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神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白
1.

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37/52

第37話

「あんたたち……そんなに他人の血ばかり欲しがる、薄暗い連中なの!?」


弓を引く!


振り向きざまに、爆裂矢を放つ――命中!


〈-25〉


……ダメージ表示が、あまりにも小さい。


レベル25以上。

下手をすれば……30超え。


私は、その数値から即座に判断を下した。


「ちっちゃい子~、ぼくが~行くよ~?」


爆煙が晴れる。


――だが、魔偶の姿がない。


まずい!


反射的に、私は身をひねった。


ドンッ!!


大剣が、私の足元に叩きつけられる。

まるで地雷が炸裂したかのような衝撃が走り、私と燈里はまとめて吹き飛ばされた!


燈里は掴み損ね、一本の木の根元へと投げ出される。

……幸い、大きなダメージはない。


背負っていた重みが消え、身体が一気に軽くなる。


正直に言えば――

今ここで単独で逃げるなら、弓使いとしての敏捷性を活かして脱出できる可能性は高い。


首元の防護具を、物品欄へと戻す。


深く息を吸い、目を閉じる。

そして――開いた。


……違う。

逃げるという選択肢は、ない。


まずは戦う。

それでも駄目なら……あの神器を切るしかない。


今朝は、たった一つダンジョンを踏破しただけだ。

数点のエピック装備を手に入れただけで、〈天堂〉から、あれほど狂った追撃を受けた。


生き残るため。

あるいは、野心のため。


十年も肩を並べて戦ってきた仲間でさえ、平然と裏切る世界。


もし、私が多数の神器を持っていることが知られたら――

この世界で、いったい誰を信じればいい?


しかも今、私のすぐそばには――

SEEKER史上、最も厄介な暗殺者がいる。


「……」


意識を研ぎ澄まし、集中する。


黄金色の瞳が、氷のように冷えきり、魔偶を捉えた。


――神器を使わずとも。

私は、世界最強の攻略者だ。


《天秤の瞳・ロックオン》


「ほう? 小動物が牙を剥くか……ん?」


魔偶の機械じみた顔に、わずかな驚きが浮かぶ。


目の前の弓使いは、逃げない。

隠れない。

距離も取らない。


……逆に、突っ込んできた。


「死ね!」


魔偶は両手で大剣を握り、胴薙ぎに振り抜く!


「――っ!」


つま先で地面を蹴る。

刃が届く寸前、私は跳躍した!


前方宙返り、180度。

逆さになった空中、わずか0.3秒。


弓身で、魔偶の首元を引っ掛ける。


「なっ――!?」


ちょうど、剣を振り切った硬直の瞬間。

魔偶は、反応すらできない。


――引き絞る。


ガンッ! ガンッ! ガンッ!


着地する前に、三本の魔力矢が連続で放たれ、

魔偶の後頭部に、寸分違わず同一点で突き刺さった!


三度の衝撃が重なり、後頭部の装甲はほぼ貫通。

巨大な凹みが刻まれる。


――まだ終わりじゃない!


着地の勢いのまま、弓身で魔偶を引き倒す!


起き上がる隙を与えず――

私は、その首元を踏みつけ、矢を眼球へ向けた!


バンッ!


至近距離。

魔偶の左眼が、抵抗もなく弾け飛ぶ。


だが、右眼への追撃は――防がれた。


大剣が迫る。

深追いはしない。


私は即座に距離を取り、反転。

爆裂矢を、側頭部へ叩き込む。


「いい戦術だ……クク……実に、いい」


立ち上がった魔偶の独眼が、狂気を帯びて私を睨みつける。


「自分とのレベル差を理解している。

 遠距離射撃では弾かれ、MPの無駄。

 ヒット&アウェイでは体力が先に尽きる……」


「だから、最も危険で、最も効率的な近接火力を選んだ……そういうことか?」


「忌々しい蚊め!

 捕まえられないとでも思ったか!?」


私は、その声を聞いていない。


《天秤の瞳》が、煙越しに魔偶の気配を捉える。


その瞬間――

空中に、BOSS戦のHPバーが浮かび上がった。


銀灰色。

これまで見たどの敵とも違う色。


「……2%しか削れてない?」


絶望的な長さ。


――でも。


慣れてる。


「……つまり、あと50回でいい」


次は、警戒される。

戦術も変えてくるはず。


《天秤の瞳》の視線が、大剣へと向く。


……なるほど。


このラウンドは――中央だ。


爆煙が晴れるのを待たない。


私は、煙を突き破って突進する。

指先が、火薬の残光を引き裂く!


「……罠にかかったな!」


魔偶が嗤う。

次の瞬間、大剣が二本の細剣へと分裂した!


双剣を手に、刺突の雨が襲いかかる!


だが――

私は、すでに読んでいた。


身を捻り、かわし、背後へ回り込む。


ガンッ! ガンッ! ガンッ!


また三射。


同じ地点へ。


後頭部の凹みが、さらに深くなる。

内部の淡い光――動力コアが、見えた。


コアが露出すれば、ダメージは十倍。


「蚊ぁぁぁ!!

 忌々しい蚊ぁぁぁ!!」


二度も弄ばれた。

格下と見下していた獲物に。


操縦者の怒りが、限界を超える。


歯車の回転音が、全身から響き渡る。

出力を、限界まで引き上げた音だ。


胸部の符文が輝く。

高位敏捷強化――緑の紋章!


「来いよ!」


敏捷強化、か。


魔偶は風を裂き、一歩で――私の目の前へ。


だが、私の手はすでにマントを掴んでいた。


叩きつけるように、投げる。


「なにっ!?」


視界が、完全に覆われる。


剣が振るわれ、マントは切り裂かれる。

だが――


その裏にいたはずの私は、もういない。


雪原を駆ける狐のように、

音もなく、背後へ。


ガンッ――ピンッ――!


三射。


最初の二本が、防御を破壊。

最後の一本が――コアに命中。


HPが、一気に削れる。


「貴様……! 貴様……!!」


悪いけど。

第二形態に入る暇は、与えない。


転身する前に、私は転がり、

盲眼側の死角へ潜り込む。


魔偶の回転動作が、逆に背中を晒す。


ピンッ! ピンッ! ピンッ!


コアに命中する音が、異様なほど心地いい。


一射、7%。


三射で――21%。


「もういい!!」


魔偶が、完全に激昂した。


後頭部を押さえながら、

視線を動かし――私を無視する。


その先にあるのは――


まずい。


燈里!


「離れろ! 相手は私だ!」


「ハハハハ!

 よく避けるな? なら、これはどうだ!」


片手で後頭部を押さえ、

もう一方の手で、剣を突き出す。


狙いは――燈里。


「……」


燈里は、立ち上がろうとした。


だが、指先が僅かに動くだけ。

身体は、完全に言うことをきかない。


やがて――

諦めたように、目を閉じる。


「……私のことは、構わないで……」


「……」



シュッ――


刃が、肉を貫く音。


燈里には、聞き慣れた音だった。


……なのに。


想像していた痛みは、来ない。


温かいものが、静かに流れ落ち、

頬へ――唇へと触れる。


……微かに甘い、血の匂い。


目を、開ける。


剣先は、すぐそこにある。


だが――


それは。


細い背中に、

胸で受け止められていた。

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― 新着の感想 ―
吸血しちゃったねぇ… これで回復すれば…
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