろ!」


「俺もそれがあれば、旅行のたびにでかいバッグ持たなくて済むのに!」


「魔法って使えるんですか? 失礼なのは分かってるけど……本物を一度見てみたくて!」


「魔法? じゃあ――空を見てて。火球術。」


放たれた火球は遥か上空まで飛び、花火のように弾けた。


……どうやら千夏は、周囲の爺さん婆さんの歓声にすっかり酔いしれてしまったらしい。


「MPを無駄遣いするなよ。危険に遭遇したらどうするんだ。」


「大丈夫。MPは常に95%以上をキープしてるから、いつでも全快できるよ。」


よし。完全に舞い上がっているわけではないようだ。


私はガウの翼の下から立ち上がり、大きく背伸びをしてから長弓を取り出す。


胸の内で、静かにカウントダウンを続ける。


そのとき。


「きゃあ——気をつけて!」


もう一発の火球が弾けた――その瞬間。


世界が、激しく揺れた。


「今の威力で……? いや、違う……」


「地震だ! 木につかまれ!」


降臨のリズムも、時刻も。

すべて前世と同じだ。


予測していた小規模地震と異常現象が、寸分違わず訪れる。


空の色が、ゆっくりと変わり始めた。


直後。


降臨エリアにいる全員の視界に、巨大なウィンドウが出現する。


「《世界公告》


西フヴニア王都にて魔物侵攻が発生中!

冒険者は直ちに現地へ向かい、支援せよ!


侵入した魔物を討伐すると、西フヴニア王国の功勲値を獲得できる。

功勲値は官爵、高レア装備、ペットエッグなどの貴重な報酬と交換可能。


侵攻終了時、防衛に成功した場合は功勲ランキングに応じて追加報酬が支給される。


すでに魔物は西フヴニア王都の街路へ出現している!

すべての冒険者よ、総力を尽くし王国を守れ!」


西フヴニア王都。


――それは、今まさに私たちが立っているこの区域だった。


公告が表示された次の瞬間。


大阪の風景が、急激に変貌を始める。


異世界の建築物が通りに沿って爆発的に成長し、半透明の影が都市の隅々まで覆い尽くしていく。


道路も、商店も、近代的な高層ビルさえも――

すべてがその中へ取り込まれていった。


いつの間にか、鼻を刺す硝煙と焦げ臭い匂いが空気に混じる。


次の瞬間。


都市が消えた。


代わりに現れたのは――戦火。


「突撃しろ!! 魔物どもを押し返せ!!」


「第十二街区が陥落寸前だ! 兵力が足りない……応援を要請する! 第十二街区、応援求む!」


「助けて! 脚が折れた……誰か助けてぇ! 帰りたい……家に帰りたいよぉ!」


「うおおおおおお——!!」

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